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空を渡るは目覚めし艦 ~大界征くは幻の艦(第3回/全3回)

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空を渡るは目覚めし艦 ~大界征くは幻の艦(第3回/全3回)

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 幸いにして、眼前にあるゲートはゴアドー島の物よりも大きいので、各艦は最大船速のままで回廊へと突入できそうであった。
「縦一列、突撃陣形。フィールドバリア、全方位展開。長くは維持できないぞ、バリアが有効な間にゲートに突入せよ。フリングホルニを先頭に、全艦最大船速。発進せよ!」
 一時的にチューブ状の力場で船体をつつみ込んだフリングホルニが、先頭に立ってゲートへとむかっていった。
 当然のように、敵ヴィマーナから攻撃が浴びせられる。
「データリンクシステム、情報発信完了だよ」
 佐野和輝の乗るブラックバードの中で、スフィア・ホーク(すふぃあ・ほーく)のサポートを受けたアニス・パラス(あにす・ぱらす)が多数の敵艦の位置を把握して、破壊すべきターゲットデータを艦隊各艦へと送信した。
「戦闘リンクシステム同期確認。全艦、一斉射!」
 即座に、ホレーショ・ネルソンが、H部隊の全艦に命じた。フリングホルニの後方、左右上下に六角柱のように陣形を整えた大型艦から、一斉に主砲副砲が発射される。フリングホルニを囲むようにしてのびていった火線は、ヴィマーナ艦隊の戦艦を直撃した。
 粉砕されたヴィマーナが爆発炎上し、炎につつまれた破片が他のヴィマーナの上に降り注いだ。
「今だ、全艦最大加速!」
 バリアを張ったフリングホルニが突っ込む。未だ無事な多数のヴィマーナから、結晶柱が弾けるようにして散弾が撃ち込まれるが、フィールドバリア表面で弾道が逸れて周囲に散っていった。そこへ、後続の大型艦や直掩のイコンが弾幕を張って牽制する。
 まさに一気に駆け抜けるという感じで、フリングホルニはゲートに飛び込んでいった。
「続くぞ!」
 HMS・テレメーア、ウィスタリア、土佐、伊勢、ヒンデンブルク号、クイーン・メリーが牽制攻撃をかけつつフリングホルニに続く。エリシア・ボックのオクスペタルム号と夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)たちのバロウズが各艦の間に挟まれて同時に突入し、殿としてシュヴァルツガイストが突入していった。
 
    ★    ★    ★
 
「僚艦の突入進路と敵位置のデータを送るよ!」
 上空に位置したEsprit・Mから、黒乃音子が長曽禰サトの纏めたデータを、ニルヴァーナに残る各艦に送った。
「主砲、砲撃始め!」
 巡洋戦艦アルザスのブリッジで、フランソワ・ポール・ブリュイが命令する。それに合わせて、フラン・ロレーヌのアストロラーベ号とルイ・デュードネ・ブルボンのラ・ソレイユ・ロワイアルが砲撃を開始した。
「援護射撃、開始」
 アーマード・レッドが、大型荷電粒子砲でまだ離陸していないヴィマーナをビームで薙いだ。
 激しい爆炎の上を、フリングホルニを始めとする艦隊がゲートへと突入していく。
「艦隊は無事ゲート内に進入。敵艦、追撃を開始!」
 ウィンダムに乗る高崎朋美が、ハーポ・マルクスのカル・カルカーへ報告した。その間にも、ウルスラーディ・シマックがウィッチクラフトライフルで上空から攻撃を加える。
「追いかけさせるなー!」
 後顧の憂いをたち、艦隊に時間を与えるべくカル・カルカーが、砲撃を命じた。
 高崎トメが、ハーポ・マルクスの主砲であるウィッチクラフトキャノンを発射し、ドリル・ホールが敵イコンを牽制してデッキガンで弾幕を張った。
「敵旗艦はすでにゲートの中なのだ。すなわち、ここに残っているのは指揮艦を失ったただの烏合の衆。それがしたちで、殲滅できようぞ」
 夏侯 惇(かこう・とん)が、味方を鼓舞した。
 ジョン・オーク(じょん・おーく)が、散発的な敵の攻撃を巧みに避けながら、ハーポ・マルクスを遺跡に接近させていった。
「弾幕、たらないよ。敵がゲートに侵入しちゃってる!」
 互いに主力はゲートの中へ入ってしまったとはいえ、残存艦艇の数は未だ10倍以上の開きがある。敵の行動がゲートへの進入を優先させた単調な物のために、一方的な反撃によって包囲殲滅をまぬがれているという状態だ。それゆえ、火力不足で敵のゲート侵入を防げずにいた。
「面制圧をかける。スカルプ・ナヴァール発射!」
 フランソワ・ポール・ブリュイが、アルザスから大型巡航ミサイルを発射した。敵ヴィマーナ群に突っ込んでいったミサイルが、上部カバーを排除し無数のクラスターミサイルを雨のように降り注がせた。
 アーマード・レッドも、同様のマルチプルミサイルを発射し、Esprit・Mからもミサイルが発射される。
 遺跡を被うように爆炎が広がり、ゲートに進入していたヴィマーナの足が止まった。
 その間に、アルザスが全速でゲート前に移動し、ヴィマーナとゲートの間に立ちはだかった。
「アルザスを盾とする。これ以上、敵をゲートに入れるな」
 アルザスに正面を阻まれて、ヴィマーナがゲートには入れなくなった。無理に突破しようとするヴィマーナが、アルザスの副砲や、背後からのアームドベース・デウスマキナ改からの攻撃でほとんどが辿り着けずに撃沈する。
 敵の背後をとった大型飛空艇からの攻撃も、効果的に敵ヴィマーナにむかって浴びせられた。
 だが、その分、敵の攻撃を一身に受ける形になったアルザスの損害も無視できない物になっていく。
「第一五区画被弾。隔壁閉鎖。右機雷放出管損傷、使用不能。第二主砲小破、まだ左一門は使用可能。エンジン出力低下、攻撃には支障なし!」
「まだ、持たせろ! 沈むのは敵を全滅させてからだ!」