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一夏のアバンチュールをしませんか?

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一夏のアバンチュールをしませんか?
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第13章 寝 室

 キィ……と音をたて、寝室がある棟のとある一室のドアが開いた。
(つ、疲れた……というか、腹が…)
 よろけるように中に入っていったのは、フェイス。
 バーラウンジで気分を盛り返し、ヴァージニアと飲み比べをしたまではよかったが――といっても、ヴァージニアはワインでフェイスはノンアルコールビールだったが――結果はフェイスの完敗だった。
「弱いのぅ、おぬし。もう終わりか?」
 物足りなさそうに言って首を振ると、ヴァージニアはウィスキーを瓶ごと注文して飲んでいた狐の着ぐるみに挑戦を叩きつけ、さらに別の女性まで入れて3つ巴の飲み比べをしていた。
(あの女、ザルか……というより、どこへ消えてるんだ? 僕と飲んでる間も、一度もトイレ行かなかったんじゃないか?)
 シャーティルは女3人の飲み比べに興味が出たようで「結果が出るまで見ている」と、ラウンジに残ったが、フェイスはもう酒のにおいは十分だった。
「明日……って、もう今日か。昼には帰宅するんだし。さっさと寝た方がいいな」
 かつらを脱いで椅子に放る。ネックレスをはずし、ベッドのサイドテーブルに置いたとき、ようやく、彼は自分のベッドに先客がいることに気がついた。
「ここ、僕の部屋、だよね?」
 ルームナンバー間違ったかな?
 テーブル上に置きっぱなしだった名刺カードを見る。そこには「フェイス」の名前がちゃんとある。
「僕の部屋だ。と、いうことは…」
 サイドテーブルのあかりのスイッチを入れてみる。
 思った通り、そこに寝ていたのはカトゥルスだった。
 あかりに照らされているというのに、全く起きる気配がない。
(なんでこいつ、僕の部屋が分かったんだ? それに部屋に入れているって……そういえばさっき鍵かかってたっけ?)
「僕よりあとに出たのはシャーティルだ。あいつ、鍵かけるの忘れて出たなッ」
 脱力。
 なんだかますます疲れた。
「……くそ。僕は疲れてるんだ、おまえの相手をしてる余裕はないんだ」
 起こして、事情を話して、追い出す。もしくは部屋までこいつを連れて帰る。
 考えるだけで面倒くさい。
 寝ているカトゥルスの上着やズボンのポケットをはたいて、あるいは探って、名刺カードを探した。それがあればカトゥルスの部屋へ行って、そこのベッドで寝られるからだ。
「あーっ、もう! どこにあるんだ? ないじゃないか! こいつ、ちゃんとクロークから戻してきてもらってるのか?」
 ……いや、こいつの場合、それもかなりあやしい。
「くそ。もう知るかッ」
 僕は眠いんだ!
 できるだけカトゥルスを端っこにおいやって、ベッドにもぐりこむ。
「う……ん…。黒……オレが、まも……から……ね…」
「あーはいはい。いいからそこで静かに寝てろ」
 頭が羽枕につかないうちに、フェイスは眠りに落ちていた。