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リアクション
■ 楽しい食事の時間 ■
久しぶりにイギリスに帰りたいと、エレオノール・ベルドロップ(えれおのーる・べるどろっぷ)はラビ・スカーレット(らび・すかーれっと)とルアーネ・シーモア(るあーね・しーもあ)を誘って実家に帰省することにした。
「お母様がいないのは残念だけど、お父様だけでも会っておきたいしね」
そう言ってからエレオノールは、でも、とルアーネを見る。
「お父様、ルアさんの角や尻尾を見て驚かなければ良いけど……」
「そ、そうだな」
答えるルアーネは、緊張気味だ。
普段のエレオノールの脳天気なところを見ると想像しにくいが、彼女は上流貴族の家系だと聞いている。
これから会いに行くという父親も、貴族の当主ならきっと礼儀作法に厳しく威厳のある人なのだろう。
「あまり粗相のないように気を付けなければいけないな」
そう呟くルアーネに、ラビは複雑な表情になった。
ラビは時々、ベルドロップ家に帽子を売ったりするのに行ったことがあるから、エレオノールの父、ジェラール・ベルドロップと面識はある。
「ジェラールの旦那は……なんて言うんかねぇ。そう、あの見た目とのギャップ!」
あれを見て、逆にルアーネが驚かなければ良いのだけれど。
(無理だろうなー)
一体どんな食事会になるのかと、ラビの中にはむくむくと不安が湧き上がってくるのだった。
食卓につくと、ジェラールを待つ間にとエレオノールは紅茶を淹れた。
「イギリスといえばやっぱり紅茶だから、有名どころの茶葉を選んでみたけどどうかな?」
「ああ、薫り高い紅茶だな」
そう言いながらルアーネが紅茶を含んだところに、ジェラールが登場した。
端正な顔立ちをふちどるショートヘアは、エレオノールと同じピンクと金色が混ざった色合い。エレオノールから48歳だと聞いているが、どうみても20代に見える。
「エレオ、それからオマケのみんな、僕は当主のジェラール・ベルドロップ……よろしくにゃん☆」
「ブッ!」
「きゃ、ルアさん……!」
紅茶を噴き出したルアーネに、エレオノールが驚いた声を出す。が、もちろん一番驚いているのはルアーネ当人だ。
「な……」
挨拶することも忘れて硬直しているルアーネに、ジェラールは親しげに顔を寄せてきた。
「で、ルアぴょん……エレオとはあーんな事やこーんな事はヤったのかい?」
「あ……あんな事とは?」
なんとか声を絞り出してルアーネが聞き返すと、ジェラールはにんまりと笑った。
(ヤバイ……!)
即座にラビは、エレオノールの耳を塞ぐ。
「それはもちろんルアぴょんが〜(ピーッ、ピーピーピピピーーッッ)?」
ぷしゅう〜。
クールなルアーネだけれど、恋愛や下ネタにはまったく免疫が無い。ジェラールの繰り出す18禁用語にたちまちショートしてしまう。
「あれ? 否定しないってことはそうなのかな? もう〜ルアぴょんったら(ピーッ)なんだね☆」
ジェラールの方は、からかい甲斐のある相手が嬉しくてたまらない。固まってしまっているルアーネに、次々に放送禁止発言を投げかけて遊びまくっている。
「ラビ兄さん、どうして私の耳を塞ぐの?」
不思議そうなエレオノールに、ルアーネは放置でエレオノールの純粋を守る役に徹すると決めたラビは、その時だけ耳を塞いだ手を緩めて言う。
「エレオ、『知らぬが仏』っていう言葉があるんさ」
「で、でもルアさんが……大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫。旦那の遊び相手になってるだけだからさ」
そう言ってラビは再びしっかりとエレオノールの耳を塞ぐ。
(できればオレの耳も塞いでもらえると助かるんだけどねー)
ルアーネが立ち直れないほど、ぽんぽんと下ネタを連発するジェラールを眺め、ラビはこっそりため息をついたのだった。