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リアクション
・新拠点、設置
ゴーレムや砂サソリとの戦闘を終えたロザリンド・セリナは遺跡の入口付近の簡易テントの中でパソコンを開いていた。入口にいたサンドゴーレムは復活しかけたところで守護者が倒されたため、沈黙したのである。
「電源が確保出来たのは幸いです」
テントの中から外のベースキャンプまでコードが伸びている。延長コードだ。
「まあ、このくらいの事しか控えの人間には出来ないからね」
気を利かせたのは引率で来ている蒼空学園大学部専任教員の司城 征(しじょう せい)である。この人は無線をも彼女に渡していた。
そこへちょうど戻ってきている者がいた。エメと蒼、卓也とルーメイ、すいかである。
「隠し小部屋でこのようなものを見つけました」
エメが蒼に取りださせたのは、スクラップブックのようなものだった。
「それ、少し読ませて頂いて構いませんか?」
卓也がそれを手に取りパラパラとページをめくる。
「隠し小部屋っていうと、確か設計図みたいなのもありましたよね?」
卓也やすいかは地図の再確認もするために各階の外周通路を見て回っていたのだ。その際、例の隠し小部屋にも立ち寄っていた。
「あれは飛空艦のようでした。いえ、もはやあれは要塞です」
設計図を見た時に思った事をエメは述べる。
「もう一つ気になったのは一階にあった地図のようなものです。メモしては来ましたが」
すいかが出したのは壁面にあった古代シャンバラのものと思しき地図と点があった箇所を簡略化したものだった。
「現在のシャンバラの地図を表示しました。どうぞ」
セリナがパソコンの画面をすいかに見せる。それと同時に、手際良く手書きのメモもスキャンし、そちらも表示出来るようにする。
「どうもです」
そっけないものの、頭は下がるすいか。そこへイーヴィからの連絡が入る。
「む、地下への入口が開きましたか。こちらは今諸々の情報をまとめるので、それを得次第合流しましょう。他に何かありましたか?」
戦闘中はほとんど情報に進展がなかったものの、改めて聞いてみる。
『三階の図書館では兵器実験や研究に関するレポートが見つかったみたい。魔術連動システムとか合成魔獣とか、何だか物騒なのが書かれてるって。あと、守護者は倒されたみたいね』
パートナーからの報告を聞きとる。
「分かりましたー」
一度通話を切り、データ照合に戻る。
「むむ、五ヶ所の点はいずれも大荒野にあるみたいです。でも、今まで発見された遺跡のデータとは一致しませんね。まだ未発見の遺跡……ですかね?」
首を傾げつつ思考を巡らせる。
「ここが兵器実験や研究をしていた――研究所だとしたら、その成果物の隠し場所かもしれませんね」
エメが口を開いた。
「その可能性はありますね。ここにある絵、いや写真ですか。見た事もないものばかりです。読めないので具体的に何かは分かりませんが、おそらく兵器です。ルーメイ、何か分かった?」
いつの間にか卓也からルーメイにそれは渡っていたようだった。
「正直お手上げだ。飛空艦、いや要塞か。これは分かるがこっちの人型にしか見えないものは何だ? 機晶姫か? いや、それとは少しばかり異なるだろうが……」
一部のものは推測も含め、なんとかという感じだが、全部は分からない。
「そちらの書物、一度よろしいですか? 出来る限りでデータ化します」
セリナはスクラップブックを渡されると、それをスキャンしていく。ページ数も少ないため、それほど時間はかからなかった。
「HCある方はこれらのデータを送りますので、繋いで下さい。他の方にはプリントアウトしますので大丈夫です」
すいかは銃型HCをセリナのパソコンに繋ぎ、データを受信する。最上層と地下を除く遺跡内の詳細なマップデータや、各種資料や報告をもとにした遺跡のデータが含まれている。なかには推測の段階のものもあるが、ほとんどは役に立つ情報だ。
「さて、残るは上か下か。私は合流の事もあるので下へ向かいますが、皆さんはどうしますか?」
イーヴィからの報告で地下への入口が再び開いた事を知ったため、改めてそこへ行く事にしたすいか。
「私と蒼は上へ向かいます。何やらそれまでなかった階段が出現したようなので」
エメと蒼は最上層へ。
「僕とルーメイも予定通り上へ行くことにします」
卓也達も上のようだ。五人はここで二手に分かれる事になった。
「それではどうかご無事で」
エメ達上層組はそう言い残し、足早に進んでいった。
すいかもまた、地図を参照にしながら一番早いルートでイーヴィのもとへ向かう。
「皆さん、頑張って下さいね」
見送りながら、セリナは呟いた。それから再びデータの整理を始める。その傍らでは教師、司城が例のスクラップブックを眺めていた。
「それにしても、一見無茶苦茶に見えるのにちゃんと理論的に可能なのが恐ろしいよ。これらを造った科学者ってのは相当なキワモノだよね。いや、マッドサイエンティストって言った方がいいか」
この男とも女とも取れる風貌の教員には、そこにあるものが何か理解出来ているようだった。研究者としての賜物だろうか。
「それじゃここはやはり……」
セリナはデータを参照しながら結論を導き出した。
隠し通路
時間は少し戻り、図書館内で激戦が繰り広げられている頃。
「あぁ、ドキドキしてきた……! 隠し通路なんて浪漫よねっ。この先には絶対何かあると思うの」
「彩殿、そうこうしてる内に先に行った人達とかなり離れてしまったようだぞ」
通路の内部まで詳しく調べながらゆっくりと歩いていたのは、守山 彩(もりやま・あや)とパートナーのオハン・クルフーア(おはん・くるふーあ)だ。隠し通路自体は図書館三階の内部に繋がっているのだが、その事を彼女達はまだ知らない。
「あれ、近くに誰もいないの?」
明かりもないため、手探りで進むしかない上に、呼びかけても声は返ってこない。
「そのようだ。それに悲鳴とかも聞こえてきてない以上、何事もなく外へ出られたのだろうよ」
「まだ分からないわ。先に行った人達でも見つけられなかった何かがまだここにはあるはずよ!」
彩は諦めてはいなかった。
「さっきの声、あれはこの遺跡を守ってる人のものだわ。だからこそ……」
「確かに何もない遺跡ならそんな守護者の類もいないだろうが、こんな通路に何かを隠す意味はないだろう」
オハンはあくまで何もないと主張したいようだ。
「このまま行っても何もないってなら」
振り返り、来た道を戻っていく彩。
「戻るのか?」
「入って来た辺りに何かあるはずだわ。ほら、意外と入口だけだと思って油断するじゃない?」
何かを発見できずに懲りたわけではなく、むしろ機転を利かせてすらいた。
「何もないと思うんだが……」
そうこうしているうちに通路の入口まで戻って来た。
「えーっと、一見こっちにしか行けないようだけど、実は反対の壁を押すとその先にまた別の通路が……」
彩は半分冗談のつもりで試したのだったが、言葉通りの展開となってしまった。
「え、嘘!?」
押すとそのまま扉のように開き、目の前には上り階段が現れた。
「まさかあるとはな」
彩以上に驚いていたのはオハンだ。
「内側には取ってがついてるみたい」
暗くて分かりにくいが、手触りで分かった。扉は中に入ると自然と閉まっていった。ただ、鍵が掛かったわけではなさそうだ。
「これ、どこに続いているんだろう」
二人は階段を上っていく。それは入口のあった第二層よりもさらに上まで通じているようだった。
彼女達が隠し階段の中に入って間もなく、通路を通り抜けていく者達が現れた。
「むー、ここはただの非常通路みたいです。それにしても、戻るための階段が図書館内にしかないとは……」
「それでも特に怪我もなく来れたんだからいいじゃないですか。もう一度外周から調べ直しましょう」
それは一階から再調査をしていた藤原 すいかと、今井 卓也、フェリックス・ルーメイの三名だった。
彼女達は隠し階段の存在には気付かずに行ってしまった。
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