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空京暴走疾風録

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空京暴走疾風録

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第16章 “彼ら“について 環七北/24時10分頃

 検問に立つフレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛い)ルイーザ・レイシュタイン(るいーざ・れいしゅたいん)は、言いようのない虚無感に囚われていた。
「ロクなのがいないね」
「同感ですね」
 バリケードの強行突破狙う暴走族はたまに見かけるが、活きの良さに目をつけて「空賊入り」を勧めてみても「興味ない」という反応ばっかり。張り合いが無くて、この数時間は溜息をついてばっかりだ。
「彼らは自分達の事しか興味がないようですね」
「空京の環七以外にも世界があるなんて、想像もできないんじゃないかしら? 『空』に興味がないなんて、信じられないわね?」
「彼らは子供……いや、幼いのですね。だから、使い方も分からない力だけを蓄えて、それで自分がボスのサル山を作ろうとする」
「辛辣ね」
「これでも言葉を選んでいるつもりです。
 彼らの行動指針を『赤ん坊同然』『動物と変わらない』どちらの言葉で表現するか、少し悩んでいる所ですよ」
 ふん、とルイーザは鼻を鳴らした。
「……ある意味不憫ね。そう在るべき方向に力を揮えば、世界の動きを左右さえできるかも知れないのに」
「その事は彼らも知ってるでしょう。『世界』の認識について、我々とは大きな隔たりがあるでしょうけど」
 失望や空しさを感じながら、ふたりは溜息を吐く。
 交差点の向こうに、また暴走族の姿が見えた。が、こちらの検問を察すると、突然進路を変え、手前の角を曲がって姿を消す。
 対話すらできない。
「……私達も、彼らと同じなのかも知れません」
「? 何が?」
「自分の『世界』にしか、興味がないって事ですよ。彼らの『世界』より、私達は知った『世界』の領域がたまたま広くて、多少一般性があった――それだけでしかないのかも。
 仮に私達が、彼らから『チームに入れ』」と言われてもやはり『興味ない』と答えるでしょうね
「そう言えばそうね……じゃあ、どうすればいいかしら?」
「さぁ……」
 ルイーザは苦笑し、頭を掻いた。
「空賊へのスカウトだけなら、こっちが他を当たればいいんでしょうが……あなたが訊ねているのはそういう事ではないのでしょうね?」
 フレデリカは頷いた。
「正直言うと、私はね」
「はい?」
「私はね、空賊とかよりも、暴走している子達を何とかしたい、って気持ちの方が強いのよ」
「そうでしょうね」
「でも、それはあの子達にとって、迷惑でしかないんでしょうね」
「お節介なオトナというのは、いつだって子供にはうっとうしいものですよ」
「知らなかったわね……私って、いつの間にオトナになったのかしら?」
「彼らを“あの子“なんて呼ぶのは、オトナって証でしょう。少なくとも、彼らにとっては」