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リアクション
第三章
・敵機確認――右舷
天御柱学院を飛び立った機体は、タンカーを目指して空を駆けている。その中に、三角形の陣を組む機体があった。
E―10、E−11、C―05の三機だ。イーグリット二機が前衛で索敵を行い、コームラントが後衛である。
タンカーに合流後は、右舷側の前方を担当しながら移動だ。その時も、陣形は乱さない。
それよりも離れた海上を飛ぶ機体もある。索敵に特化した、E―02とE―03だ。
「ルーチェ、レーダーの反応はどうッスか?」
「今のところはありませんね」
狭霧 和眞(さぎり・かずま)とルーチェ・オブライエン(るーちぇ・おぶらいえん)のE―02付近には、特に反応はない。
『こちらE―02、付近に異常はありません。E―03、そちらはどうですか』
『E―02へ。こちらも異常ありませんわ。念のため索敵範囲をさらに広げますわ』
オリガ・カラーシュニコフ(おりが・からーしゅにこふ)とエカチェリーナ・アレクセーエヴナ(えかちぇりーな・あれくせーえうな)の搭乗するE―03も、まだ敵を発見してはいなかった。
「奇襲を行うとしたら、海面すれすれから一気に仕掛けてきそうですわね」
「もう少し、高度を上げるわ」
E―03の機体が飛翔していく。一段階高い位置から、レーダーの範囲を最大にして索敵を行う。もちろん、目視による観察も怠らない。
一方のE―02は、低空飛行をしている。こちらは敵の高度に近い方が、より発見しやすいとしての行動だ。これによって、高低両方の視点による索敵が、自然と行われる流れとなっていた。
「しかし、辻永先輩達が戦った黒いステルス機は気になりますね。奇襲を仕掛けるなら、きっとステルス機でくるでしょうし」
「でも、レーダーに映らなかったのは地球のものだったからとも言われてるッスよ? でも、ちゃんと目でも確かめないといけないッスね」
とはいえ、それを行うのは操縦している和眞ではなく、ルーチェだ。
そこへ、再び通信が入る。
『こちらE―03』
オリガからの連絡が入る。どうやら全体への通信らしい。
『4時の方角、距離1200、高度140、不明機接近します!』
タンカーへの連絡も行っているため、クロックポジションでの報告だ。しかも、その機体は一体だけではないようだ。
無線を使って、オリガが通信を行う。
『所属不明機に告ぐ。直ちに所属を明らかにせよ』
レーダーに映る機影は3。ごくりとつばを飲み、応答を待つ。
『こちらE―02。1時の方角からも不明機接近。距離1000、高度120です!』
少なくとも二方向から攻めてきているようだ。
報告を受け、右舷側の機体が守備を固め、すぐに防衛出来る体勢になる。
「おいおい、名乗れだってよ。誰が名乗るかっての。おい、せっかくだから伝えてやれ。『今からぶっ殺すヤツに教える必要はねえ』ってな」
敵機のパイロットが、オリガに通信を送る。
そして、加速する。
(敵は二方向から……いえ、これも第一波の可能性がありますわね。左舷側からも来るかもしれませんわ)
オリガ達は武装を破棄してきたため、敵の攻撃範囲に入ることが許されない。右舷側の状況連絡の後、速やかに右舷側から離脱した。
「後はお願いするわね」
すれ違いざまに、見方に対してエカチェリーナはそのように呟き、ウインクした。E―03は高度を維持し、左舷側へと飛ぶ。
「少しは時間を稼ぐ必要がありそうッスね」
一方のE―02の機体は、1時の方角の敵機に向かう。牽制を行うためだ。
ビームライフルを構え、眼前に迫る三機に対して放つ。
撃ちながら、再びE―02は敵機から離れていく。ビームを当てることが目的ではない。それに、敵の機銃の方が射程がある。
距離を取りつつ、味方が迎撃出来るようにするのが、今の彼の仕事だ。
(あとは頼むッスよ、みんな!)
* * *
「やっぱりシミュレーターとはちっとばかし差があんなぁ」
「でも、このくらいの誤差なら問題ありませんよ」
桐生 景勝(きりゅう・かげかつ)とリンドセイ・ニーバー(りんどせい・にーばー)は出撃後、コームラントのビームキャノンの試し撃ちをし、シミュレーターとの違いを体感していた。
タンカーの引継ぎ後は、射撃班の一員として、待機している。
「ニーバー、慣れてきたかぁ?」
「このくらい、なんてことありませんよ。景勝さんの方こそ、大丈夫なんですか?」
「さすがにもう慣れたもんだぜぇ。いつ敵が来ても、撃ち落としてやんよ」
その時、彼らが気配を感じた。女王の加護によるものだ。
「何か……くるぜぇ……!」
その直後、E―03、E―02からの敵機接近の通信が入る。すぐに、トリガーを握り締める景勝。
「いよいよか。ちいっと緊張してきたぜぇ……」
「景勝さん、シミュレーターであんなに頑張ってきたじゃないですか。きっと努力は報われますよ」
敵が迫る方向へ、機体を動かすニーバー。もちろん、レーダーを見た上で、だ。
二人の乗る機体の前を、陽動を行うE―06、E―07、E―08の三機が飛び行く。
「まずは、タンカーに近づけないようにしないとな」
E―07に乗る榊 孝明(さかき・たかあき)が、陽動班と射撃班に通信を行う。
「敵は二方向から来てる。俺達とE―06が4時の方角、E―08が1時の方角で索敵のE―02の援護だ。射撃班の四機の射程までそれぞれ誘導するから、攻撃準備を頼む」
敵の機体は次第に接近している。
「コームラントの射程まで、あと300だよ」
益田 椿(ますだ・つばき)が孝明に距離を伝える。
「もう少しか。だけど、俺達が落とされちゃ意味がない――やるか」
武装のビームライフルを構えるE―07。
「敵も連携して、しかも別方向から攻めてくるとはね。でも、それを崩すのが私達よ」
E―06の蒼澄 雪香(あおすみ・せつか)が意気込む。E―07と二機で、敵の三機の連携を断つつもりだ。
(お姉ちゃん……コームラントの射程まであと250だよ)
蒼澄 光(あおすみ・ひかり)が精神感応ですぐ雪香に伝える。
(分かったわ。じゃあ……)
ビームライフルを構える。
『E―07、聞こえるかしら? そろそろいくわよ』
『了解だ。一機ずつ、確実に追い詰めよう』
敵のシュメッターリング三機を分断し、こちらのコームラントの射程に、無意識のうちに追い込むのが一番の狙いだ。
二機がビームライフルのトリガーを引き始める。
「こっちから近づきすぎるのも危険だけど、突破されちゃ意味がないからね。エリスちゃん、敵機との距離は?」
「れーがーがとにひゃくっげげげるよ」
「……とりあえず、ものを食べながら喋るのはやめてよ。もう作戦は始まっちゃってるんだから」
E―08のリュート・エルフォンス(りゅーと・えるふぉんす)とエリス・フォーレル(えりす・ふぉーれる)
も、連携して動こうとしている。コックピットの中の二人はマイペースだが。
「まあ、コックピットにお菓子持ち込んでること自体ほんんとはあれなんだけど……整備班の人に怒られるのは僕なんだから勘弁してよ」
「乗ってる時にお腹すいたら困るでしょ。そんなに言うなら、帰ったらミスドで食べ放題ね。そしたら今は我慢してあげる」
「分かったから、頼むよ」
リュートもまた、E―08のビームライフルを取り出す。
「さて、どこまでこの機体で出来るか、試すとするかな」
E―02の機体の姿を捉え、いよいよリュート達も戦闘に突入する。
「砲撃準備完了、あとは指定位置に来るのに合わせるだけです」
C―02の端守 秋穂(はなもり・あいお)が、速やかにビームキャノンを構える。
陽動班の動きに合わせ、敵を狙い撃つためだ。
(敵機の誘導先は、ここから見て2時の方向になるよー)
ユメミ・ブラッドストーン(ゆめみ・ぶらっどすとーん)が陽動班の機体の位置をレーダーで確認し、誘導予測をする。それを、精神感応によって瞬時に伝える。
(了解です)
ユメミの予測に合わせ、射撃位置を固定する。
「さて、こっちに来るかしら?」
C―03の葛葉 杏(くずのは・あん)も、待機位置から照準を合わせようとする。
「レーダーを見る限りでは、来るはずです。ここは敵の死角になっているので、最良のポジションかと」
橘 早苗(たちばな・さなえ)が周囲の状況を杏に伝える。
「敵に気付かれないように長距離攻撃が出来るのはいいけど、他にも牽制用の兵器とかこの機体にないのかしらねぇ」
「ないものをねだっても仕方ないですよ、杏さん」
「ま、それもそうなんだけどねぇー」
ビームキャノンは、牽制に使うには燃費が悪い。一回当たりの威力が高い分、どうしても撃てる数が限られてくる。
「来たわっ!!」
射程範囲までおよそ100メートル。ここまでくれば、レーダーだけでなく目視でも十分確認出来る。
「右に20度、上に15度の位置に照準を合わせて下さい」
敵機の位置予測をし、攻撃の準備を行う。
陽動班の牽制によって、早苗の予測した位置に、ぴったりと敵の機体が入り込もうとしていた。
「――発射!」
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