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リアクション
さぁて、皆様お待ちかね。
何でもありが信条の乗り物レース、ジェイダス杯の開催だ!
主催校の一存で自転車によるレースとなった第三回だが、今回も強者共がそろったぞ。
注目の選手は、第一回の優勝者ハーリー・デビットソン(はーりー・でびっとそん)と準優勝のツインターボの魔女上連雀 香(かみれんじゃく・かおり)。
初回は極度の方向音痴のためにリタイアとなったものの第二回では見事、第三位に輝いたソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)や、三回連続出場且つ常に上位入賞を果たしつつも、未だ無冠の帝王比島 真紀(ひしま・まき)とサイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)の存在も見逃せない!
他にも、改造人間パラミアント五条 武(ごじょう・たける)と仮面ツアンダー風森 巽(かぜもり・たつみ)、パラミタ刑事シャンバラン神代 正義(かみしろ・まさよし)と正義の三大ヒーローも集結だ。
また、初出場選手としては、薔薇学明智 珠輝(あけち・たまき)のパートナー巨漢アリスのポポガ・バビ(ぽぽが・ばび)や、予選会にはすべて参加するも敗退をくり返し、悲願の本戦出場を果たした蒼空学園生樹月 刀真(きづき・とうま)も注目したい。
そして出場者の行く手には、実行委員に名乗りをあげた東條 カガチ(とうじょう・かがち)や御凪 真人(みなぎ・まこと)らが仕掛けた罠が待ち受ける!
ちなみに今大会、何と協賛会社が付いているぞ。目指せ、パラミタ随一の大商人佐野 亮司(さの・りょうじ)が経営する佐野商店が用意してくれた救護テントでは、白衣の天使向山 綾乃(むこうやま・あやの)と、レースクィーンのロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)が待っている!
もちろん綾乃が着ているナース服は、パンツが見えそうなほどに短いコスプレ仕様だ。しかし、綾乃はスカートの丈が気になるのか、先ほどからずっと裾を引っ張っている。
その隣では、耳まで真っ赤になったロザリンドが、水着からはみ出た胸元やお尻を気にしているぞ。
「色気とかないし。応援されてもあまり嬉しくないレースクィーンですけど…」
いやいや、そんなことはございません。
儚くも初々しい貴女の姿に、男達の視線は釘付けだぁ!
校長の趣味で、とかく間違った花ばかりが咲き誇りがちの薔薇学イベントだが、二人の麗しき美少女の献身的な協力のお陰で、まっとうな華やぎを身にまとうことができるというもの………と思いきや…。
「患者…患者患者…患者……」
まるで念仏のような陰気さを漂わせる呟きの方に視線を向けてみると、そこにいたのは蒼空学園の島村 幸(しまむら・さち)。
三人乗りの自転車の横に立っている島村の姿は、白衣を着た医者のように見える…のだが。自転車にまたがろうとした瞬間、白衣の裾から見えたのは、生の太股!?
もしかして島村、白衣の下は裸…なのかっ?!
素肌に白衣のみを身にまとった女医ならば、アダルトビデオをこよなく愛する男達の夢かもしれないが、一見、露出狂の男にしか見えない島村では、萌えもへったくれもない。
しかし、島村のパートナーであるガートナ・トライストル(がーとな・とらいすとる)だけは別らしい。止まらない鼻血を両手で押さえながら、何やらモゴモゴと呟いている。
「さ…幸。そんなキュートでセクシーな姿で人前に出るなんて…」
「ガートナ、お前はどこまで目が腐っているんだよ。キュートでセクシーってのは、あっちのお嬢さん達みたいなのを言うんだ!」
そう言って綾乃とロザリンドを指さすアスクレピオス・ケイロン(あすくれぴおす・けいろん)の主張は尤もである。
とりあえず負傷者の看護だけはしっかりとしていただきたいものだが…所謂マッドサイエンティストである島村幸では、患者を作りかねない。
出場者のみんな、彼女を見かけたら、速効で逃げて、逃げて!
何はさておき、またしても曲者達がそろったジェイダス杯。
数多の英雄候補達の野心を駆り立てるように今、高らかに開催のファンファーレが鳴り響く!
スタートと同時に猛然とママチャリを漕ぎ出したのは、蒼空学園トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)
と、連続出場選手の一人ナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)だ。赤と緑のツートンカラーのピエロ服を身につけたナガンは、今回もまた色違いのピエロ服を着たパートナー達を引き連れての出場…と思いきや?!
目的の果物を目指して四方八方に走り去っていったのは、すべて赤と緑の服を着たナガンである。
「じゃじゃじゃじゃーん、じゃじゃじゃじゃーん!」
ベートーベンの運命を口ずさんだ「じゃんナガン」に、精悍そうな雰囲気漂う「褐色ナガン」、ビスクドールのような白く艶やかな肌をした「ツルペタナガン」。
遠目にはナガンが4人に分身したかのように見えるが、変装させたパートナー達がそれぞれ別の果物を採りに行く作戦のようだ。
さすが姑息で卑怯が信条の波羅実ナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)。
だが、これはなかなか効率の良い作戦だ!
と、ここで「じゃんナガン」が走る枝が大きくしなったぞ。
「うわっ、なんだっ?!」
先行するトライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)は、愛用の通学用自転車を漕ぐ足を一瞬、止めた。
トライブは目的の果実までの道なりが登り坂であることを利用する作戦だ。凍った坂道を自転車で上るのは至難の業である。そこでパートナーのベルナデット・アンティーククール(べるなでっと・あんてぃーくくーる)に自分達の通った後を魔法で凍らせてもらっていたのだった。
スタートダッシュも綺麗に決めたし、これで「優勝に王手を掛けたぞ」と思っていたトライブであったが…。
何やら雲行きが怪しい…
というよりも、いつの間にか下り坂になっている…ような気がする…。
不審に思ったトライブが振り返れば、そこには赤と緑のピエロ服を身につけた「じゃんナガン」の姿があった。
それも凍った枝を利用し、猛然と滑り降りてきているっ?!
その痩身からは予想もつかないが、実は「じゃんナガン」。体重が254kgもあるのだ。その重さ故に、上を向いていたはずの枝がしなってしまった…というわけだ。
「じゃじゃじゃじゃーん!!!」
何が起こったのか分からないトライブは呆然と迫り来る「じゃんナガン」を見つめている。先に我に返ったのは、ベルナデットだ。
「トライブ、迎撃するぞい!」
素早く魔法を詠唱したベルナデットは、じゃんナガン目がけて雷を放つ。
しかし、ウイリーの要領で前輪を持ち上げたじゃんナガンは、襲いかかる閃光をジャンプで避けた。
じゃんナガンが着地した瞬間、枝が大きく揺れたのは言うまでもない。
「一つめの果物、いっただきじゃーん!」
枝から落ちるまいと足を踏ん張るトライブの横を「じゃんナガン」が抜き去っていく。
「じゃんナガン」一つめの果物ゲットだ!
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