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第7試合

 
 
『さあ、気をとりなおして第7試合に参りましょう。
 イーブンサイド、シルフィスティ・ロスヴァイセ、ディジー
 オッドサイド、猪川勇平、セイファー・コントラクト、バルムング!』
「なんだ、あのペガサスは。どす黒いオーラを感じるが。ふはははは、これは、我がオリュンポスにスカウトすべきか?」
「スカウトなんかしてどうするんですか」
 何やら悪巧みをしているドクター・ハデスに、天樹十六凪が訊ねた。
「バイトさせる」
 しれっと、ドクター・ハデスが答えた。
「いや、要塞の修理費とか……」
「シミュレータですから、実際には壊れていません」
「壊れる以前に未完成で、ハリボテの部分もあるじゃないか!」
 やっぱり資金はいるんだいと、ドクター・ハデスが叫んだ。
 ドクター・ハデスたちが目を逸らしている間に、戦いの方は始まっていた。
 フィールドはヴァイシャリー湖である。
 水辺へと移動したディジーが消波ブロックやらボートやら、そこらにある物をどんどんバルムングに投げつけていく。ある意味猛攻だ。
 機神拳で飛んでくる物を破壊しながら、業を煮やしたバルムングがコロージョン・グレネードを投げつけた。消波ブロックと真っ向からぶつかったコロージョン・グレネードが、凝固剤をディジーに浴びせかけた。
 身動きのとれなくなったディジーがシルフィスティ・ロスヴァイセごと湖畔に転がって身悶えする。半分ほど水に浸かっていたのだが、もがくたびに湖に引き込まれてやがて水の中に沈んでいった。
「な〜む〜」
 桜葉忍を初めとする観客たちが手を合わせた。
 
    ★    ★    ★
 
『勝負あり、勝者バルムングです!』
 
    ★    ★    ★
 
「はい、回収、回収」
 溺れたフィードバックで気を失ったシルフィスティ・ロスヴァイセをシミュレータの中から引きずり出すと、リカイン・フェルマータがシルフィスティ・ロスヴァイセが持っていたヨーヨーで彼女をグルグル巻きに縛りあげた。その上で、支配下の霊獣アライグマに自宅まで運ばせていったのだった。
 
 
第8試合

 
 
『さあ、第3回戦も最終試合となりました。
 イーブンサイド、高崎朋美、ウルスラーディ・シマック、ウィンダム
 オッドサイド、ルーシッド・オルフェール、瀬乃和深、ゼアシュラーゲン!』
 フィールドはシボラのジャングルだが、天候がスコールになっている。
「これは、また酷い環境だな」
「なあに、それを制するのも戦いのうち。だが、わらわはごめんこうむるがな」
 ポリポリとせんべいを食べながら観戦していた悠久ノカナタが、緋桜ケイに告げた。エンライトメントあらためグレートとわのカナタちゃんにとっては、雨は髪が傷むから大敵である。
 いちおうステルスモードのゼアシュラーゲンであったが、ステルスモードだからと言って雨が機体をすり抜けてくれるわけではない。ステルス機にとっては、雨は大敵だ。そのため、ジャングルに身を隠して索敵を行っていた。
 白兵戦を狙うウィンダムの方も、迂闊に空中に移動しないでゼアシュラーゲンを探していた。
 先に敵を発見したのはゼアシュラーゲンの方だった。だが、ステルスモードではセンサークラッシャー以外に射撃武装がないのでさらに接近を試みる。
 その慎重さが仇となり、ゼアシュラーゲンがウィンダムに発見されてしまった。こうなると、能力低下状態のステルスモードでは不利である。ゼアシュラーゲンは通常モードに変化すると、プラズマキャノンを構えた。
 圧縮された高熱の弾体が発射される。スコールが蒸発して、水蒸気による激しい気流が周囲に広がった。
 ジャングルの木々を薙ぎ倒すようにして、回避したウィンダムが、ジャンプして反撃に転じる。振り下ろされた氷獣双角刀が、氷片を作って振りまきつつゼアシュラーゲンに襲いかかった。ぎりぎりで回避するゼアシュラーゲンがさっきまでいた場所の木々が凍って砕ける。
 即座にとって返したゼアシュラーゲンが、ギロチンアームを叩き込もうとする。氷獣双角刀で受けとめたウィンダムであったが、ギロチンアームの一撃で氷獣双角刀が砕け散った。だが、同時にゼアシュラーゲンの右腕も凍りついて動かなくなる。
 決め手を欠いたゼアシュラーゲンが、切り札を切った。
 破岩突で、一気にウィンダムに体当たりをかけたのだ。そのままさらに加速してジャングルの木々を次々に薙ぎ倒してどこまでも進んで行く。ウィンダムの背部のパワーブースターが崩壊して次々にパーツが吹き飛んでいった。
 ビームウイングまでもが吹き飛び、機体が引き千切られ始める。だが、加速を続けるゼアシュラーゲンの背部に、ビームサーベルの切っ先が突き出た。ウインダム起死回生の一撃だったが、その攻撃でゼアシュラーゲンが誘爆を起こした。脆くなっていたウィンダムもあっけなくそれに巻き込まれる。
 
    ★    ★    ★
 
『おおっと、両者吹っ飛びました。相討ちです』
 シャレード・ムーンのアナウンスが、会場に響いた。
 
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「ちょっと、和深くん! もっと本気でやってよね!」
 シミュレータから飛び出してきたルーシッド・オルフェールが瀬乃和深を捕まえて叫んだ。
「仕方ないだろう、相手は天学生だ、本職には勝てなかったってことだ」
「うー、もう!」
 言い返す言葉を探して、ルーシッド・オルフェールが地団駄を踏んだ。
 
    ★    ★    ★
 
「あそこで逃げられていたらねー」
 残念そうに高崎朋美が言った。
「あそこまでホールドされていたんじゃ、無理だな」
 仕方ないと、ウルスラーディ・シマックが軽く肩をすくめた。
「勝敗は時の運。今回はボクたちがついてなかったってことだね」