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リアクション
SCENE 09
「ヒューマノイドマシンか……良いだろう、貴様等まとめてかかってこい!」
鋼鉄の殺人機械を前にしても、櫻井 馨(さくらい・かおる)は恐れはしない。今その姿は、馨であって馨でなかった。漆黒のパワードスーツ、フルフェイスのマスクに、熱い心を隠した『無名のダークヒーロー』なのである!
彼はこの日、この姿にて、各地で神出鬼没の戦いをくりひろげていた。先行して敵を捜索、見つけるや剣をふるい盾を操って、疾風怒濤の暴れっぷりを披露する。馨は常に単身行動ゆえ、味方部隊の気配を感じるやたちまちのうちに姿を消す。おかげで多くの味方部隊が、残骸となっているヒューマノイドマシンだけを発見するという事態が相次いだ。
馨めがけ銃弾が雨と降るが、標的の姿はとうにその場にない。ぱっ、と飛んで勢い良く床を蹴り、盾を背に回して疾駆する。まるで超特急、バーストダッシュの勢いに乗り横薙ぐ一刀、立ちふさがるマシンの胴を両断し、壁を蹴って急ターン、さらに一体の脳天を割った。
「試作型ならこんなもんか……」
遭遇したての二台を見下ろして馨は一息ついた。
そのとき、
「!」
馨が気づいた瞬間にはもう、背後から伸びた縄がその首に巻き付いていた。
いや、縄ではない。鋼糸だ。丹念に編まれておりグラスファイバーのような肌触りがある。
振り返ろうとするも、次の瞬間!
全身あまなく、高圧電流が馨の体を駆け巡ったのである! 体中の神経を剥き出しにされたかのよう、痛みと言うにはあまりに強烈な『衝撃』が体内で、四肢で、髪の毛の先端まで暴れまくる。絶叫を上げることすらできない。
首の縄が外れたと思ったが終わりではない。今度は別の縄が馨の足首を締め上げ、その身を床と天井に、何度も激しく叩きつけたのである。しかも例の高圧電流を流しっぱなしにしたままで。
常人であればとうに消し炭になっていたであろう。されどパワードスーツと、馨の類い希なる精神力がその身を救った。意識を失う前に必死で彼は電磁鞭を振りほどき、残った力を振り絞って逃れたのである。
「……そうか、あれが……」
見つけた壁の割れ目から外へ逃れたところで、馨は昏倒する。
(「……クランジ……か」)
少女――『The CRUNGE』と呼ばれる機晶姫は電磁鞭を体内に戻す。掌、腕の三カ所から飛び出していた長い鞭は、それ自体意思を持つかのようにするすると縮んでいった。
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