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リアクション
★ ★ ★
「この光の流れは、エネルギーの流れであるのかな?」
進んで行く通路の壁を流れる光のラインを見て、玉藻前が言った。
「多分。吸収された光条エネルギーとかが、これを伝って集まってる……と思う」
完全に破壊されてしまったラボの調査を諦めた漆髪月夜が同意した。
「このエネルギーの流れを吸収から放出に変えることができれば、逆に我らのパワーアップにも使えようものだが、はてさて……」
自らの持つ機晶技術と先端技術を総動員して玉藻前が考えるが、太古の遺跡には先端技術では相性が悪すぎる。
「エネルギーの流れを変えることができれば、進路を変えることもできるかもしれないな。とりあえず、適当にぶっ壊して進むとするか」
安直に考えると、樹月刀真は黒曜石の覇剣で壁を斬りつけた。深々と壁に剣の切り跡が刻まれ、光のラインが切断される。それまで綺麗に流れていた光の線が途中で止まった。
「よし、この調子で、コントロールルームを目指すぞ!」
どんどんと破壊を繰り返しながら、樹月刀真たちは進んで行った。
★ ★ ★
「さっさと急ぐわよ」
元の格納庫へと急ぐ宇都宮祥子たちであったが、思いもかけず新たなサテライトセルの一団と出会ってしまった。
「頑張ってください、祥子さん。パワーブレス!」
攻撃魔法はまずいということなので、イオテス・サイフォードが宇都宮祥子を応援して戦わせる。
「私にお任せよっ!」
梟雄剣ヴァルザドーンを振るって、宇都宮祥子がサテライトセルの群れに突っ込んでいった。
どうやら警備用ではなくてメンテナンス用のサテライトセルであったようで、武器は持っていない。こうなればこっちのものである。あたるを幸いに、宇都宮祥子はサテライトセルを斬り倒していった。
「俺様の分も残しておけよ。オラオラオラオラァ!」
「ステキです、ピンクモヒカン兄貴!」
自分にもやらせろと突っ込んでいくゲブー・オブインをバーバーモヒカンシャンバラ大荒野店が応援する。
「顕仁、後ろは頼むで。壁のエネルギーラインも引き続き破壊していってや」
大久保泰輔もサテライトセルの迎撃に加わりながら言った。
「うむ。極力魔道回路は破壊しておこう」
サテライトセルたちは大久保泰輔たちに任せて、讃岐院顕仁が高周波ブレードで壁の回路を破壊していった。
だが、樹月刀真や讃岐院顕仁たちのこの行動が、修復用のサテライトセルを呼び寄せいてることには、まだ彼らは気づいてはいない。
「こんな所にも、ラボがあるわ。ここは……」
「もっちろん、消毒だぜえい!!」
宇都宮祥子の言葉を横取りして、ゲブー・オブインが再びラボを破壊していった。負けずと、宇都宮祥子も加わる。こういう物を残しておけば、後ろから攻撃仕様に再フォーマットされたサテライトセルに追撃されかねない。そのへんは、ちゃんとさっき学習したようだった。
★ ★ ★
「こっちだ」
壁につけられた印を辿りながら、トマス・ファーニナルが先導していった。後ろには、初期化されたサテライトセルをだいた綺雲菜織が続く。
「後ろから、追いかけてくるぜ」
後方から追いかけてくるサテライトセルの一団に気づいて、テノーリオ・メイベアが警告した。
「あれは、あの子とは違って、攻撃兵器ですからね。排除しましょう」
十字路を曲がったとたん、躊躇することなく魯粛子敬が先に仕掛けておいた機晶爆弾のスイッチを押した。
爆発が壁を破壊し、タイミングよく通りかかっていたサテライトセルたちを一掃した。同時に、壁を流れていた光のラインが途切れる。爆風が綺雲菜織たちの身体を後ろから突き飛ばすように襲いかかった。だが、爆発の大半はすぐに遺跡に吸収されてしまった上に十字路で拡散したので、軽く身体が浮く程度で助かる。そうでなければ、蒸し焼きになっているところだが、そのへんは魯粛子敬がすでに歴戦の防御術で計算した上での爆破だった。
吸収されたエネルギーは、分断された場所を避けるようにして、遺跡のどこかへと伝達されていく。
「おっと、メールだ。――やべえぜ、この遺跡その物がイコンで、魔法エネルギーを蓄えて自爆するってよ」
佐野和輝から届いたメールを見て、テノーリオ・メイベアが叫んだ。
「このエネルギーの流れを、放出に切り替えることができれば、爆発は防げそうではあるのだがな。あなた、方法は知らないのか?」
「わかんない……」
綺雲菜織の言葉に、サテライトセルが答えた。
「あなた、しゃべれるの?」
「どうやら、基本的な事項は入っているようですな。命令と、その都度必要なデータだけが今はないということですか。他の物たちも初期化できれば無害化できそうですが、残念ながら時間がありますまい」
綺雲菜織にだかれた人形のようなサテライトセルをのぞき込みながら、魯粛子敬が言った。
「偽善かもしれないけれど、せっかく助かったんだから、この子だけでも無事に連れ出すのだよ」
綺雲菜織は、決意を秘めた目でそう言った。
★ ★ ★
「要請がありました」
アイランド・イーリの飛装兵がヘイリー・ウェイクに告げた。
「でも、イーリ単艦じゃあ……」
どうしたものかとヘイリー・ウェイクが考え込んだとき、大型飛空艇の船団が後方から現れた。湯上凶司たちが修理に協力して、とりあえず再び飛べるようになったイルミンスールの輸送艦だ。甲板などに空いた被弾の跡などは放置したままだが、一応最低限の大砲程度は積んでいる。
「いいところへ来たよね。後方輸送艦に連絡だよ。我が艦と隊列を組み、一斉砲撃をされたしと」
すぐに輸送艦と連絡をとったヘイリー・ウェイクが、連携して艦隊隊形をとる。
「照準は?」
「さっきデータが来ていたでしょ。弱点らしき小型ハッチの部分よ。そこなら通路から外れているはずだわ」
砲手の問いに、ヘイリー・ウェイクが答えた。
「全艦、敵遺跡に対して一点集中射撃を行うよ。照準合わせてね。いい? 発射!!」
ヘイリー・ウェイクの命令と共に、一斉に砲撃が始まった。