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【十二の星の華】剣の花嫁・抹殺計画!(第1回/全3回)

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【十二の星の華】剣の花嫁・抹殺計画!(第1回/全3回)

リアクション

「わあぁぁぁぁぁぁ〜〜」
「マーク! 待ちなさいよ!」
 剣の花嫁であるマーク・モルガン(まーく・もるがん)はパートナーであるジェニファ・モルガン(じぇにふぁ・もるがん)の声を聞かないように、かき消すような大声で叫びながらに駆けていった。
 廊下を曲がり直線へ。ようやく止まった所はマークの部屋の前。ジェニファが辿り着いた時、マークが部屋の鍵を閉めた音が聞こえた。
「マーク! 開けて!! マーク!!!」
 扉を叩くジェニファに、ウィザードの鳥羽 寛太(とば・かんた)が声をかけた。寛太のパートナーで機晶姫のカーラ・シルバ(かーら・しるば)は冷静な瞳をジェニファに向けた。
「どうしたのですか?」
「パートナーのマークが部屋まで走ってきて、そのまま閉じ篭っちゃったの…… マーク! 開けてマーク!!」
「来ないで! 来ないでよぉ!!」
「マーク? 一体どうしたのよ!」
「言えないよぉ、 いいから来ないでよぉ!」
「来ないでって、扉が閉まってたら、わたくしだって、これ以上は行けないでしょう!!」
「そうとうに取り乱していますね。あなたも落ち着いて下さい」
 寛太に言われ、ジェニファも呼吸の後に大きく息を吐いて吸いた。
「彼が、ああなったのは、何時からですか?」
「わからないの。トイレから出てきた時には叫んでいたし、そのまま止まらずに走ってきて、そのまま……」
「部屋に閉じ篭ってしまった、という事ですか」
 ジェニファは小さく頷いてから、再び扉を叩こうとしたが、寛太に腕を掴まれて手を止めた。
「ノックは拒否されています。方法を変えましょう」
 寛太は扉の正面に立つと、そっと扉に触れて言った。
「ウィザードの鳥羽 寛太(とば・かんた)と言います。通りすがりの者ですが…… 僕と少し、話してくれませんか?」
「………… ダメなんだ! 話せないよぉ」
「話せない、という状況は2つの場合に分類できます。1つは誰かの為に、そしてもう1つは自分自身の為に、です。あなたはどちらですか?」
「………… いいからぁ、放っておいてよぉ」
「篭っていても、何も解決しないと思いますよ」
「退いて下さい」
 寛太の後ろで黙っていたカーラ・シルバ(かーら・しるば)が無表情のまま寛太に並び立った。
「扉を破ります」
「なっ」
「カーラ、あなたはまたそんな強引な事を」
「時間のムダです」
「そんな事はありません、こう着状態は先に我慢できなくなった者が負けるのです。ここはじっと、」
「先手必勝です」
 そう呟くとカーラは、固定具付き脚部装甲で軸足の固定化の確認を。手甲を装備した左腕に加速ブースターを用いた拳で、扉をブチ破った。
「悪くない…… ですね」
「…… 装備の性能を試した、というわけですか?」
 カーラが振り向けば、低い声で顔を歪ませている寛太が迫っていた。
「どうしてあなたは何時もそう考えずに行動するのですか、思ったままに思いついたままに動いていては予測が立てられない、予測が立てられないという事は次に取るべき行動も見えないという事です、次に取るべき行動が見えないなら」
「ワカッタ…… ツギハキヲツケル」
「えぇ、分かっていただければ……………… って、どうしてカタコトなんですか!」
「マークっ!!」
 2人の間を押し分けてジェニファは室内へと飛び入った。
 扉の破砕と共にマークも吹き飛ばされたのだろう、マークは室内に倒れこんでいたのだが。
「きゃっ」
 マークの服は破り肌蹴ており、股間部も露になっていた。
「あっ、いや、見ないでぇ」
 気付いたマークは股間部を隠したが、ジェニファを含め、寛太もカーラもしっかりと見てしまった後だった。
「違うんだ、興奮しているわけでも血が集まっているわけでもなくて、水晶化しただけなんだぁぁぁぁ〜〜〜!!」
 怒り、同情、興味。それぞれに反応は違えども、それらの顔に訴えるように、マークの必死の弁解は涙ながらに響いていた。


「ふぅ、これも違うか」
 ため息をつきながら食堂から出てきたのはナイトのディアス・アルジェント(でぃあす・あるじぇんと)、その後ろから剣の花嫁のルナリィス・ロベリア(るなりぃす・ろべりあ)、英霊のレイフ・エリクソン(れいふ・えりくそん)である。無愛想なルナリィスとは対照的に、レイフは不満が表情に満ちていた。
「お〜いディアス、やっぱり喰っていこうぜぇ」
「食べないっての。ったく、調査に来たんだぞ、調査に」
「空振りに終わったんだろぅ、喰って忘れると良いと思うぞ」
「うるせぇよ、ほら行くぞ」
「なるほど、食堂ですか……」
 メニューのディスプレイを見ながら発したのは蒼空学園の橘 恭司(たちばな・きょうじ)である。恭司はディアスと目を合わせると、笑み寄っていった。
「被害をほぼ学校全域にまで拡大するには、食堂は適していますね」
「あぁ、一服盛られた可能性を考えたんだがな、ハズレだったぜ」
「スタッフ…… 食材…… 厨房は全て厳重に管理されていました」
「あなた方も、何者かの仕業であると?」
「あぁ、どうにもキナ臭い。早く犯人を見つけねぇと、ルナリィスも発症しちまうかもしれねぇ……」
 ディアスの視線が、そして体も硬直していた。恭司、ルナリィス、レイフがその視線の先を見れば、ルナリィスの右首筋が透明に輝いているのが見えた。
「ルナリィス? 動くなよ」
 ディアスは震える手でルナリィスの首筋に触れた。
「そんな…… いつ? ルナリィス、何か感じなかったのか?」
「いえ、何も」
「本人に何の自覚も与えないとは、やはり呪いの一種でしょうか」
「そんな事はどうだっていい!! 救護所だ! ルナリィス今すぐ救護所に行くぞ!!」
「待って下さい、迂闊に動き回る事が良いとは」
「退けよ! テメェにはもう関係ねぇだろうが!!」
「ディアス、落ち着け!」
 ルナリィスの手をひくディアスの腕を握り掴んで、レイフは恭司に向いて問いた。
「呪いとは、どういう事だ?」
「…… 以前、水晶化した街を探索した事があります。その街は建物も人も水晶化していました、そうまるで、」
 恭司はルナリィスの右首筋を指差した。
「彼女のように」
「水晶化した街……」
「最も、その時は今のように水晶化するのが体の一部であったり、発症が剣の花嫁だけ、といった現象は起きていないので一概に同様の現象と判断することは出来ませんが」
 恭司は一度、目を閉じてから開き、続けた。
「この現象に、鏖殺寺院が関与している可能性があります」
鏖殺寺院……」
 かつて古王国を滅ぼしたと伝えられる邪教、そしてテロを繰り返している組織の名であるが。
「やっぱりそんな事は関係ねぇ! ルナリィスは救護所に連れて行って治療してもらうんだ! 退けっ!!」
 ディアスは強引に駆け出した。無論にルナリィスの手をしっかりと握ったまま。その背を見ていたレイフは小さくため息を吐いた。
「君は鏖殺寺院を捜し出すのか?」
「えぇ、今はまだ可能性という段階ですが、視野に入れて動こうとは思っています」
「ならば私も行こう。原因の解明はディアスの目的でもある、ディアスが動けぬ以上、私が代わりに」
「わかりました、行きましょう」
 恭司とレイフは並び、歩みを始めた。