リアクション
ゲート破壊 「船体装甲、損傷率80%。機関出力低下、高度維持できません!」 「持たないですかな……」 巡洋戦艦アルザスの状況報告に、フランソワ・ポール・ブリュイが厳しい面持ちになった。 ゲート前に艦を固定して敵の侵入を防ぎつつ善戦したものの、集中攻撃を受けては巨大戦艦としても耐えきれない。 「下にいるヴィマーナは踏みつぶすのだ。全砲塔、最大仰角。一隻たりとも、頭上を通過させてはならん!」 降下しつつ、巡洋戦艦アルザスが下方に接近していたヴィマーナを弾き飛ばしながら遺跡の床に擱坐した。ゲート前の障害物がなくなり、ヴィマーナが一気にゲート内になだれ込む。 「全艦、アルザスを援護。敵艦を、ゲートに進入させるな!」 フラン・ロレーヌの命令一下、アストロラーベ号とラ・ソレイユ・ロワイヤルが砲撃を先頭を進むヴィマーナに集中させた。それに合わせて、アームドベース・デウスマキナ改とハーポ・マルクスも狙いを集中させる。 先頭のヴィマーナが爆発し、巡洋戦艦アルザスの上に燃える破片をばらまいたときであった。 突然、ゲートから爆炎があがった。 『――何、何が起こったの!?』 『――いったん後退だ!』 ハーポ・マルクスの上方から攻撃をしていたウィンダムの中で、ウルスラーディ・シマックが高崎朋美にむかって叫んだ。激しく爆発を起こして崩壊を始めたゲートから、飛び散る破片を避けてあわてて後退をする。 「ゲートが崩れる。みんな、早く脱出するんだもん」 黒乃音子が、全員に告げた。 「二度と使えない方法ですが、外装はここで捨てますかな」 フランソワ・ポール・ブリュイが、エンジン出力を緊急脱出レベルまで上げた。同時に、巡洋戦艦アルザスの外部装甲面で次々に爆発が起こる。吹き飛ぶ装甲板の下から、新たな装甲板が現れた。さすがに無傷とは言いがたいが、なんとか船体を保ってはいる。500メートルはあった巡洋戦艦アルザスが、一割ちょっと一回り小さくなって、遺跡の床面を滑るようにして脱出を始めた。 それを援護しつつ、上昇や反転離脱しようとするヴィマーナを、アストロラーベ号とハーポ・マルクスらが一斉攻撃で押さえ込んだ。 「今です。敵を押さえ込みましょう」 ハーポ・マルクスを交代させつつも、ジョン・オークが叫んだ。 「機を逃すな。今が勝負のときぞ!」 夏侯惇が、砲手に攻撃を指示する。 「逃がしは、させまへんで」 「おうよ!」 高崎トメとドリル・ホールが、ハーポ・マルクスの全砲門を開いて攻撃をした。 下方からは巡洋戦艦アルザスの多弾頭ミサイルがヴィマーナの艦隊中央に撃ち込まれて混乱を引き起こす。 巨大なゲートは、施設の内側から次々に誘爆を起こすと、分離墜落し始めた。すでに、回廊へと入るための境界面は消失してしまっている。 「全艦、緊急退避!」 命からがら全艦が後退する眼前で、崩れたゲートが遺跡に降り注いで、残ったヴィマーナをその下敷きにして押し潰していった。 「いったい、何が起こったって言うんだろう?」 炎と粉塵でまったく見えなくなってしまった遺跡の方向を見据えて、カル・カルカーがつぶやいた。 「残ったヴィマーナを切り捨てたか。それでも勝算があると踏んだか……。いや、これは、ただの思い上がりだな」 夏侯惇が、事の推移を見守りながら言った。 「敵の愚策は、最大限利用するのが戦いの常。敵艦が動けぬ今こそ、残敵掃討の機会!」 「よおし、まだ動ける敵を殲滅するよ!」 夏侯惇の言葉に、ただ成り行きを見守りかけていたカル・カルカーが気を引き締めなおした。 「了解。各砲手攻撃再開。ハーポ・マルクス前進!」 舵をとるジョン・オークが、ハーポ・マルクスを前進させていった。 「こちらも、行くよ。損傷の酷いアルザスは、後方から支援して」 負けじと、黒乃音子も、全艦の前進を指示した。 |
||