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ラビリンス・オブ・スティール~鋼魔宮

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ラビリンス・オブ・スティール~鋼魔宮

リアクション

 SCENE 08

 蛇のような目をした男と狼じみた外見の男、二人とも白衣だ。彼らは研究員……そう、アリア・セレスティを捕まえた(そして放置した)男たちだ。帰路をたどっていたメイベル一行の目の前を、そんなコンビが横切っていった。
「あっ!」
 その場にいた全員が声を上げた。
「塵殺寺院のメンバー……!?」
 反射的にメイベルとセシリアはシルミット姉妹を庇い、
「三次元女!?」
 反射的に研究員二人は我が身を抱くような仕草をした。
「お助け!」
 襲いかかってくるかと思いきや、研究員は手元からなにやらスイッチを取り出し押したのである。途端に頭上から分厚い壁が降り、重々しい響き立てて二人とメイベルたちとの間を隔ててしまった。
「行き止まりになっちゃった!」
 セシリアが声を上げる。拳を何度か入れるが、頑丈な鋼鉄の扉はびくともしない。
「一度戻るべきかもしれません……きゃ!」
 振り返ったシャーロットが声を上げる。
 後方、天井が開いてそこから、新たなヒューマノイドマシンがぼとぼとと大量に落ちてきたではないか。これまでのものに比べると色が濃い。
「戦うのは本意ではありませんが……こうなった以上、突破するほかなさそうですわね」
 フィリッパの声を合図に戦闘に突入する。
 たかがヒューマノイドマシン……と思われた戦闘は意外な展開を見せた。
 端的に言えば、濃い灰色のマシンは、これまで姿を見せた大小様々なマシンよりずっと強力だったのである。装甲が分厚くてなかなか攻撃が通らない。放ってくる攻撃も威力が高く、しかも威力が精確だ。狭い通路、しかも壁を背にしている状況ゆえ、小回りの利かない相手を翻弄する、という作戦がとれない。
「こんなところで……屈するわけには……」
 握った槍が急激に重みを増す。弾丸が二の腕を掠めたものの、もう痛みを感じない。メイベルの視界は……汗と血で曇りはじめた。
 だがこのとき、
「やっと追いつきましたぁ! 今助けますぅ!」
 窮地に陥った一行を救ったのは、聞き覚えのある声だった。
神代 明日香(かみしろ・あすか)です、加勢いたしますぅ!」
 そう、明日香にノルニル 『運命の書』(のるにる・うんめいのしょ)、そして神代 夕菜(かみしろ・ゆうな)が駆けつけたのだ。かくてメイベルらと共に、敵の後方から挟撃のかたちを取ることになる。
「危ういところでしたわ。偵察中に皆さんをお見かけして……まあ、お話は後にしましょうか」
 突然の援軍に対応が遅れたマシンに飛びつき、ブラインドナイブスで夕菜はその腕関節を叩き落とす。
「まずはファイアーストームです」
 ノルニルが火炎を浴びせるや、そこに明日香が続いた。
「熱した後は急速冷凍! これなら装甲が厚くたって……」
 投ずるは小型投擲槍形状、これがアルティマ・トゥーレを発動し、氷結の力でマシンを包み込んだ。するとまるでガラス細工のように、簡単に機械は砕け散ったのである。
「効果絶大、ですぅ!」
 その効果に驚く間もなくさらに一体、マシンが首のつなぎ目を断ち切られ独楽のように回転して倒れた。
「なるほど、限界まで炙って急激に冷やす、か。シンプルだけど力強い攻撃だな」
 手には鎖鎌、その鎌の部分で直接斬ったというわけだ。さらに分銅突きの鎖を回し、敵を威嚇するのは佐野 亮司(さの・りょうじ)だ。
「教導団主導の作戦だから、またどうせあくどい企みでもあるのかと思いきや、今回は本当に行方不明者の救援と、塵殺寺院へのお仕置きだけが目的のようだな。そういうことなら喜んで力を貸すぜ」
 この発言には理由がある。かつて亮司は教導団に属していたが、彼らのなりふり構わぬ覇権主義に嫌気がさして抜けた過去があるのだ。
(「しばらく見ないうちに教導団も方針を緩めたか……さもなくば、団長が気まぐれでも起こしたかな……ま、それは今考えることじゃないな」)
 亮司は思考を心にしまって、新たなヒューマノイドマシンと接近戦を繰り広げるのだった。
 いくら強化型であろうと急な状況に対応できないという弱点は同じだ。一行はまたたくまに数体のヒューマノイドマシンを破壊して凱歌を上げたのである。
「イースティアさん、ウェスタルさん、お久しぶりですぅ」
 姉妹とは、明日香も面識がある。手を取り合って再会を喜んだ。
「チョコレート食べます?」
 ノルニルが携帯食を取り出し、その一方で、
「さて、あとはここから無事抜け出すだけだな」
 亮司が取り出したのはここまでの略地図であった。
「こんな危険な場所からはとっとと撤退しないとな。頼りにしてくれていいぞ。これでも元教導団の輸送科だからな、安全に人や物を運ぶのには慣れてるつもりだ」