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リアクション
★ ★ ★
「早くシャトルへ!」
無限 大吾(むげん・だいご)が、ニルス・マイトナーに守ってもらっているエステル・シャンフロウ(えすてる・しゃんふろう)にむかって叫んだ。近づいてくる敵機晶姫をインフィニットヴァリスタで撃ち倒す。
階段にむかっての道は、西表 アリカ(いりおもて・ありか)が居合い斬りで、セイル・ウィルテンバーグ(せいる・うぃるてんばーぐ)が金剛嘴烏・殺戮乃宴で打ち倒して切り開いていく。
「イコンか!」
なんとか敵機晶姫は退けたものの、頭上に進んできたヴィマーナから降下してくるタンガロア・クローンを見て、エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)が叫んだ。機晶姫なら生身でもなんとかなるが、相手がイコンではそうそう簡単にはいかない。
即座にロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)がソニックブレードを放ったが、装甲表面の結晶体を削り取っただけだ。
そのまま踏みつぶされるかに思われたとき、横から真っ赤な影が飛び込んできて敵イコンを文字通り弾き飛ばした。飛び込む勢いをすべて敵にぶつけ与えたヤークト・ヴァラヌス・ストライカーが、ズンと床を振るわせて、エステル・シャンフロウたちを両足の間でまたぐように着地した。
即座にショルダーキャノンを発射してタンガロア・クローンに止めを刺す。
「今のうちです。早く御搭乗ください。フリングホルニに戻ります」
開け放ったコックピットハッチから飛び降りてきたフレロビー・マイトナーが叫んだ。手に持って引き下ろしてきたクライマーのストラップをエステル・シャンフロウの胸に押しつける。
「早く行ってくれ」
無限大吾が、エステル・シャンフロウを急かした。
「すみません」
銃弾の飛び交う中、クライマーで上に上ったエステル・シャンフロウがコックピットに滑り込む。
「戻りますよ」
ひょいとエステル・シャンフロウの腰に手を添えたデュランドール・ロンバスが、彼女をサブパイロットシートへ押し上げた。小さく可愛い悲鳴が聞こえた気がしたが、気にもとめずにハッチを閉めてヤークト・ヴァラヌス・ストライカーを発進させる。
「おーい、俺も連れていってくれ」
フリングホルニにむかって上昇しようとするヤークト・ヴァラヌス・ストライカーに、エヴァルト・マルトリッツがワイヤークローを引っ掛けた。そのままイコンに貼りつき、便乗して遺跡を後にする。
「あーん、ボクをおいてかないでよ!」
残されたロートラウト・エッカートが、あわててヤークト・ヴァラヌス・ストライカーを追いかけていったが、エヴァルト・マルトリッツを引っ掛けたイコンはあっという間に小さくなっていった。
「やれやれ。こちらは自力でシャトルに急ぐぞ」
「ボクたちも早く戻らないとね。うん、急ごう!」
ヤークト・ヴァラヌス・ストライカーを見送った無限大吾が、西表アリカたちに言った。
「こっちです!」
セイル・ウィルテンバーグが、地上へのルートを探しだして先頭に立って走りだした。
★ ★ ★
「ヴァラヌスにエステルさんが乗って戻るみたい」
「援護しよう」
ライゼ・エンブの言葉に、朝霧垂が黒麒麟を反転させた。
下から攻撃しようとしているヴィマーナの上に下りて、砲塔と思われる結晶柱を踏み砕いて突き進む。同時に、上に乗った魂剛もすれ違い様に結晶柱を切り落とす。甲板上に落ちた結晶柱が次々に爆発していき、一体となったイコンの通った後に炎の道を作ってヴィマーナを傾かせた。
「どけ!」
猪川 勇平(いがわ・ゆうへい)のバルムングが、機神掌でタンガロア・クローンを弾き飛ばすと、滑空砲で止めを刺す。
「マスター、二時方向。敵が、味方をロックオンしています」
「させないぜ」
セイファー・コントラクト(こんとらくと・せいふぁー)の指示に、猪川勇平がバルムングをジャンプさせた。飛翔してヤークト・ヴァラヌス・ストライカーを追おうとするタンガロア・クローンを、ダブルビームサーベルでX文字に斬り裂く。
「先導します」
シフ・リンクスクロウ(しふ・りんくすくろう)のアイオーンが、上空に位置するタンガロア・クローンを撃破してヤークト・ヴァラヌス・ストライカーの道を切り開こうとした。
『敵も、こちらに気づいたようです。気をつけてください』
周囲から集まってくるタンガロア・クローンに、四瑞 霊亀(しずい・れいき)が注意をうながした。
『――ねえ、あれ、何? ちょっとまずいかも……』
ミネシア・スィンセラフィ(みねしあ・すぃんせらふぃ)が、虹色に発光し始めたヴィマーナ母艦を見て告げた。
『逃がしはせん』
遺跡に、わんわんと響くような音でソルビトール・シャンフロウの声が聞こえた。ヴィマーナ母艦自体から発せられているようだが、音と言うには異質な聞こえ方だ。
母艦から発せられる光が遺跡に満ちると、急激に各イコンの動きが鈍くなった。
「これは……」
「何かのエネルギーフィールドのようです。シャドウレイヤーに似てはいますが……。機晶エネルギーの出力低下」
戸惑う柊 真司(ひいらぎ・しんじ)に、ヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)が分析結果を告げた。
「イコンは動けるのか?」
「フローター出力の関係で、低出力の機体は飛行困難になるかもしれません。ゴスホークであれば、なんとかなりますが」
「なら、BMIの出力を100%にあげろ」
「無茶です。身体がもちません。へたしたら、廃人になってしまいますよ」
柊真司の言葉に、ヴェルリア・アルカトルがあわてて止めた。
「ヴァラヌスを脱出させる間だけもてばいい。もともと、100%を実現するためにテストを繰り返しているんだ。できなければ意味がない」
『大丈夫。私がサポートするわ』
魔鎧となって柊真司に装着されているリーラ・タイルヒュン(りーら・たいるひゅん)が言った。
「魔鎧は身体を守れても、精神力まで守れるの?」
『いざとなったら、潜在開放するわよ』
ヴェルリア・アルカトルの疑問に、リーラ・タイルヒュンはそう答えた。
「分かりました。BMIリミッター解除します」
柊真司の決意に、ヴェルリア・アルカトルがゴスホークのBMI出力をMAXに上げた。柊真司の五感が一瞬失われ、直後に、まったく違った形で戻ってくる。皮膚が鋼のように感じられ、視覚が三六〇度に広がる。聞こえる音は可聴域を超えて、様々な電波が嵐のように周囲を渦巻いていた。普段は人間の脳がフィルターをかけて厳選している情報が、一気になだれ込んでくる。ゴスホークの全センサーと駆動系を己が物としても、それを制御できなければ自らを破壊するのみだ。
さらに、リミッターを解除したからと言って、即座に100%の状態になることはない。これで、まだ80%に満たない状態である。
「道を開く!」
柊真司が、グラビティコントロールシステムを発動させた。動きの鈍ったヤークト・ヴァラヌス・ストライカーに群がろうとしていたタンガロア・クローンの群れが、突然進路を乱して衝突する。そこへむかって、ディメンションサイトで無我のうちに位置を把握したゴスホークが、ありえない機動で移動しながらブレードで斬り裂いていった。
その間に、ヤークト・ヴァラヌス・ストライカーが遺跡を脱出していく。
「BMIカット!」
限界と判断したヴェルリア・アルカトルがBMIをすべてオフにする。
「無茶をさせすぎたか……?」
いくつかレッドシグナルがともるコンソールを見つめて、全身汗びっしょりになった柊真司が言った。反動からか、ゴスホークの動きが鈍い。
『こちらも、いったん退避するよ』
ゴスホークの機体をかかえるようにして、シフ・リンクスクロウが言った。有り余るアイオーンの出力を駆使して、ヤークト・ヴァラヌス・ストライカーの後を追って遺跡を離脱する。
『小賢しい。だが、もう艦隊は止められまい』
憎悪を撒き散らしながら、ソルビトール・シャンフロウの同化した母船がゲートへとむかった。
『――逃がしちゃダメだよ。フェル!』
そうはさせるかと、十七夜リオがフェルクレールト・フリューゲルに言った。
メイクリヒカイトが、母船の後を追おうとした。だが、戦艦型ヴィマーナ数隻がその幾手に立ち塞がった。一斉射撃にメイクリヒカイトが被弾し、高周波ブレードを持った右腕が吹っ飛ぶ。
『――しまった!』
フェルクレールト・フリューゲルの叫びが、ダイレクトに十七夜リオの頭の中に響いてくる。
『――大丈夫、メイクリヒカイトはこの程度で爆発はしないよ。でも、いったん戻るしかないかも……』
ゆうゆうとゲートに入っていく母艦をレーダーで捕捉しながら、十七夜リオが悔しそうに言った。
「しまった、みすみす見逃しましたか!」
パラスアテナ・セカンドのミサイルを発射しながら、御凪 真人(みなぎ・まこと)が叫んだ。
発射されたミサイルは、母艦の盾となった戦艦ヴィマーナに阻まれて、戦艦にダメージは与えたものの、母艦のゲート突入は許してしまった。
「読みが甘かったですね。ここはいったん退いて、フリングホルニで補給、追撃に移りますよ」
ダメージを与えた戦艦の外部装甲板亀裂にナパームランチャーを撃ち込んで内部を燃やしながら、御凪真人が言った。
「了解した。敵艦の情報はできるだけ収集するからの。あわてず、急ぐのだぞ」
少しでも情報が欲しいと、敵艦のデータを収集しながら名も無き 白き詩篇(なもなき・しろきしへん)が言った。
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