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ミッドナイト・シャンバラ4

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ミッドナイト・シャンバラ4

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「ペンネーム、厨房の女神さん。
 
 シャレード殿、初投稿ゆえよろしく頼む。さて、今回相談したいのは妾のパートナーについてだ。普段は普通過ぎて地味な奴なのだが何か会った時は妙にやる気を出す奴でな。良い奴なのだが、困ってる女がいると考え無しに助けに行くという習性がある。悪い事では無いのだが、こう釈然としないものがある訳だ。同じ女ならこの微妙な気持ち分かって貰えるかと思う。何とかならんものだろうか?
 
 それは、女の子じゃなければ見て見ぬふりをするということなのでしょうか。
 そうだとすると、ちょっと困りものですねー。
 ここは試してみるしかないですね。たとえば、さっきの男の娘さんが助けを求めていたら、はたして助けに行くのかとか。でも、男の娘だと分かっていて、それが理由で助けに行っちゃったりするとちょっと別の問題が発生しそうですけれど。
 でなければ、厨房の女神さんが男装して助けを求めてみるとか。とにかく頑張ってくださいね。
 
 さて、次のお便りは、ペンネーム、ズドン巫女さんからです。
 
 シャレードさんはじめまして。たまに兄さんと一緒に聴いています。今日は家族について相談に乗って頂きたいんです。実は、私の家族は血縁関係が有りません。契約者とそのパートナー達なので当たり前かもしれませんが兄さん(あ、兄さんが契約者なんです)はそれでも家族だって言ってくれてます。先日、新たに契約した方が加わったんです。けど、その人は年上なんですが順番的に妹になってしまうんです。それで、どう接したら良いのか困っています。どうしたら良いでしょうか?
 
 世間には、年下のおじさんとか、年下のお父さんとかたくさんいますから問題ありません。
 どちらかというと、精神年齢の方が問題ですよね。
 縁側で渋茶をすすりながら盆栽を剪定しているじじむさい幼女とか……特定の人が喜びそうですが……。
 
 ペンネーム、美形鎧侍女さん。
 
シャレード様初めまして。実は私の主に対する心配事を聴いて頂きたいのです。私は半年ほど前に主と契約して一つ屋根の下生活しております。ですのでうっかりいろいろ見られたり見せたり見たりする事が有るのですが、一度も手を出して来ません。まさか不能なのかと思えばそうでも無いようです。ぶっちゃけますが、私は美人だと自負しています。手を出されないとソレはソレで腹が立ちます。どうしてやりましょう?
 
 微妙なお年頃なんですね。どうどうどう、少し落ち着きましょう。
 見てくれないなら、見るしかありません……。でも、すっごく危険なことになりそうな気が……。
 くれぐれも早まったりしないでくださいね」
 
    ★    ★    ★
 
「あれ、このハガキは……。なんで、ペンネームが変わっているんです?」
 自分の投稿が読まれたけれど、なぜかペンネームが変わっているのに気づいて紫月 睡蓮(しづき・すいれん)が小首をかしげた。
 しかも、よりによってズドンとはなんだろう、ズドンとは。
「あっ! そういえば、あの日は、纏めて投函してくれるからということでプラチナさんに纏めてハガキを渡して……。やってくださいましたね。許しません!」
 そう叫ぶなり、紫月睡蓮は部屋を飛び出していった。
「おや、睡蓮、いったいどうした……行ってしまった。なんだったのだ?」
 明日の朝食の仕込みをしていたエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)が、背後を凄いスピードで走り抜けていった紫月睡蓮に声をかけようとしたが、振り返ったときにはすでに外へと飛び出していった後であった。
 
「まったく、最近は夜も暑いから、見回りも楽じゃないねえ」
『そうですねえ、マスター』
 のんびりとラジオを聞きながら夜の見回りをする紫月 唯斗(しづき・ゆいと)に、すでに魔鎧として彼に装着されていたプラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)が相づちを打った。
 ラジオからは、女しか助けないというスケベな男の話題が聞こえてくる。
「いや、それはそいつが悪い気がするなあ。人助けはいいことだけど、パートナーにもちゃんと気を遣わないとだろ」
『そうですねえ……』
 率直な感想を述べる紫月唯斗だが、誰のことなのか知っているプラチナム・アイゼンシルトは、忍び笑いをこらえるのに必死だった。
 続いて聞こえてきたのは、年の差の妹の話だ。
「妙な話もあるもんだなあ。普通に妹扱いすればいいんじゃないんですかねえ」
『そ、そうですねえ……』
「それにしても、バカなペンネームですね。ズドンって、何ですか、ズドンって」
『そ、そ、そ、くっ、そうですね……。ううっ』
「どうしたんです、プラチナ?」
『い、いえ、なんでもありません』
 さらに、迫られないのでつまらないというハガキが読まれた。
「うん、こいつバカだろう」
『……』
「しかしまあ、一度はそうやって迫られてみたいかもな」
『本当ですか? マスター』
 ちょっと意外そうに、プラチナム・アイゼンシルトが紫月唯斗に聞き返した。多分、本人は、何も考えなしに感想を言っているに違いない。それはそれで、紫月唯斗らしい。
『あのですね、マスター……』
 ややあって、プラチナム・アイゼンシルトが、紫月唯斗に話しかけたときだった。
「あれ? あれは、睡蓮じゃ……」
 先の方で、道のど真ん中に仁王立ちになっている一人のシルエットを見て、紫月唯斗が言った。
「プラチナ〜、死になさい!!」
 問答無用で、紫月睡蓮が攻撃をしてくる。
「おおっ、なんで俺を攻撃してくる。や、やめなさい!」
『そうです。なんで怒っているのでしょうねえ。まったく、ズドンでみっともない……』
 あわてて攻撃を避ける紫月唯斗とは対照的に、しれっとプラチナム・アイゼンシルトが言った。
「おのれー、プラチナ。問答無用!!」
「ちょっと、まて、やめ、やめなさーい!!」
 ちっとも攻撃をやめようとしない紫月睡蓮に、仕方なく、紫月唯斗があわて逃げだした。
「待てー、プラチナ!」
 攻撃を続けつつ、紫月睡蓮が追いかけてくる。紫月唯斗の姿はまったく目に入ってはいないようだ。
「プラチナ、何をやった。睡蓮の奴、お前の名を連呼してるぞ」
『さあ、私にはさっぱり』
「ええい、ここでプラチナを脱ぎ捨てない限り、俺も一蓮托生ですか!?」
『まさか、いたいけな魔鎧をここで脱ぎ捨てて、あんな狼の目の前にすっぽんぽんで放置するつもりですか?』
 プラチナム・アイゼンシルトが紫月唯斗を責めた。だが、その声音はどことなく楽しんでいるようでもある。
「とにかく、エクスのとこまで逃げ帰るぞ。なんとかして、睡蓮を取り押さえてもらわないと……」
 逃げる紫月唯斗の耳には、ラジオのジングルが聞こえてくるのであった。
 
    ★    ★    ★
 
「ミッドナイト・シャンバラ。はわわわわ、痛いのです!