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【ザナドゥ魔戦記】バビロンの腐霧

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【ザナドゥ魔戦記】バビロンの腐霧

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(2)バビロン城−4

 パイモン軍『紫銀の魔鎧』部隊を率いるは女性指揮官であるゼパル。そんな彼女に、
「なぁ、ゼパル
 奈落人である中願寺 飛鳥(ちゅうがんじ・あすか)が小さく問いた。
「何故、今、悪魔を封印する壷が必要なんだい? そんな物が存在したら、不利になるのは、あんたたちの方だろ?」
 憑依した中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)の細く高い声で男言葉を話すため、普通は違和感を覚えても良いのだが、ゼパルは全く気にすることなく応えた。
「地上軍に渡す気なんて無いわ。それに用があるのは既に封印されている壷の方よ」
「そこも分からないんだよな、封印されてるのはパイモンにとって邪魔な存在なんだろ? 封印を解いちまって良いのか?―――ん? どうした?」
 不意に声が聞こえて飛鳥は立ち止まった。魔鎧として装着している漆黒の ドレス(しっこくの・どれす)が声をかけたようだ。
「こっち……」
「ん? んなとこに道なんて……」
 壁。通路などない、ただの壁…………いや、よく見ればその部分だけが不自然なほどに黒く暗い。人ひとりがようやく通れるほどだが、確かに通路がある。そして入ってすぐの小部屋には、
「これって……封魔壺なんじゃ……」
 バレーボールほどの大きさの壷が床に乱雑に置かれている。その数、約40個。魔族が封じられている壷『封魔壺』、ドレスは「同族の匂い」を感じ取ったのだというが……。
「その壷は止めた方が良いわよ」
 手に取ろうとした飛鳥ゼパルが止めた。
「中身はミシャンドラでしょう? 止めておきなさい」
ミシャンドラ?」
「その壷っていうか、そこにある壷は全てダメ。触らない方がいいわ」
「? 都合の悪い奴って事か?」
「話の通じないバカばかりなのよ、そいつらに用はないわ」
 力はあるが知能が低い。戦いのための戦い、破壊欲を満たすために戦うといった種類の悪魔が封じられているのだという。
「敵味方見境無く襲ってくるような奴らと戯れたいなら、どうぞ」
「そんな趣味は無ぇよ」
「あら残念。でもそうね、それこそ地上で封印を解くなら少しは役に立つかしら」
「俺たちも急いで逃げなきゃならないけどな」
 封印された時期も種族もバラバラだが、この城に封印されている50体の悪魔は、大きく分けて3種に分類することができるという。安置されている場所も種類ごとに分けられているようで、ゼパルが探しているのは残念ながらこの種ではない。
 パイモンにとって邪魔な存在、それでも戦力となることが期待できる存在である悪魔たち。それらが封印されている壷を求めて、彼女たちは地下迷宮を進んで行くのだった。