|
|
リアクション
★ ★ ★
「いったい今の爆発はなんだ。あの美しかった大仏が破壊されてしまったぞ。原因を調べたまえ」
目の前でカイザー・ガン・ブツが吹き飛ぶのを見て、ヤング・ジェイダスが周囲の者たちに報告を求めた。
「スーパー・オリュンポスキャノンの直撃のようです」
「どこからの攻撃だ。この場所に、私がいると知っていてのものだろうな」
シャレード・ムーンの言葉に、ヤング・ジェイダスが厳しい面持ちで言った。
「近くに、オリュンポス・パレスを中心として多数のイコンが展開しています。さすがに、ここを攻撃してきたとは思えませんが、何らかのアクシデントで流れ弾が来たのではないでしょうか」
「意図的であり、そうでないであれ、責任は取ってもらおう。そういえば、このジェットコースターは、構造としてはサイクロトロンと同様であったはずだな」
何やら危険な光を瞳に宿して、ヤング・ジェイダスがシャレード・ムーンに訊ねた。
「一応そうのはずですが、密閉性は低いので、粒子加速には不向きです」
何をするつもりだろうと、シャレード・ムーンが聞き返した。
「レースの実験も兼ねて、ちょっと加速してもらいたい物がある。なあに、小さなミサイル一発だ、それを準光速まで……」
「無茶です!」
すぐさま、シャレード・ムーンが言い返した。
「じゃあ、だいたい光速程度でよろしい」
「加速はできても、どうするんですか。射出方向は固定なんですよ」
「運よく、同じ原理のカタパルトを持つ艦が二隻もあるではないか。あれを利用すれば可能だ」
しれっと、ヤング・ジェイダスが二隻のフリングホルニ級空母をさして言った。
★ ★ ★
「また、無茶な頼みごとを……。しかし、技術的には、面白い試みではありますな」
ヤング・ジェイダスの無茶ぶりに、デュランドール・ロンバスが興味を持ったように言った。
「そんなことができるのですか?」
原理がよく分からずに、エステル・シャンフロウが聞き返した。
「まさか、大気圏内で本物の準光速ミサイルなど発射したらとんでもないことになります。だいたいが、準光速で飛来する誘導式質量兵器などという物は理論上のものですしね。基本的には、光速近くにまで加速した一定の質量を持つ物体を敵に命中させることにより、その運動エネルギーを全て衝突時の衝撃や熱エネルギーに変換する兵器です。実現したら、数発でパラミタ大陸など消滅できますが、実際には無理でしょう。パラミタ製のフィールド加速型のサイクロトロンをミサイル加速に利用するとして、安全に運用するなら光速の数万分の一程度でも十二分でしょう」
それだけでも、レールガンの出力を遥かに上回るスピードとなる。
結局、ヤング・ジェイダスの言葉に乗っかる形で、デュランドール・ロンバスが押し切った。二人とも、ほとんど好奇心だけで動いている感じではある。
「こんな無茶な機動をするんですか?」
指示書を見たニルス・マイトナーがちょっと絶句した。
「艦橋の問題があるからな。一隻で加速フィールドを作り出すわけにはいかん。まあ、逆さまよりは増しだろう」
デュランドール・ロンバスに言われて、ニルス・マイトナーが源鉄心に概要を説明した。
「まあ、イコナたちのお仕置きにもちょうどいいさ」
そう言うと、源鉄心がフリングホルニと翠花のコントロールを同期させた。
「全乗組員に告ぐ、固定ベルト着用。フリングホルニ、右90度ロール。翠花左90度ロール。開始!」
グレン・ドミトリーが、サイクロトロン近くにならんだ二隻のフリングホルニ級を向かい合わせになるように横倒しにした。
「フィールドカタパルト展開。同期開始」
二隻のフィールドカタパルト発生装置が同期して、大型の加速フィールドを形成した。
「角度微調整。目標捕捉、オリュンポスパレス」
二隻の角度を微妙に変えていって、マスドライバーの射出口から飛び出してきたミサイルの軌道を、墜落して動けなくなっているオリュンポス・パレスの方向へとむける。
「一応、退避勧告はしておいてやれ」
形だけ、ヤング・ジェイダスが言う。
「マスドライバー加速フィールド展開。フィールド内の大気、加速排出」
加速の邪魔となる大気自体を加速して、加速フィールドのチューブ内から追い出して真空に近い状態を作り出す。
「フィールド内にミサイル発射」
炸薬と燃料を外され、金属を詰められたミサイルがフィールド内に放出された。加速フィールドによって、じょじょに加速されていく。やがて、アトラスの傷跡を瞬く間に何周もする間に、ミサイルはありえないスピードにまで加速されていった。
「間もなく射出する。全員、ショックに備えろ」
グレン・ドミトリーが全艦に告げた。直後、マスドライバーから飛び出したミサイルが、二隻のフリングホルニ級のフィールドに軌道修正されて放たれた。その瞬間、凄まじい衝撃波が生まれて、フリングホルニ級が大きくゆれる。
凄まじい勢いで大気を切り裂いていったミサイルが、オリュンポスパレスに命中した。衝撃で地表が大きく空に舞い上げられ、一帯が吹っ飛んだ。
★ ★ ★
「まったく、報復にやってきて、なんで救助をしなくてはならんのだ。ホイ、これ、請求書」
ゴールデン・キャッツのブリッジで、マネキ・ングが、回収したドクター・ハデスらを前にして言った。
「ちょっと待て、全部俺宛のようだが……」
納得がいかないと、ドクター・ハデスが言った。よく見ると、何やら、いろいろな場所から機械やプリンやらの請求書が混じっている。
「ふふふふ、命よりは安いと思うがな。なんなら、アワビ養殖の強制労働で払ってもらってもよいのだぞ」
不敵に、マネキ・ングが言った