First Previous |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
Next Last
リアクション
★ ★ ★
「これは……。この状況で、我に何ができるのだ……」
いきなり始まったイコン戦を見て、ガイアス・ミスファーン(がいあす・みすふぁーん)が自問した。生身でイコンと戦うなど、自殺行為に他ならない。だが、それであれば、ここに存在するガイアス・ミスファーンとはなんだ?
困惑してるガイアス・ミスファーンの視界を、銅(あかがね)色のペガサスが横切っていった。
「ユイリか?」
いや、ユイリ・ウインドリィ(ゆいり・ういんどりぃ)が乗っているのは、もっと小型のワイルドペガサスだ。
『――私じゃありませんよ。私やあなた以外の誰かです』
ガイアス・ミスファーンの思考を読みとったのか、どこかにいるユイリ・ウインドリィの言葉がガイアス・ミスファーンの頭に流れ込んできた。
「みんな、頑張ってください。この遺跡をイルミンスールに辿り着かせてはいけません。世界樹ごと爆発してしまいます。森を、世界樹を、あたなたちの帰る場所を、シャンバラを守って!!」
レガートに乗ったティー・ティーが、ペガサススピアを振り回してリーフェルハルニッシュの間を駆け抜けながら叫んでいた。魔法の投げ矢などは投げる端から消滅してしまうので、実体を持ったペガサススピアを使って、リーフェルハルニッシュの注意を引いている。
「あの娘は何をしているんだ。あんな槍でイコンを落とせるはずもないのに……」
その無謀さに唖然としながら、ガイアス・ミスファーンはつぶやいた。
『――そうとも限らないですよ。人は考えるものみたいですから。私も、少し考えてみたいけれど、今は考えるよりも身体が動いてしまいそうです』
「……」
ガイアス・ミスファーンがユーリ・ウィルトゥスの言葉を考えている間にも、リーフェルハルニッシュが飛び回るティー・ティーを落とそうと、その手をのばしていった。
「危ない!」
思わずガイアス・ミスファーンが叫んだとき、そのリーフェルハルニッシュの首の後ろで爆発が起きた。コントロールを失って墜落を始めたリーフェルハルニッシュが、構えていたピルムムルスで別のリーフェルハルニッシュを貫き、揃って地面に激突して大破する。
最初に爆発を起こしたリーフェルハルニッシュの背後から現れた三船敬一たちの三機のパワードスーツが、ティー・ティーに挨拶のポーズをとってから別の敵にむかって行く。
「イコンを落としただと……」
『――そうですね。そういうことです』
ガイアス・ミスファーンのつぶやきに、ユーリ・ウィルトゥスが相づちを打った。
「我にも、そんな力が……。イルミンスールを守る力が……。我の場所を守る力が……あるはずだ!!」
叫んだガイアス・ミスファーンの身体が灼熱化した。全身の鱗が赤く高熱を発し、バキバキと音をたてて巨大化していく。
あっという間にガイアス・ミスファーンの全身が赤い鱗に取り込まれて真紅の球体と化す。
さらに球体は巨大化していった。
そして、ついに燃えるような球体が限界を突破して弾けた。
周囲に、龍鱗が飛び散る。
その中から、真紅の炎龍が現れた。
鋭い牙のならんだ顎から咆哮が響き渡った。
『――戦うのですね』
「我が力の前に、散るがよいわ!」
翼を広げて空に舞いあがると、ガイアス・ミスファーンはワイバーンクローで敵の剣ごと、その腕を斬り裂いた。リーフェルハルニッシュの首筋に噛みつくと、ドラゴンブレスでそのまま焼き千切る。
そのガイアス・ミスファーンの変貌に、遠く離れた場所で眠っていたミスファーンが、同族の波動を感じてその鎌首をあげた。微かに目を細めると、何かを悟ったかのように長い咆哮をあげるのだった。
★ ★ ★
「アギャギャ。見ろよ、周り中敵だらけだ。やり放題だぜ」
謎の敵イコンが出て来たと聞いて狂喜乱舞したジガン・シールダーズ(じがん・しーるだーず)が、その狂喜のままに晃龍オーバーカスタムを驀進させていった。
究極まで肉を削いだ鋼竜は、もはやフレームだけが残っているとしか言いようがない。真紅の細い機体に、グレイの四肢。まさに異形のイコンであった。
一気に地上にいるリーフェルハルニッシュを切り刻もうと光条サーベルを抜いた晃龍オーバーカスタムであったが、刀身をつつむ光条が発生しない。
「おや、本当にだめなんだねえ。エネルギー兵器は使えないって情報が入ってるよぉ。でも、その程度のことは……」
「ああ、関係ねえぜ!」
サブパイロットのエメト・アキシオン(えめと・あきしおん)に答えると、ジガン・シールダーズが光条サーベルを投げ捨てた。突き入れられてきた敵のピルムムルスを、最低限の動きで避ける。通常のイコンであれば串刺しになっているような動きだが、スリムな晃龍オーバーカスタムにはそんな場所に機体はない。
のびきった敵の腕から、素早く敵のピルムムルスをつかみ取ると、そのまま逆に押し出す。自分に武器に腹を貫かれて、リーフェルハルニッシュがあおむけにひっくり返って火を吹いた。
倒した敵には目もくれず、ジガン・シールダーズが今度はアサルトライフルを取り出して、別のリーフェルハルニッシュを撃ち倒す。
「アギャギャギャ!! さあ殺し合いの始まりだっ!」
襲い来るリーフェルハルニッシュのピルムムルスを楽しげに払いのけながら、ソニックブラスターの0レンジ射撃を叩き込む。装甲の隙間から衝撃波を叩き込まれ、内部崩壊したリーフェルハルニッシュが奇妙な角度に折れ曲がって停止した。
快進撃を続けるかに見えた晃龍オーバーカスタムに、上空にいたリーフェルハルニッシュがピルムムルスを投げつけてきた。わずかに頭部をかすめ、晃龍オーバーカスタムの額に斜めの傷をつける。
「やってくれる。今そこに行ってやるぜ!」
ジガン・シールダーズはそう叫ぶと、走りだした晃龍オーバーカスタムからワイヤーロープを発射した。遺跡底部に命中したロープの先のプローブが、しっかりと外装に食い込む。ジガン・シールダーズは、一気にワイヤーを巻き取ると、大地を蹴った。
まるでサーカスのように晃龍オーバーカスタムの機体が弧を描いて宙を舞う。
まさかそんな攻撃を想定もしていなかったリーフェルハルニッシュの一機が、横からキックを食らって墜落した。すかさず、グレネードを投げて止めを刺す。舞いあがる黒煙とリーフェルハルニッシュの破片をバックに、晃龍オーバーカスタムがアサルトライフルを乱射した。
多くのリーフェルハルニッシュが撃墜される中、銃撃をかいくぐった敵イコンが剣でワイヤーを断ち切る。
「やりやがったな!」
反転してそのリーフェルハルニッシュを撃ち落としたものの、晃龍オーバーカスタムも落下する。地面に激突すれば、装甲のない晃龍オーバーカスタムはバラバラに分解してしまうだろう。
だが、地面直前で、その機体がスッと持ちあげられた。
「おっと、味方は撃たないでもらおう」
そう言うと、ガイアス・ミスファーンが軽く上昇をかけてスピードを殺してから、つかんでいた晃龍オーバーカスタムの両肩を放した。ストンと着地した晃龍オーバーカスタムが、すぐさま走りだす。
大きく羽ばたくと、ガイアス・ミスファーンは遺跡の上部へとむかった。
First Previous |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
Next Last