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リアクション
★ ★ ★
「敵がこちらへ接近しているよ。カスタムタイプ1に、量産型みたいなのが多数」
各種分析機器を取りつけたトライポッドウォーカーの横に立ったノア・アーク・アダムズ(のあ・あーくあだむず)が、佐野和輝たちから送られてきたデータを解析して叫んだ。
「当然迎撃じゃな。行くぞ、忍」
織田 信長(おだ・のぶなが)が、六天魔王へむかって走っていった。
「カスタムタイプって奴の種類は?」
「カエルみたいな奴だって」
ヘッドセットを手にしたノア・アーク・アダムズが、桜葉 忍(さくらば・しのぶ)に答えた。
「よし、分かった。分析を頼む」
そう言うと、桜葉忍が六天魔王に乗り込んだ。すでに織田信長は各部点検を済ませている。
「遅い!」
「落ち着いていこう」
叱責する織田信長に答えると、サブパイロット席のセンサースイッチを次々に入れていく。ヴァラヌス鹵獲型をほとんど再組み立てして人形にした六天魔王の鉄(くろがね)の機体の各所にあるクリスタルに赤い光が点った。背につけたマントをたなびかせて飛翔する。
「武装はバスターライフルを使用するぞ」
「了解」
メインパイロットの織田信長に指示されて、桜葉忍が背部に横に背負った第六天魔砲を実弾仕様で両手にセットした。
その横を、高機動パックを装備したプラヴァータイプのブラウヴィント・ブリッツがすり抜けるようにして飛び出していく。
「中に入った燕馬くんから連絡がないのが気になるのだが、今は目の前の連中を潰すのだよ」
「なんとかするですぅ。ああ、蒼姐さん、左から来るですぅ」
やる気満々のザーフィア・ノイヴィント(ざーふぃあ・のいぶぃんと)に、センサーをモニタしていたフィーア・レーヴェンツァーン(ふぃーあ・れーう゛ぇんつぁーん)がすかさず言った。
「任せるのだ!」
すかさず急旋回して進路を変える。高速でのすれ違い様に一閃、MVソードでリーフェルハルニッシュの胴を薙ぎ払った。高周波振動する剣が、激しい火花を散らしながらリーフェルハルニッシュの胴を半分ほどまで一気に斬り裂いた。爆炎をあげて動きが止まるリーフェルハルニッシュに、反転したブラウヴィント・ブリッツが機晶ビームキャノンを放った。だが、ビームが途中で拡散して消えてしまう。
「なんだ、使えないだと?」
さすがに、ザーフィア・ノイヴィントが唖然とする。
「遺跡の近くでは、ビームは使えないって情報が来ているですぅ」
「だったら、もう一度なのだ」
フィーア・レーヴェンツァーンに答えると、ザーフィア・ノイヴィントはもう一度背後からリーフェルハルニッシュを今度は一刀両断にした。完全に上下に分断されたリーフェルハルニッシュが爆発する。だが、その爆炎も、なぜか急激に消滅してしまった。
★ ★ ★
「高速飛翔体接近!」
「どこから?」
飛装兵の報告に、ヘイリー・ウェイク(へいりー・うぇいく)が聞き返した。
「1時方向。着弾まで10秒」
「さぁ出番よ、あんたたち!。イーリ、急速発進。避難民の盾にする! ビームシールド急速展開よ。全員、衝撃に備えなさいよ!」
ヘイリー・ウェイクの命令で、大型飛空艇アイランド・イーリが、即座に離陸した。鋭角的な小型空母とも言えるシルエットの船体が、攻撃の来る方向にやや船体をかたむける。その船体が青白いビームシールドにつつまれた。
直後に、ベースの上空で、氷の爆発があり、飛び散った細かい氷の槍が地上へと降り注いだ。その大半を受けとめたアイランド・イーリが、衝撃でやや下方へ沈む。ビームシールドの表面で、弾かれたアイシクルランスの破片が蒸発して、吹きすさぶ水蒸気となっていった。
だが、大型飛空艇一隻で、全ての攻撃を受けとめられたわけではない、拡散した氷の槍の一部は、ベースとしていた場所の周辺部に降り注いだ。
直撃を受けた三船敬一の輸送車がひしゃげた直後に凍りつく。
「中継波が途絶えた? ベースが攻撃されているのか。各自、直接通信に切り替えろ。急ぐぞ!」
リーフェルハルニッシュの右脚にミサイルを叩き込んだ三船敬一が叫んだ。同様にして、左脚の膝関節部にワイアクローを撃ち込んだコンスタンティヌス・ドラガセスが、一気にワイヤー旋回して動きを止める。
足許をうろつく二機のパワードスツーに対して、リーフェルハルニッシュが突き潰そうとピルムムルスを振り上げた。
「いい形です」
そのタイミングを逃さず、白河淋が、スナイパーライフルで頭部を狙撃する。センサー部を貫通した弾丸が、内部で爆発した。
「もらいましたぞ」
一気にジャンプしたコンスタンティヌス・ドラガセスが、リーフェルハルニッシュの右脇の下にパンツァーファウストを叩き込んだ。爆発と共に、ピルムムルスを持った右腕が派手に吹っ飛ぶ。
「先に進むぞ」
ほぼ戦闘能力を失ったリーフェルハルニッシュを乗り越えて三船敬一たちは進んでいった。一撃で完全破壊ができなくとも、パーツ破壊で敵を戦闘不能に追い込んでいく、それがパワードスーツでの集団戦闘の基本だ。
「やってくれるではないか。のう」
六天魔王のマントを振り払って、命中した氷を振り落としながら織田信長が言った。とりあえず防げはしたものの、せっかくのマントが穴だらけだ。
「次弾来るぞ!」
「分かっておるのじゃ」
地上に降りた六天魔王が、バスターライフルを構えた。
「ターゲット補足」
「吹き飛べ!」
腰撓めに六天魔王がかかえ持った大口径砲から、実体弾が放たれる。反動で、六天魔王の足許の土が少し抉られた。
直後に、上空で巨大な氷の槍が分裂する前に粉砕された。細かな霰となって、氷塊が大地に降り注ぐ。
「もう一発は!?」
連射が間にあわないと知って、桜葉忍がモニタを切り替えた。
少し離れた場所で、兼定が後ろ足で立ちあがっていた。ところどころ氷がこびりついた兼定の大顎には、先ほどまでつついて遊んでいたカレーゴーレムが挟まれていた。先ほどの攻撃は、このカレーゴーレムを盾にして防いだらしい。立ちあがった兼定は、そのまま勢いよくカレーゴーレムを振り飛ばした。
奇妙な形に四肢をのばして放り投げられた無人のカレーゴーレムが、アイシクルランスに直撃する。巨大な氷の花が空中に咲き、細かな雹となって地上に降り注いだ。落ちてきたカレーゴーレムが、大地に激突して粉々の氷塊に砕け散る。
「ああん、あたしの攻撃が。もう、黙ってやられればいいのに!」
第二射を防がれて、アトラウアの中でエメラルドが悔しがった。
「敵、補足しました」
背部のシートで、補助装置として設置されているメイドロボが報告した。
「カスタムイコン発見」
同時に、桜葉忍もアトラウアを補足する。
『――よし、ドールよ、一緒に攻撃を開始じゃ。頭数は多い方がよいからの。ドール……。ドール? 返事をせんか!』
織田信長がテレパシーでドール・ゴールド(どーる・ごーるど)を呼び出そうとしたが、すぐには返事がない。
『――無理……戦闘中……です』
途切れ途切れに、かろうじて思考が届いてくる。とても、余裕などないと言う感じの切羽詰まった思考だ。
「仕方ないのう。私たちだけでも行くのじゃ!」
織田信長は、六天魔王をアトラウアにむけて発進させた。
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