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リアクション
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「敵ヴィマーナをフリングホルニを囮にして引きつける。伊勢を先頭に、ウィスタリアと飛行可能なイコン編隊を分遣隊としてフリングホルニを離れて、左舷、母艦攻撃位置に。ヒンデンブルクは陽動として右に大きく移動。テレメーア、土佐、クイーンメリーはフリングホルニ後方直近に。敵を引きつけ次第、後衛艦は前進。一斉砲撃で敵を破壊し、敵母艦にむかう。敵直掩艦がフリングホルニ方向に移動した隙を突いて、一機に分遣隊で母艦を叩く」
グレン・ドミトリーの指示で、艦隊が移動を始めた。
作戦通りに、円形陣を敷いていた艦隊が鶴翼の陣に隊形を変える。フリングホルニを攻撃する好機と見た敵がすかさずヴィマーナの一隊をさしむけてきた。
敵を充分に引きつけつつ、フリングホルニが後退する。
「後方、回廊崩壊部との距離に常に注意してください」
巻き込まれては元も子もないと、エステル・シャンフロウがリカイン・フェルマータに注意した。
深追いしてきたヴィマーナを、テレメーア、土佐で左右から押しつつむと、フリングホルニの下方に位置したクイーン・メリーとで三方から包囲して集中攻撃をかける。
「ええい、邪魔だ、邪魔だぁ!」
未だのりのりの猫井又吉が、ヤークトヴァラヌス百式の無尽パンチを縦横に繰り出して、敵艦の死角から強力な一撃を繰り出していた。
あるときはパンチで敵艦を押し出し、あるときはクローを突き刺し引っ張り出す。こちらの射界から、敵が逃げださないようにしている。
「よし、今度は右上に敵が近づいているぜ」
国頭武尊が、慣れないながらも敵艦を見つけ次第猫井又吉に指示している。それも、なるべく、味方のイコンが攻撃しにくい位置にいるヴィマーナだ。
「よっしゃあ、こーい! こいつで、当面の邪魔者は最後だぜ!」
猫井又吉が、無尽パンチを敵に突き立てると、ズルズルとヴィマーナを味方射線に引きずり出した。だが、それを逆手にとって、ヴィマーナが突っ込んできた。ヤークトヴァラヌス百式が引っぱりすぎたようだ。
このままでは、フリングホルニに衝突する。
「ああああ、やってもうたあ!」
猫井又吉と国頭武尊が頭をかかえて叫んだ。
「いい所に持ってきてくれた!」
猪川勇平のバルムングが、フィールドカタパルトを使って飛び出した。回廊内を飛行するほどのエネルギーはないが、飛び出す程度ならできる。もっとも、戻る術はないわけだが。
飛び出したとたんに人型に変形すると、バルムングが敵ヴィマーナに飛び乗った。そのままファイナルイコンソードで敵を斬り裂きながら、その裂け目に0距離で滑空砲を全弾叩き込んでいく。
ヴィマーナが内部で爆発を次々に起こして、フリングホルニから逸れていく。
「これぐらいはしなくっちゃな。脱出するぞ」
「はい。でも、どこへ……」
セイファー・コントラクトが猪川勇平に聞き返した。
その瞬間、バルムングがバラバラになった。四肢が吹き飛び、コックピットの部分が強い力で引っぱられる。
「わりい、ちょっと力入り過ぎちまった」
無尽パンチでバルムングのコックピット部分だけを掴んで引き戻した猫井又吉が悪びれずに言った。
「こ、これは、きっとわざとでございます!」
セイファー・コントラクトが決めつけた。
「お、俺のバルムングがあ!」
爆散していくヴィマーナを見つめつつ、猪川勇平が叫んだ。
★ ★ ★
「道を切り開くであります!」
葛城吹雪の伊勢が攻撃を開始する。
「いけるな、アルマ」
「ええ」
柚木桂輔にささえられたアルマ・ライラックがうなずく。
ウィスタリアと伊勢から放たれたグラビティカノンが母艦周囲のヴィマーナに直撃を与えた。収束する漆黒の空間が、ヴィマーナをひしゃげ、押し潰して破壊する。
母艦にむけてまっすぐの突入口が開かれる。
「敵イコンは任せてください」
先陣を切った小鳥遊美羽のグラディウスと、桐ヶ谷煉のセラフィートが、タンガロア・クローンを次々に撃ち落としていった。
「デュランダルの開放ができなくったって、こんなイコンに遅れはとらないぜ!」
桐ヶ谷煉が、ファイナルイコンソードで一気に敵を蹴散らす。運よく逃げられたタンガロア・クローンも、グラディウスが近くはダブルビームサーベルで、遠くはガトリングガンで、遠近織り交ぜて撃墜していった。
『あの出っ張った柱の山あたりが怪しいよ。アンテナみたいじゃない』
『――よおし、そこを狙いましょう』
四瑞霊亀に指摘されて、シフ・リンクスクロウが母艦中央の突起群に狙いを定めた。
『――接近ルートを割り出します』
『――行きます!!』
ミネシア・スィンセラフィが割り出して転送してきたルートを、ディメンションサイトで直感的に把握移動しながら、シフ・リンクスクロウが母艦に近づいた。
イレイザー・スポーンの塊であるその突起群を、アイオーンのバスターライフルの乱射で破壊する。
直後、周囲のヴィマーナやタンガロア・クローンの動きが乱れた。
『――今よ、突っ込むよ!』
十七夜リオのヴァーミリオンが、動きの鈍ったタンガロア・クローンにエナジーバースト前回で突っ込んでいった。フルに展開されたV−LWSが、すれ違い様に触れた敵イコンを真っ二つにしていく。
その間に、先行できたグラディウスとセラフィートが敵母艦への攻撃を始めた。後方から、アイオーンのバスターライフルが母艦表面に傷をつける。
「このときを待っていた!」
いったん敵をふりほどいて身を隠していたマスティマが、EMジャマーを解除し、満を持して姿を現す。
「レーザービット全機展開。ツインレーザーライフル、ターゲットサイト・イン。マキシマムショット!!」
火力を総動員して、マスティマが敵母艦の損傷部に攻撃を集中する。
母艦を中心とする敵ヴィマーナの混乱をついて、フリングホルニの本隊からの攻撃も始まった。荷電粒子砲の光芒が、暗い回廊内を光で斬り裂く。
★ ★ ★
「違う、あれは、ソルビトールの取り込まれた母艦じゃない。俺たちが調べようとしていたもう一つの母艦の方だ!」
フリングホルニ内で、集めたヴィマーナのデータを悠久ノカナタと分析していた緋桜ケイが叫んだ。
今回の戦闘の最大の転換点だと、艦内モニタで戦闘の様子を見ていたのだ。
ブラックバードから転送されてきている敵母艦の詳細画像には、破損部から内部の様子が垣間見えていた。その場所、中央部の部屋に突き刺さっていたのはエンライトメントの折れた薙刀の刃だった。