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リアクション
★ ★ ★
「敵母艦を発見したとの報告がありました」
オペレータ席に戻ってきたリカイン・フェルマータが、再び頭にシーサイド・ムーンを乗せてから報告した。
「よし、全艦、敵母艦に攻撃を集中させろ。それを沈めさえすれば、この戦いも終わりが見えるぞ。一斉射撃後、イコン部隊突入。敵攪乱を実行せよ。その間に艦隊は接近。近接戦闘で母艦を確実に沈める」
グレン・ドミトリーが、全員へと通達した。
★ ★ ★
『敵艦が、艦隊下方に回り込もうとしています』
ヴィマーナ艦隊の一部の動きを察知して、四瑞霊亀が、シフ・リンクスクロウに告げた。
『――射線確保します』
ミネシア・スィンセラフィが、アイオーンをフリングホルニの下方へと移動させる。
『――回り込もうとする敵を、味方射線上に押し出しますよ』
艦隊の下部に回り込もうとするヴィマーナに、シフ・リンクスクロウのアイオーンがバスターレールガンを叩き込んだ。
直撃を受けたヴィマーナが、爆発に押し下げられて機首を下にむける。そのまま回廊内バリアに激突した。接触した船体が真っ二つに折れ、爆発四散する。
内壁に近づきすぎたヴィマーナ群が一斉に回廊中央部へ進路を取り直す。
「今ですわ。砲撃を！」
カミーユゴールドのヒンデンブルク号が要塞砲で攻撃を浴びせる。同様に、先頭にいたウィスタリアも、接近してくる敵に砲撃を集中した。
数隻が撃沈するも、一隻のヴィマーナがウィスタリアに突っ込んできた。距離が近くて避けようがない。
「全員、耐ショックを！」
アルマ・ライラックが、イコンデッキ他の乗組員にむかって艦内放送で叫んだ。
ここで回避行動をとれば、船体舷側にヴィマーナに突っ込まれて轟沈する恐れがある。よくて、相討ちだ。
アルマ・ライラックは艦首を敵にむけると、ウィスタリアを強襲形態に移行し、副船体の合わさった艦首にバリアを集中させた。被弾面積を少なくして、バリアの密集度を上げる。
突っ込んできたヴィマーナがウィスタリアと接触する。バリアにつつまれたウィスタリアの艦首が、ラムのように敵ヴィマーナの船体に突き刺さった。
「なんだ、何が起こった！？」
激しい衝撃に床に投げ出された柚木桂輔が叫んだ。
「敵に突っ込まれた……いや、こちらは無事だから、突っ込んだのかのう」
柱にかろうじてつかまりながらアレーティア・クレイスが言った。
「くっ、補給中にか！？ くそ！」
ゴスホークのＢＭＩの濫用でエネルギー補給と各微調整に戻っていた柊真司が叫んだ。ハンガーのゴスホークが倒れそうになるのを、両手でハンガーを掴んでなんとか食い止める。
「出られないのか？」
開け放したハッチから身を乗り出して叫ぶ柊真司を、ヴェルリア・アルカトルがあわててささえ持った。
「今は無理じゃ！」
発進ハッチがふさがれていると、アレーティア・クレイスが叫ぶ。
「アルマ！？ あいつウィスタリアとリンクしてるのに、こんなことしたら……。店長すいません、俺、ブリッジに行ってきます」
「いちいち断らずともよい。急がぬか、馬鹿者！」
駆け出していく柚木桂輔をアレーティア・クレイスが叱責した。
柚木桂輔がよろけながらなんとかブリッジへむかう間にも、状況は推移していた。
「このままじゃ、共倒れに……」
バリアにつつまれた艦首にのびてくるイレイザー・スポーンの結晶樹状の触手にも似た腕を感じて、アルマ・ライラックが身震いした。艦内には、まだ完全融合していないイレイザー・スポーンが残っているのだろうか。
「早く離脱しないと……」
アルマ・ライラックが、ウィスタリアを変形させた。合わさっていた艦首が、左右に開いて敵艦を引き裂く。露出した敵ヴィマーナ内部にむかってウィスタリアがグラビティカノンを０距離発射した。直撃を受けたヴィマーナ機関部が、収縮し潰れていく。それに引っぱられたヴィマーナが裏返るようにしてウィスタリアを放した。
「急速後退！」
横からのびた手が、アルマ・ライラックの目の前のレバーを引く。ウィスタリアが急速後退し、直後にヴィマーナが爆発した。
「まったく、無茶しやがって……」
「桂輔？ っ……」
心配そうに自分の顔をのぞき込む柚木桂輔の顔を見て、アルマ・ライラックが言った。右足の感覚が鈍い。モニタを確認すると、右船体が中程から内側にむけて折れ曲がっていた。その損傷のフィードバックが、リミッターを超えて身体にきたのだろう。
「とりあえず、ウィスタリアは無事です」
「馬鹿、艦よりもアルマの身体の方が大事だろ」
柚木桂輔が、大声でアルマ・ライラックを叱った。
★ ★ ★
「爆発か！ よし、発光信号をあげるであります。ウィスタリア爆沈とな……いてっ！」
「まだ沈んでいません！」
ＢＧＭを高らかに流してウィスタリアの沈没を演出する葛城吹雪を、コルセア・レキシントンが思いっきり張り倒した。
「まったく、変なこと言いださないでください」
「乗りが悪いでありますね。よし、ウィスタリアに続くであります。次に轟沈するのはこの伊勢に……」
「いいかげんにしてください」
沈没は戦艦のロマンだと言いはる葛城吹雪を、再びコルセア・レキシントンが張り倒した。
「後退したウィスタリアに替わって前衛を務めます。伊勢、前進。鋼鉄二十二号さん、攻撃を継続してください」
「了解した。伊勢は我が守って見せるのだよ」
コルセア・レキシントンに言われて、砲撃の手を休めずに鋼鉄二十二号が答えた。
