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リアクション
図書館にて調べものをしていたソルジャーの水神 樹(みなかみ・いつき)は本を抱えたまま、プリーストの峰谷 恵(みねたに・けい)の手元を覗き込んで訊いた。
「恵さんは何について調べているの?」
「樹さん。ボクは「光条兵器」について調べていたの」
「光条兵器? どうして?」
「水晶化している「剣の花嫁」の最大の特徴は「光条兵器」だと思ったの。だから」
「なるほど。水晶化の原因や対象が「光条兵器」にあると考えたのね」
「うん、でも、結局何も分からなくて。樹さんは何か分かりました?」
「うぅん、私もダメ。民俗学や伝承の本を調べてみたけど、水晶化に近い現象ですら載っていなかったわ」
「そう」
同じく「剣の花嫁」について調べていたウィザードの本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)は、恵の前に資料となる本を積み載せながらに訊いていた。
「そういえば、恵のパートナーって確か」
「うん、「剣の花嫁」だよ」
「えっ? どうしてるの? 一人で大丈夫なの?」
「エーファはまだ発症してないし、部屋から出ないよう言ってあるから、空気と水での感染以外は大丈夫だと思う」
「空気と水以外か…… なるほど、その状態で発症したなら、逆に絞れるわけだ」
涼介の言葉を聞いて瞳を輝かせたのは、涼介のパートナーでヴァルキリーのクレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)であった。
「ねぇねぇ樹殿! こういうのって、何て言うんだっけ?」
「策士、ね」
「あはぁ〜、策士、さくしぃ〜」
「もうっ、クレアちゃん! 樹さんまで〜」
顔を赤らめた恵を中心に、笑い声と笑顔が輪になって形作られていた。
その輪の元へ、如月 玲奈(きさらぎ・れいな)が血相を変えて飛び込んできた。
「たっ、大変! 大変なのっ!!」
4人は倒れ込む玲奈を支えて椅子に座らせようとした、しかしそれでも玲奈は腰掛ける事なく、葉月 ショウ(はづき・しょう)とレーヴェ・アストレイ(れーう゛ぇ・あすとれい)が脅されたままノーム教諭の部屋に案内させられている事、そして「女王器」が狙われている事を必死に伝えた。
「「女王器」?」
「確か…… 建設中のシャンバラ宮殿で騒動が起きた時にも、その名は聞いたな」
「それを今はノーム教諭が保管してて、それを狙ってる奴がショウとレーヴェを脅迫して教諭の元へ向かわせているの、だからこのままだと「女王器」が危ないの!」
「その人が、今回の事件の犯人なの?」
「分からない…… でもソイツから電話で話してる時にアクアは水晶化したし、蒼空学園の2人も突然倒れたみたいなの」
「ごめん涼介、私、ちょっと分からなくなってきたよ」
「どちらにしても、教諭と「女王器」が狙われている以上、それを阻止しないと」
「あぁ、そうだな。頭数は多いほうが良い、クレア、図書館に居る他の生徒を皆集めて来い、今すぐだ!」
「了解だよっ」
戦闘になりそうだな。考慮すべき点や検討すべき事はたくさんにある、それでも教諭の元へ向かうことが最優先であることが全員の一致事項となっていた。
回診に向かっているであろうノーム教諭に確実に会う為、一同は教諭の研究室に向かう事とした。
「到ぉっ着ぅぅぅ〜」
ノーム教諭の研究室に到着したGA「パラミタ探偵団」の一行は、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)を先頭に室内へと入って行った。
部屋は、入ってすぐ左には壁があり、奥に1つだけ扉がついている。部屋は入って右は広く、野球グラウンドのダイヤモンドよりも少し大きいほどの空間が続いているとアリシアは言ったが、カーテンやら機械やらで部屋の3割程しか見渡せなかった。
ルカルカと姫宮 和希(ひめみや・かずき)は直ぐに椅子に座り、大きなテーブルに上半身を投げ出した。
「はぁ〜、快適快適〜」
「これだけ机が大きいと腕も伸ばしがいがあるぜ」
そんな2人を横目に、ザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)とダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)はアリシアを、自分の机だ、と言った場所まで付き添った。
「ザカコは本当にきっちりしているよな」
「そうそう、もっと力を抜いたほうが良いよ〜、楽だよ〜」
「自分たちの目的は、彼女を安全に連れてくる事だったはずです、ですから自分はこうして最後まで」
「ザカコ堅ーい」
「ザカコ堅〜い」
「ザカコ堅ぁぁい」
和希、ルカルカの声に、ザカコのパートナーでゆる族の強盗 ヘル(ごうとう・へる)の声が加わっているのに気付いて、ザカコは流石に3人へと詰め寄っていった。
「では、始めましょうか」
「………… はい…………」
ルカルカのパートナーであるダリルが、アリシアのスカートの裾を上げ始めたときだった。
「あぁ〜〜!!」
「ん? んあっ!! ダリル! おまえ何やってんだっ!!」
ルカルカと和希が飛びついて来て、ダリルを押さえて、アリシアを立ち上がらせた。
「何をする」
「それはこっちのセリフだ!! 何をしてやがるんだ、おまえはっ!!」
「何って、俺は彼女に「ヒール」を」
「その為なら、ふくらはぎを触っても良いって事? そうなの? ダリル」
「それは違うぞ、ルカ。俺は触っていないし、裾を「めくった」だけだ」
「めくった?! ずいぶんと厭らしい言い方をするんだなぁ、ダリル」
「何を言っているんだ、治療するのだから発症部位を観察するのは当然だろう」
「ダリルさん、もう止めましょう」
「ザカコ……」
ザカコはダリルの背に手を当てて、その場から離れさせた。
「では自分とダリルで調査をしてきます。あなたはここに残ってルカルカさんの手伝いをなさい」
「了解。任せとけっ」
「いや、ザカコ、あの3人は回復魔法を使えない……」
「良いのですよ、ここは女性陣に任せて、行きましょう」
ドアノブを握った瞬間、ザカコは悪寒を背筋に感じた。
ノーム教諭の研究室の扉が見えてしまった。扉の少し先にも扉があるのだが、それは教諭の研究室から扉一枚で繋がっている大講義室であり、校舎の南側の端でもあった。
葉月 ショウ(はづき・しょう)とレーヴェ・アストレイ(れーう゛ぇ・あすとれい)は遂に辿り着いてしまった、それは案内が完了した事を意味していた。
「おぃ! 着いたぞっ!! ………… つっ」
ショウが携帯電話に声を荒げた瞬間、体の自由が効かなくなった。
「おやすみなさい」
胸板一枚越しの背中から声が聞こえた。
膝から崩れゆくショウ。その視界に、既に横たえているレーヴェの姿、そして黒と白のフリフリスカートが見えた、だけだった。
「…… 始まり ……」
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