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リアクション
★ ★ ★
「さすがは第二世代機。こんな雑魚なんか、目じゃないのだよ」
高機動戦闘でリーフェルハルニッシュを翻弄しながら、ザーフィア・ノイヴィントは優位に戦闘を続けていた。
「どんどんやっちゃえー、蒼姐さん!」
自立型とはいえ、しょせんは無人機だ。リーフェルハルニッシュは数で圧倒するガーディアンイコンであって、単機が臨機応変な戦闘をするようなものではない。さらに、天御柱学院の整然としたスコードロン単位(もっとも、天御柱学院の部隊編成は、混成部隊の場合がほとんどではあるが)の集団戦闘とは違って、自由気ままな者たちの予測不可能な戦法は敵を混乱させるには充分だった。
投擲型のピルムムルスでは、パワーブースターを装備したブラウヴィント・ブリッツの速度にはとうていおよばない。後方からの攻撃を垂直上昇であっけなく避けると、反転急降下した勢いでブラウヴィント・ブリッツがリーフェルハルニッシュを唐竹割りで切り捨てた。
墜落したリーフェルハルニッシュが、大地に激突して爆散する。盛大に黒煙が噴き上げて、周囲に広がった。
その黒い煙を割るようにして、突然現れた真紅の機体が猛スピードでブラウヴィント・ブリッツに肉薄した。
「こいつ……」
MVブレードとフラムベルクがぶつかり合い、互いの高周波振動が剣を大きく弾き飛ばした。素早く二機が距離をとりなおして対峙する。
「やばいですぅ。目立ちすぎたので、強いのが来ちゃったですぅ」
「なあに、どんなイコンでも、この第二世代機には敵わぬのだよ!」
心配するフィーア・レーヴェンツァーンに、ザーフィア・ノイヴィントが言った。
「あまり活躍されても、シトゥラリの進みが遅くなるからね。お楽しみは、私が許せる範囲にしておいてもらえないかな」
少しめんどくさそうに、ルビーがスイヴェンのコックピットの中でつぶやいた。
そんなつぶやきが聞こえるはずもなく、ブラウヴィント・ブリッツが再び斬りかかってくる。スイヴェンが軽く剣で受け流すが、すれ違ったブラウヴィント・ブリッツは素早く反転して冷凍ビームを放った。だが、スイヴェンは反転することもなく、背後に展開した六枚のレイウイングをバリアにして、それを防ぐ。凍結した大気が、光の翼に溶かされてもうもうと白い煙があがった。
その煙を一瞬で吹き飛ばして、真紅のビームがブラウヴィント・ブリッツに直撃したが、装甲表面が若干溶解しただけで耐えきる。
「さすがはプラヴァーですぅ。何ともないのですぅ」
「ビームが弱体化しているだけであろう。それにしても、ビーム砲など持っているようには見えなかったのに、どうやって……。来るぞ!」
今度は敵の方から斬り込まれて、ブラウヴィント・ブリッツが急上昇でそれを避けた。だが、すぐにスイヴェンも追ってくる。
激しく位置を入れ替えながら、二機のイコンは白兵戦を繰り広げていった。
直線での加速力ではパワーブースターを装備したブラウヴィント・ブリッツが勝るものの、小回りでは六つの翼から異なる方向へ力場を発生させるスイヴェンの方がトリッキーな機動で圧倒していた。逆に、直線的な動きは読まれやすい。
脚部カウンターウェイトを斬り飛ばされて、ブラウヴィント・ブリッツがさすがに距離をとるかのように離れた。すぐさま、スイヴェンが追ってくる。
「よし、そのままついてくるのだ」
乗ってきたと、ザーフィア・ノイヴィントがほくそ笑んだ。
遺跡から距離をとった地点で、反転してスイヴェンに突っ込む。二つの機体がぶつかり合って接触した。
「ビーム無効エリアから離れて0距離射撃をすれば、さすがに持たないであろう。終わりだ!」
ザーフィア・ノイヴィントがビームキャノンのトリガーを引いた。だが何も起こらない。
「どうして……」
「腕がないですぅ!」
唖然とするザーフィア・ノイヴィントに、機体をモニタしていたフィーア・レーヴェンツァーンが叫んだ。
いつの間にかに機体前面へ肩越しに振り下ろされていたスイヴェンのフェザーナイフモードのレイウイングが、ビームサーベルのようにブラウヴィント・ブリッツの両腕を切り落としていた。これでは、トリガーを引いても攻撃ができるはずがない。
盾を持った左手を後ろに引いたスイヴェンが、それを前面に押し出す。ヒーターシールド状の紋章と思われていた部分がくるりと回転して、チョッパーとしてブラウヴィント・ブリッツの頭部を切り落とした。
『まだですぅ、たかがメインカメラをやられただけですぅ』
外部スピーカーで、フィーア・レーヴェンツァーンが負け惜しみともとれる言葉を発する。
「両腕もないのだぞ」
そんなことを言っている場合かと、ザーフィア・ノイヴィントが叫ぶ。
「ちゃんと口裏を合わせるですぅ」
「フィーア君、君は何を言っているんだ!?」
もめているところへ、激しい衝撃がコックピットを襲った。スイヴェンがブラウヴィント・ブリッツを蹴り飛ばして距離をとったのだ。
「わざわざビームの効果がある場所までは来てくれるとは、迂闊だったね」
スイヴェンの六枚のレイウイングが再び形を変え、組み合わさって二本の三角柱の形をしたショルダーキャノンとなった。
『きゃあ、誘爆するですぅ!!』
そう言うと、フィーア・レーヴェンツァーンが、パワーブースターを自爆させた。
「うまく、墜落するですよぉ」
「任せるのだ」
素早くフィーア・レーヴェンツァーンの意図を察したザーフィア・ノイヴィントが言った。黒い煙をあげながらブラウヴィント・ブリッツが湖にむかって墜落していく。
「もう終わっていましたか。やれやれ」
臨界直前となっていたビームキャノンモードのレイウイングを、トライアングルシステムでフローターシールドモードに戻す。そのままブラウヴィント・ブリッツに興味を失うと、遺跡の方へと戻っていった。
ブラウヴィント・ブリッツはそのまま激しい水飛沫を上げて湖に墜落した。当然浮かぶこともなく沈んでいく。ここは、巨大スライムが発生した湖で、エメラルドが黒蓮を栽培するために水を溜めた場所だ。そのため、不自然なほどに深く、底が知れない。
「ちょ、ちょっと、なんで水の中に墜落するですかぁ」
コックピットの中に浸水してくる水に真っ青になりながら、フィーア・レーヴェンツァーンが叫んだ。
「地面に落ちたらバラバラだったであろうが」
「そんなこと言っても、このままでは溺れちゃいますぅ」
言い返すザーフィア・ノイヴィントに、フィーア・レーヴェンツァーンが負けじと言い返した。このままではコックピットは水で満たされてしまうし、かといって、今ハッチを開いても水が流れ込んでくる。まさに、絶体絶命だ。
そのとき、ガタンと衝撃があった。
「底についたのか?」
ザーフィア・ノイヴィントが言ったが、感覚としてはまだ動いている。いや、なんとなく浮上しているかもしれない。
『大丈夫でしたか?』
瀬名千鶴の声が、ブラウヴィント・ブリッツのコックピットに聞こえてきた。助けだ。
『すでに水面に出ています。早く脱出してください』
「助かったですぅ!」
コックピットハッチを開くと、機晶姫用フライトユニットを装備したザーフィア・ノイヴィントが、フィーア・レーヴェンツァーンをだきかかえてブラウヴィント・ブリッツを脱出した。
振り返ると、瀬名千鶴たちのツィルニトラが潜水モードのままブラウヴィント・ブリッツを押し上げて支えていた。
ぺこりと頭を下げて礼をすると、ザーフィア・ノイヴィントがベースへとむかう。そこには、まだS−01タイプのライゼンデ・コメートがあるはずだ。まだ、戦える。
★ ★ ★
「ノーン、援護頼みます」
イーグリット・アサルトで発進した御神楽陽太が、ノーン・クリスタリアに要請した。
「はーい、ここは私に任せて!」
オクスペタルム号で弾幕を張ってリーフェルハルニッシュを遠ざけつつ、ノーン・クリスタリアがミサイルをシパクトリにむかって連射した。それを避けるようにして、シパクトリが移動する。
「逃しはしませんわ」
待ち構えていたエリシア・ボックが、必殺のパイルバンカーを構え、御神楽陽太が一気に高速起動で突っ込んだ。初撃に全てを駆けて一撃で決めるつもりだ。基本的に、二の太刀は負けである。
「うわっ」
とっさに機体を低くして避けようとするものの、右肩のランチャーをパイルバンカーに吹き飛ばされて、シパクトリが後ろむきに吹っ飛んだ。
「この機体は、もともと支援攻撃用なんですよ。そういうのは、他の人とやってくださいな!」
文句を言いつつ、シパクトリが右手に持った大型銃をイーグリット・アサルトにむけた。ブーンと唸る音が聞こえた瞬間、イーグリット・アサルトの左腕が消滅した。いや、ニードルランチャーから発射された無数の微細徹甲弾によって粉々に粉砕され、文字通り粉微塵となったのだ。
「何が起こったんですの!?」
「大丈夫、まだ戦えます。次が来ます。ライフルを!」
唖然とするエリシア・ボックを、御神楽陽太が叱咤した。
「ちょっとまずいですね」
アクアマリンは周囲の木々をニードルランチャーで薙ぎ倒すと、その破片を煙幕とした。そこへ、エリシア・ボックが立て続けにアサルトライフルを叩き込む。
ボンと爆発音があり、唸るような発射音が消えた。ニードルランチャーに、あたったようだ。
「これまでです」
アクアマリンは残っていた方のランチャーをむしり取って放りあげると、それを自爆させた。閃光と共に、周囲のイコンのモニターに一時的な焼きつけ現象を引き起こす
「惑わされないで。バスター砲、発射!」
風森望の号令で、シグルドリーヴァから砲弾がシパクトリのいた場所にむかって撃ち込まれる。
センサーが回復したとき、シパクトリのいた場所はバスター砲の砲弾で抉られており、イコンの姿も残骸もそこにはなかった。
「逃げられたわね」
すでにシパクトリが索敵範囲内から姿を消したのを確認して、風森望が悔しそうに言った。
「大丈夫、生きてるよねー?」
大破したイーグリット・アサルトに近づきながらノーン・クリスタリアが訊ねた。
『環菜、聞こえますか? なんとか勝利できたようです』
「待て! どさくさに紛れて、変な通信するんじゃありませんわ。まったく。だいたい、これじゃ相討ちですわよ!!」
ノーン・クリスタリアではない所へ報告する御神楽陽太をひっぱたきながら、エリシア・ボックが叫んだ。
「とにかく回収するよー」
オクスペタルム号の艦底ハッチを開くと、ノーン・クリスタリアは動けなくなったイーグリット・アサルトの上に降りていった。それを援護するように、シグルドリーヴァが弾幕を張ってリーフェルハルニッシュを牽制する。
「もう、遺跡があんなに近くに……。なんとかしなくてはいけませんわ……」
接近してくる遺跡を見て、ノート・シュヴェルトライテが考え込んだ。
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