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リアクション
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「よおし、敵母艦を倒すのじゃあ」
「一番槍は、このビヤーキーちゃんなのです！」
大戦果を立てて秋月葵にイコンの有用性を証明するのだとばかりに、フォン・ユンツト著『無名祭祀書』とフォン・ユンツト著『無銘祭祀書』の乗るＬｏｒｄ−Ｂｙａｋｈｅｅが強襲をかけた。
だが、まだ敵の防御が厚く、対空砲火もハンパではない。
「きゃん、被弾したんだもん！？」
左右に展開したビームシールドの隙間を縫って敵の攻撃がＬｏｒｄ−Ｂｙａｋｈｅｅの右翼に直撃した。
「もう少しだったのにぃ！」
「仕方ない、いったん下がるのじゃ」
ミサイルを一斉発射して牽制すると、人型に変形して後退する。そこへ、タンガロア・クローンが迫った。スフィーダソードで一機を仕留めるものの、別の一機の突き出したピルムムルスがＬｏｒｄ−Ｂｙａｋｈｅｅの左腕を粉砕した。
「いやあ！ ビアーキーちゃんがあ！」
フォン・ユンツト著『無名祭祀書』がコロージョングレネードを乱射した。
一瞬動きが止まった直後に、タンガロア・クローンが爆発する。
『まったく、何をやっている。早く下がれ！』
岡島伸宏の乗った閃電が、レーザーバルカンで弾幕を張りながら伝えてきた。
「山口さん、リミッター解除、ＢＭＩを！」
「分かりました。残弾、気をつけてください」
岡島伸宏に言われて、山口順子が閃電のＢＭＩのリミッターを解除した。
敵の位置を的確に把握しつつ、弾幕を張ってＬｏｒｄ−Ｂｙａｋｈｅｅを援護する。
「残弾３０％を切りました。いったん土佐に戻って補給を。――土佐へ、閃電、補給を要請します」
岡島伸宏に告げると、山口順子が土佐の高嶋梓に告げた。
『了解しました。左舷デッキから着艦してください』
高嶋梓の指示を受けて、閃電がいったん土佐に帰還する。
「補給急ぐぞ。ビームライフルのエネルギーパック交換。ショルダーキャノンの弾倉も交換だ。レーザーバルカンの砲身冷却剤補充。三分で終わらせるぞ！」
待ち構えていた大田川龍一が、イコンハンガーに固定された閃電に、ロボットアームを縦横に使って弾薬の交換を始めた。同時に、機体の損傷もチェックしていく。
「はい、あなたたちも、今のうちにエネルギーを補充して」
天城 千歳（あまぎ・ちとせ）が、イコンから降りてきた岡島伸宏と山口順子に、サンドイッチと密閉パック化されたジュースを渡した。
「ありがとう」
お礼を言って受け取ると、山口順子が両手で持ったサンドイッチにぱくつく。
「整備終わったぞ」
「了解だ。行くぞ！」
大田川龍一の言葉に、岡島伸宏と山口順子があわただしくサンドイッチをジュースで流し込み、閃電のコックピットへと戻っていった。
「さて、今回の費用はこれだけっと……」
再発進していく閃電を見送ってから、大田川龍一が電卓を弾いた。
「しっかりしてますねえ」
天城千歳が、大田川龍一に言った。
「しかし、土佐の費用もだが、最終的に誰が払うんだろうな。まあ、ちゃんと払ってくれれば、出所がどこだろうが変な詮索はしないつもりだが」
アディティラーヤでの作業を思い出して、大田川龍一が言った。
「最悪、天城家で一時立て替えもできますが、あまり現実的ではありませんわね。まあ、順当に湊川さんがローンを組んでくれるか、エステルさんが経費として出してくれるか……。それとも、今回スポンサーを名乗った方がおられるようですから、そこにすべて丸投げの可能性が高いですわね」
「全部か！？ 相当な額だぞ？」
「多分夜逃げするのではないでしょうか」
さらりと天城千歳が言った。
★ ★ ★
「なんとか、戻って来られましたあ……」
ぼろぼろになってフリングホルニに戻り着いたＬｏｒｄ−Ｂｙａｋｈｅｅから下りてきて、フォン・ユンツト著『無名祭祀書』が言った。
「我が乗ったイコンをこんなにするなど、許せないのじゃ。リターンマッチじゃあ！」
「でも、ビヤーキーちゃんは、もう無理ですわ」
意気込むフォン・ユンツト著『無銘祭祀書』に、フォン・ユンツト著『無名祭祀書』が言った。
「ええい、何か他の……」
ぐるりとイコンデッキを見回したフォン・ユンツト著『無銘祭祀書』の目に、忘れ去られたかのように隅っこで体育座りの降着ポーズで黄昏れていたＮｉｇｈｔ−ｇａｕｎｔｓの姿が映った。
「よし、これで勝つる！ 再出撃じゃ」
意気揚々とフォン・ユンツト著『無銘祭祀書』が、フォン・ユンツト著『無名祭祀書』と共にＮｉｇｈｔ−ｇａｕｎｔｓに乗り込んでいった。放置しておいたことは、この際完全にスルーであった。
「発進……あらららら！？」
元気に走りだそうと思ったのだが、なんとも鈍々の動作でＮｉｇｈｔ−ｇａｕｎｔｓがやっと一歩を踏み出した。
「敵の変な魔法で、動きが鈍いんだもん」
サブパイロット席に着いたフォン・ユンツト著『無名祭祀書』が言った。
「ええい、そんな魔法などあるものか。邪神の根性を見せたれなのじゃあ！」
そう言うと、フォン・ユンツト著『無銘祭祀書』は、なんとか一歩ずつ広いイコンデッキの中を、一番奥にあるイコンリフトめがけて歩いていった。はたして、戦いが終わるまでに間にあうのだろうか。
