リアクション
ニルヴァーナの休日 「やれ、やっと来たようじゃのう」 ニルヴァーナ創世学園のこうもんで待っていた【分御魂】 天之御中主大神(わけみたま・あめのみなかのぬしのかみ)が、ゴアドー島のゲートを通ってニルヴァーナへとやってきた非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)を、【分御魂】 高御産巣日大神(わけみたま・たかみむすびのかみ)、【分御魂】 神産巣日大神(わけみたま・かみむすびのかみ)と共に出迎えた。 三人とも、ここニルヴァーナ創世学園で陰陽道関係の教師をしていて、普段は非不未予異無亡病近遠とは別行動をとっている。 今日は、非不未予異無亡病近遠がニルヴァーナ創世学園の今を見学したいと言うことで、案内役を買って出たのだった。 「創立から一年経ちましたが、その後はどうですか?」 ニルヴァーナ全体の変化も含めて、非不未予異無亡病近遠が訊ねた。 「順調……というべきなのでしょうね」 神産巣日大神が淡々と答えた。 「ニルヴァーナにおける戦闘でも、学園の施設が全壊するようなことはほとんどなかったからな。建築は順調だし、まったく新しい学園ということで、かなり自由に発展していったと言える。まあ、好き勝手にという言い方もできるがな」 高御産巣日大神が、ちょっと苦笑しながら言った。 ニルヴァーナ創世学園のシステム自体は、早期にほぼ固まったと言える。現在も、全てはその延長線上にあった。 日々新しい学科などを追加していく方式も考えられたが、初期のころに必要な物を全て計画するという方法をとったため、ぶれなく発展できたと言えよう。 衛星都市と言える各都市も、発展は早い段階で方向性を示していた。現在は、その結果開発された新しい技術の産物の普及と、その使い方の模索中と言ったところだろうか。 「だから、そなたが見るべき物は、安定じゃのう……表向きは」 天之御中主大神が、やや声を潜めて言った。 実際には、まだ完全に敵対勢力がなくなったわけでもなく、自然の驚異もたくさん残っている。特に、グランツ教関係の施設は、まだ残っているかもしれないというのが大方の分析だった。 「確証はないのですか?」 「ない。だからこそ、備えるのだ。さあ、では、現在のニルヴァーナ創世学園を案内してさしあげよう」 きっぱりと言い切ると、天之御中主大神が先頭に立ってニルヴァーナ創世学園の案内を始めた。 ★ ★ ★ 「ここが、ニルヴァーナですか。懐かしいという感じはしませんね」 ゲートからでて再廻の大地に降り立ったルビーが、周囲を見回して言った。 「あたりまえだな。私たちは、ここに初めてきたのだから」 「違いない」 オプシディアンの言葉に、ジェイドがうなずいた。 「まあ、今となっては、この場所が我らにどれだけの意味があるかというのは愚問だな」 元々、ここは自分たちが監視すべき土地ではないと言いたげに、アラバスターがさっと周囲を一瞥するにとどめた。 鷽によって判明した事実は、オプシディアンたち自身も驚くべきものであったが、だからといって、彼らの存在自体が意味を変えてしまうものではない。それを確かめに、ここニルヴァーナまで、その世界の視察に訪れたのだった。 「そうですね。先の報告で興味を持ちましたが、気にする必要はなかったようですね。ここが滅びようと栄えようと、それはそれというわけです」 ルビーが、アラバスターに同意した。 「じゃあ、来て疲れただけってわけか?」 何しに来たんだとばかりに、オプシディアンが呆れた。 「まあ、観光だと思えばいいでしょう」 ジェイドが笑みを浮かべながら言う。 「だったら、観光をしましょうよ。なんでも、北の方には、大きな湖の町があるっていう話よ」 エメラルドが、こんなゲート近くの殺風景な場所から早く移動したいと言いたげに皆を急かした。 「確認してきました。本数は少ないですが、中継基地とかを経由して、そのアイールとかいう町に行く定期便がでているそうです」 交通機関を調べに行っていたアクアマリンが戻ってきて報告する。 「じゃ、いきましょうよ」 エメラルドが急かす。 完全にお上りさんとなって、一行は水上の町アイールへとむかった。 |
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