なし

リアクション

（４）バビロン城−８

「あっ…………おい！」
　キュー・ディスティン（きゅー・でぃすてぃん）が気付いた時、バビロン城の外観は小刻みに震えて揺れていた。そして―――
「ああっ！！」
　外壁の一部が勢いよく崩れて落ちていった。
「そんな……中にはまだ、みなさんが……」
　両の手で口を押さえるシルフィスティ・ロスヴァイセ（しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ）。キューも同じにしたいほどの衝撃を受けていたが、それをしなかったのは「城の庭部に人影を発見した」からだった。
「おい！　あれ！！」
　水神　樹（みなかみ・いつき）、そしてカノン・コート（かのん・こーと）を先頭に、次々に契約者たちが駆け出てくるのが見えた。続いてマルドゥークやカナン兵たち、なぜか悪魔の姿も見えたが、今は彼らの保護とフォローが先だ。
「ん？　あれは……」
　皆を誘導するカノンが気付いた。一行とは離れた場所から駆け出てくる者たち、共に城に入りたが途中ではぐれたロア・ドゥーエ（ろあ・どぅーえ）たちに―――
「危ないっ！！」
　巨岩のような壊壁がロアたちの頭上に降ってきた。
「くそっ！！」
　駆けながらに『氷術』を放つが間に合わない。崩壊する城からどうにか脱出したロアたちは、壊壁の下敷きとなり命を落とす―――
「ふっ！！」
　間一髪、それを防いだのは樹だった。一歩先に駆け出していた樹の剣撃、『グリントフンガムンガ』に『アルティマ・トゥーレ』を加えた一点突破が降り来る壊壁を見事に破砕した。
「さぁ、今のうちに」
　壁の崩壊は終わってはいない。
「みんな一緒に生き残る！　絶対に生き残るんだ！！」
　カノンの言葉、崩落の始まった城内で、皆を鼓舞するように言った言葉だ。樹も同じに誓いを立てた、必ず実現させる、そのために力の限り最後まで尽力する、と。
　彼らの誘導も相まって、城に侵入した契約者たちは全員無事に帰還を果たした。うち、見慣れない顔は悪魔『ベリアル』、持ち帰った『封魔壺』は全部で２９個。
　そのうちの１５個はベリアルの物だが、ロアたちが持ち帰った１０個の壷を含めれば、契約者たちは計１４個の封魔壺を手に入れたことになる。うち、空の『封魔壺』は計９つ。９体の悪魔を封じる事が出来る。
　魔族を封印する事ができる壺。これらは果たして希望となるか、はたまた絶望か。
　物語は最終局面へと突入してゆくのだった。