リアクション
激戦 『敵大型ミサイル飛来。迎撃をお願いします。特に、HMS・テレメーアの砲塔の死角に注意を払ってください』 フィーグムンド・フォルネウス(ふぃーぐむんど・ふぉるねうす)が、レーダーで敵の攻撃を把握しながら、HMS・テレメーアの各砲手や艦載イコンに的確に指示を飛ばしていった。 「それにしても、本当に主砲代わりをするとは……」 「はははは、墜ちろ! この一撃は、もう一艦のHMS・テメレーアと知れ!!」 鬼龍貴仁が、HMS・テレメーアの甲板で荷電粒子砲を発射しようとした。だが、ぷしゅーっいっただけで、何も起こらない。 「はあっ……」 鬼龍黒羽が溜め息をついた。やっぱりエネルギーが来ていない。エネルギーパックがあればまだましなものを、わざわざ取り外して機内オペレータ席にしてしまったものだからアウトだった。 「大人しく、ビームアサルトライフル撃ってなさい。仕方ない、こちらはこちらで敵の攻撃を迎撃するよ」 「うん」 鬼龍白羽に言われて、鬼龍黒羽がゲシュヴィントヒルフェのショルダーキャノンで攻撃を始めた。 その横では、アウクトール・ブラキウムが敵の大型ミサイルを捕捉していた。 「敵ミサイル接近。テレメーア下方を通過しようとする奴を集中して攻撃だよ」 キャロライン・エルヴィラ・ハンターが、HMS・テレメーアの射界の死角になるミサイルをターゲットして、トーマス・ジェファーソンにデータを送った。 「了解。迎撃だよ」 トーマス・ジェファーソンが、迎撃のためにナパームランチャーを発射した。 HMS・テレメーア上空では、岡島伸宏の閃電がレーザーバルカンで、敵ミサイルを迎撃していた。 「それにしても、動きが鈍い。これも、回廊の影響か!?」 岡島伸宏が、少しやりにくそうに言った。 「天御柱学院のアップバージョンのOSが動いているから、行動に支障はないはずよ。後は、伸宏の腕でカバーして」 「ああ、やって見せるさ!」 山口順子に言われるまでもないと、岡島伸宏が巨大ミサイル群を迎撃した。だが、さすがにすべては撃ち落とせずに、いくつかは見逃してしまう。 「なんだ、このミサイルは、イコン並みの大きさだぞ。狙いは……フリングホルニか!」 ★ ★ ★ 「ああ、あなたいったい何を……」 いきなりフリングホルニの医務室に闖入してきた謎物体を見て、コレット・パームラズ(これっと・ぱーむらず)が小さく悲鳴をあげた。それは、見た目、空中を漂う金色のクラゲであった。 プカプカと医務室の中を飛んでいったクラゲは、ベッドの上で簀巻きにされているシルフィスティ・ロスヴァイセを目指す。そして、ギフト用ブレードを振り上げると、斬った。 「助かったあ……って、なんでシーサイドがいるのよ」 身体を縛っていた紐を切られて、自由になったシルフィスティ・ロスヴァイセが言った。 「いいかげん、少しは役にたてという、リカインからの伝言です」 「ふーん、偉そうに。まあいいわ。いいかげん、身体を動かさないと、全身筋肉痛になりそうだわ。でも、敵は戦艦やイコンなんでしょ。いったいどう戦えっていうのよ」 シルフィスティ・ロスヴァイセが開きなおった。 「それに関しては、リカインから伝言を頼まれています」 そう言うと、シーサイド・ムーンが、何やらシルフィスティ・ロスヴァイセにひそひそと耳打ちをした ★ ★ ★ 「ミサイル残弾0なのじゃ。補給を要請するぞ」 「了解。そちらは任せる。補給はメカニックに任せて、パラスアテナ・セカンドはこの場に固定。ウィッチクラフトキャノンとレーザーマシンガンで弾幕を張る」 飛来する巨大ミサイルの弾道をブレス・ノウで予測しながら、御凪真人は名も無き白き詩篇に答えた。 要請を受けて、フリングホルニの甲板にローザ・セントレスとユリウス プッロ(ゆりうす・ぷっろ)が、ミサイルを積んだキャリアーを走らせてやってくる。敵の特殊空間のため、小型飛空艇は完全に飛行不可能となり、仕方なく地上走行型のキャリアーを使用している。 イコンデッキでは、補給を終えたシフ・リンクスクロウのアイオーンが、イコンリフトで甲板へと上がっていくところであった。 ★ ★ ★ 「リオ……この機体?」 中破したメイクリヒカイト−Bstから下りたフェルクレールト・フリューゲルが、隣のハンガーに駐機されたヴァ―ミリオンを見て、目を見張った。深紅の機体に、重厚なV−LWSを全身に装備した第三世代機ベースの試作機だ。 「開発コード“朱雀”、V−LWSの運用データ取得のための高機動型実験機……この仕事の後で、ニルヴァーナでの運用試験をするために載せてもらっておいたんだ。武装と呼べるのはV−LWSくらいの非戦闘用の実験機……しかも未調整。それでも……行くかい?」 「……乗るよ。アレを野放しにして、銀河のハテなんて目指せない」 フェルクレールト・フリューゲルの答えを聞いた十七夜リオが、口角を崩しながらメイクリヒカイト−Bstのコンソールから、データカードを引き抜いて飛び降りてきた。 一緒にヴァーミリオンのコックピットに滑り込むと、コンソールのスロットにそのカードを差し込んだ。メイクリヒカイト−Bstで蓄積されてきた試験用データが、ヴァーミリオンにロードされていく。 「戻ってきたら、必ず直してやるからな……」 モニタ越しにメイクリヒカイト−Bstに声をかけると、十七夜リオが両頬を叩いて気合いを入れた。 『――フェル! 無理も無茶も通していくよ!』 リフトに移動すると、上昇してカタパルトをセットする。カタパルト上に障害物がないことが確認され、フィールドカタパルトが展開された。 「飛ぶよ、ヴァーミリオン……銀河を貫くワタシのツバサ!!」 フェルクレールト・フリューゲルがヴァーミリオンを発進させた。フリングホルニのカタパルトを飛び出したとたん、V−LWSから複数枚のエナジーウイングが美しく展開した。それらの光の翼の角度を個々に自由に変化させて、ヴァーミリオンが回廊の中を縦横に飛び回る。 『――すべて斬り抜けるよ』 十七夜リオが示すルートに沿って、フェルクレールト・フリューゲルがヴァーミリオンを舞わせた。巨大ミサイルとすれ違い様に、レーザーウイングがミサイルを斬り裂く。 すると、その中から、銀色の結晶体を生やしたイコンが飛び出してきた。イレイザー・スポーンに寄生されたタンガロア・クローンだ。 『――これ、ミサイルじゃない、キャリアーです』 『――爆発の恐れがないのなら、すべて叩き斬るよ!』 巨大ミサイルの正体を知ると、フェルクレールト・フリューゲルたちはヴァーミリオンのV−LWSを一部収束させて、ファイナルイコンソードで巨大イコンミサイルを完全に真っ二つにしていった。 |
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