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リアクション
★ ★ ★
『こちら、リュウライザー。ターゲットを発見しました』
森に三人の斥候を放った重攻機 リュウライザー(じゅうこうき・りゅうらいざー)が、武神雅に連絡を入れてきた。
装備の都合上遅れてきたのだが、それが幸いし、伏兵として隠密行動をとっていた。
同行させた斥候と共に索敵行動をし、ジェイドのアウカンヘルを首尾よく発見したのだ。
『よくやったのだよ。愚弟、聞いておるか。愚弟?』
「牙竜、聞こえました? そっちじゃないですよ」
コックピットに響いたはずの武神雅の言葉をちゃんと聞いたのかと、龍ヶ崎灯が武神牙竜に念押しした。
「だから、真っ先に突っ込んでいるだろ。行くぜ。行くぜ、行くぜ、行くぜ!!」
メインモニターに示された「こっち>>>」という表示に合わせて、武神牙竜がダイリュウオーの進行方向を変えた。
地面すれすれを、小型飛行ユニットですべるように滑空しながら、ダイリュウオーがジェイドの正面へと躍り出た。
『燃えるぜ、ハイパー!! ダイリュウオー、見参!!』
『これはこれは、どうも御丁寧に』
なぜか、アウカンヘルが軽く会釈をする。
『あっ、これはどうも御丁寧に』
つられて、ダイリュウオーがへこへこと頭を下げる。
『では、御挨拶代わりに一撃』
言うなり、アウカンヘルが前腕に仕込んだライトニングウイップを繰り出してダイリュウオーへ一撃を与えた。油断していたために、ダイリュウオーは避けようがない。
『うががががが……、ひ、卑怯な……』
一時的に機構が麻痺して、ダイリュウオーがひっくり返った。電撃がコックピット内まで伝わってくる。
『面白いですね』
まるで遊ぶように、アウカンヘルがライトニングウイップを振り下ろし続けた。衝撃で、ダイリュウオーのショルダーアーマーが吹き飛ぶ。
『――何をやっている。馬鹿、アホ、愚弟! 起きろ!』
武神牙竜の頭の中で、武神雅のテレパシーががんがんと響いた。
『痛えぞ、この野郎!』
なんとか電磁鞭をその手でつかむと、ダイリュウオーが武神牙竜の気力だけで立ちあがった。その間も電撃を受け続けて、機体の各所からスパークがあがる。
『やれやれ……!』
ジェイドが呆れた瞬間、アウカンヘルが横から突撃を受けて押し飛ばされた。
『何をやっているのよ!』
ツェルベルスで突っ込んできた志方綾乃が叫ぶ。加速装置による突進は、その接近をジェイドに気づかせないほど速かった。
さすがに大型イコンの突撃を食らって、アウカンヘルが両手でその突進を受けとめつつも、両足で大地を抉りながら押されていく。背後の木々が、薙ぎ倒されて砕け散っていった。
『敵の電磁鞭に気をつけてよ!』
小型飛空艇ヘリファルテで随伴してきたマール・レギンレイヴから、注意をうながす連絡が入る。
「ぬかりはないです」
体当たりしたと同時に、ツェルベルスの首の一つが電磁鞭の基部に食いついて、そのまま噛み千切っていた。ダイリュウオーが電磁鞭をつかんで固定していてくれたからこその攻撃だ。
『気を抜くなよ。まだ何か内装兵器が……』
マール・レギンレイヴが注意した瞬間だった。三つあったツェルベルスの左右の首が、一瞬にして吹っ飛んだ。
「うきゃあぁぁ、私たちの洗練されたツェルベルスの機体がぁぁぁ!!」
悪夢だと、リオ・レギンレイヴが悲鳴をあげる。
その隙に、アウカンヘルがツェルベルスから離れて間合いをとった。同時に、肩から打ち出されたホーンがヒュルヒュルと生き物のように巻き戻されていく。
「ああ、ひどい……」
『だから言ったのよ。来るわよ!』
落胆する志方綾乃にむかって、マール・レギンレイヴが叫んだ。
『何をしているんだもん!』
再びのびてきたオクトストライクのホーンを、リボン型の蛇腹剣で払いのけた鳴神 裁(なるかみ・さい)が叫んだ。
シルフィードの名にふさわしい、極限まで軽量化されたジェファルコンがひらりとアウカンヘルとツェルベルスの間を飛び越え、振りむき様に旋風回し蹴りを放つ。それを腕で受けとめたアウカンヘルから、今度は側面のホーンが飛び出してくる。フェアリーを思わせる淡いエメラルド色の機体のシルフィードが、四枚の翅に似たウイングを展開して、ひらりと空中で側転気味にそれを避けた。
だが、すかさず、今度は肩上方のホーンが襲いかかってくる。同時に、命中しなかったホーンがくるりとむきを変えて、別方向から襲いかかってきた。それ以外の方向からも、まるで獲物に襲いかかってくる蛇のように、肩から伸びた合計八本の触手のような槍が、全方向からシルフィードに襲いかかってきた。
巧みな空中機動で次々に攻撃を避けていくシルフィードであったが、さすがに全てを避けることはできない。触手の一本にフローターウイングの一部を傷つけられ、シルフィードがバランスを崩した。
「こんなにたくさん、無理だよぉ!」
回避用のデータを打ち込み続けていたアリス・セカンドカラー(ありす・せかんどからー)が悲鳴をあげた。シルフィードは、高機動にするために、装甲のほとんどを外している。はっきり言って紙だ。直撃を受けたら、一発で大破である。
『やっと、動けたぜ!』
そこへ、回復したリュウライザーが空裂刀を振り下ろして、シルフィードを貫こうとしていた触手を切り落とした。さすがに、アウカンヘルが移動して体勢を立て直す。
ツェルベルスがレーザーバルカンを撃って牽制した。
「さすがに、三対一では不利ですね。それにしても、トラロックも、もう少し使いやすい機体にしてくれればよい物を……」
ジェイドは、左前腕からもう一本のライトニングウイップを右手で引き出した。ヒュンと一振りすると、鞭の形状が棒状になり、ライトニングランスへと変化する。
リュウライザーが振り下ろしてくる剣を槍の穂先で受け流すと、素早く後ろへと突き出して、石突きで背後から近づいていたシルフィードを軽く突き飛ばす。左肩のオクトストライクが激しく唸り、近くにあった木を薙ぎ倒してツェルベルスの方へと弾き飛ばした。
『――よし、ドールよ、一緒に攻撃を開始じゃ。頭数は多い方がよいからの。ドール……。ドール? 返事をせんか!』
そんな激しい戦闘中に、ドール・ゴールドの頭の中で織田信長の声が響いた。
『――無理……戦闘中……です』
魔鎧として鳴神裁のパイロットスーツとなっていたドール・ゴールドとしては、とてもそんな要請に構っている暇はない。索敵要員として、テレパシーで敵の攻撃方向を鳴神裁に指示するので精一杯である。
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