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5章 モンスターとの遭遇

 そのころ、タカシたちはというと、沙幸の連絡でジャンク屋の襲撃を警戒しつつ、遺跡に向かって移動していた。
 とはいえ襲撃も今のところなく、順調に移動は進んでいた。
「あれ……なんだろう?」
 小型飛空艇で先行していた一人、倉田 由香(くらた・ゆか)は、進行方向に崩れかけた建物を発見した。次第にその姿ははっきりしてくる。
「何でしょうね、古代の神殿か研究施設か……いずれにせよかなり昔の遺跡だと思います」
 先にたどり着いた近衛 真也(このえ・しんや)は、建物を見上げて言った。
「もしかして、ここがライナスのいる遺跡でしょうか?」
 真也が後から追いついてきたアラン・ブラックウッド(あらん・ぶらっくうっど)たちにたずねた。
「いいや、昨日の進み具合から、到着にはまだ早いな。もう少し先だろう」
 アランたちは相談して、ここで一旦休憩することにした。
「おお、なんと壮麗な遺跡だろう、我輩の探求心がひどく刺激されるな」
 青は遺跡に興味津々といった様子で、中の様子を見に行こうとする。
「あ、待ってったら、一人じゃ危ないじゃない」
 由香と黒があわてて彼を追いかける。由香も好奇心旺盛な性格は似たようなものなので、中を見てみたいという気持ちがあったのかもしれない。
 ところが、遺跡に数歩入ってすぐに、なにやらがちゃがちゃと奥から物音がしてきた。
「え、何、罠……?」
 三人が思わず足を止めると、奥から骨だけの戦士たちが大量に現れた。その数およそ二、三十体。
「モ、モンスターだわ!!」
「うむ、あれはスケルトンだな……我輩もみるのは初めてだ」
「感心してないで! 囲まれないうちに逃げるのよ!」
 由香たちは青を引っ張ってすぐさま皆の元へ戻ってきた。
 すぐにスケルトン集団も追いかけてきて、遺跡の前ではモンスターたちと乱闘状態になった。
「よーし、とうとうセイバーの力を見せるときが来たわね! でもモンスターは野生動物みたいなものだから、手加減してあげるよっ!」
 大崎 織龍(おおざき・しりゅう)が、剣をかまえてモンスターの群れに突撃していく。
「てええいっ!!」
 織龍は気合いを入れて剣を振りおろした。勢いをつけた剣は、スケルトンの一匹に命中し、隣にいたもう一匹まで巻き込んで遠くまではじきとばした。
 セイバーやソルジャーたちは一度に複数のモンスターを相手にしていたが、モンスターも数が多いため、じわじわと後衛に近づいてくるものもいた。
 ウィザードのニーズ・ペンドラゴン(にーず・ぺんどらごん)は織龍から距離をとって、火術で支援攻撃をしていたが、一匹のスケルトンが近寄ってきて、メイスを振りおろした。
「……くっ」
 ニーズは魔法が間に合わず、思わず目を閉じた。
 近くで剣がぶつかる音がして、その後ガラガラと何かが崩れる音がした。
「大丈夫か!?」
 サイクロン・ストラグル(さいくろん・すとらぐる)が声をかけた。ニーズが目を開けると、目の前のスケルトンは崩れていた。
 間一髪のところで、サイクロンがモンスターを破壊したのだった。
「ありがとう、青年」
「なあに、みんなで力を合わせれば、こんなの大した敵じゃないです。さあ、あともう一息がんばりましょう」
 サイクロンは剣をかまえ直すと、また近づいてきたスケルトンを粉砕した。
 彼を見守りつつも、グランメギド・アクサラム(ぐらんめぎど・あくさらむ)はソフィアを守ることに専念していた。
「心配しないでくれ、こんなモンスターに負けるような連中じゃない。タカシ殿たちを信じるんだ」
「……はい」
 身動きのとれないソフィアはじっとタカシの安全を祈っているしかなかった。
 タカシも他の仲間とともに、スケルトンと互角に戦っていた。
「こんなところで苦労していたら、ソフィアを守れない……絶対に負けるものか!」
「そうです、その意気です」
 一緒に戦っていた真也はタカシの言葉に大いに同意した。
「ええい、俺を子供だと思って、馬鹿にするなよ!」
 アランはバイクでスケルトンたちに突撃しつつ、剣で戦っていた。スケルトンたちはアランのことを馬鹿にしたわけではないが、どちらにしろ攻撃を受けることには変わりない。

「うわあっ」
 スケルトンたちと戦っていたタカシであったが、いつの間にか複数の敵に囲まれてしまっていた。
 スケルトンの一匹がはタカシに向かって剣を振りかざしてきたので、タカシは剣で受け止めた。しかし、剣は弾きとばされてしまう。
「もうだめか、ソフィア……!」
 タカシは自分の弱さ、そしてソフィアを守れなかったことを悔やんだ。
 その瞬間、タカシの目の前にいたスケルトンたちが吹き飛ばされた。
「大丈夫か!」
 現れたのはアランとサイクロンであった。
「は、はい……助けられてばかりで、すいません」
 助かることは出来たが、助けられてばかりのタカシはつい、そう言ってしまった。
「謝ることはありません、味方はたくさんいるのですから、皆で助け合えばいいのです」
 サイクロンは笑顔で答えた。
「そうだな、なに、俺は守るのが仕事だからな、全力で仕事を遂行するまでだ」
 アランはそう言うと、バイクに乗って再びスケルトンの群れに突撃していった。
「そうですね……ぼくも全力でソフィアを守らなきゃ!」
 タカシは落ちていた剣を拾うと、アランの去っていった方向を見送っていた。

 怪我をして動けなくなる者もいたが、それよりスケルトンたちの数の減る方が早かった。
 混戦状態がさらに増してきたので、アランはバイクを降りて剣とキックでスケルトンを片づけ始めた。
「おいおい、これじゃあオレらが活躍する前に片づいちまいそうだな」
 後衛を守っていたカルナス・レインフォード(かるなす・れいんふぉーど)は、パートナーのアデーレ・バルフェット(あでーれ・ばるふぇっと)に調子よく語りかけた。
「キミは時々無茶をするから、下手に行動するよりはずっといいよ」
 アデーレは傷ついた仲間たちにヒールをかけながら言い返した。
「そうだな、それに……戦力は温存しておいて損はないな」
 カルナスは相変わらず軽い調子で答えたが、その言葉は真面目だった。まだこれからジャンク屋とも戦う羽目になるかもしれないのだ。

「……さあ、いい加減、骨は地中で眠ってろ!」
 サイクロンの一撃で、最後のスケルトンも砕かれ、地面に散乱した。
「もう追加で出てきたりはしないよな?」
 グランメギドがおそるおそるたずねた。
「そういう様子はないな」
 サイクロンは遺跡の奥を覗いたが、とても静かだった。
「怪我をした方、すぐに治療いたします。動けない方がいましたらこちらのテントまで運んできてください」
 黒やアデーレやそのほかのプリーストたちによってけが人の治療がすぐさま開始された。
「治療には時間がかかりそうか?」
 カルナスがアデーレに質問した。
「そこまで深い傷を負った人はいないみたいだから、もう少ししたら出発できると思うよ」
「そうか」
 カルナスは少しほっとした。

「ソフィア、大丈夫!?」
 タカシはすぐにソフィアたちの元へと駆けつけた。
「はい、大丈夫です。モンスターもここまでは来ませんでした。みなさまのおかげです」
 ソフィアは横たわったままタカシの顔を見て微笑んだ。
「うん、みんな頼もしい仲間だからね。きっとソフィアも元気になれるよ!」
 タカシはこのまま行けばきっとソフィアはよくなる、と思うようになってきていた。

「サイクロン、怪我はないのか?」
 グランメギドは、角の方で座っていたサイクロンに声をかけた。
「え、まあ軽い傷はあるけど大丈夫だ」
「みせなさい」
 グランメギドはむりやりサイクロンの腕をつかんで包帯を巻いた。
「貴公は他人の命は大切にするのに、自分のことは構わなさすぎる。もっと物事を冷静に見るようにしないといけないな」
「ああ……わかったよ」
 サイクロンはそう言って小さく笑った。

「けが人は少し出ちゃったけど、大した被害が出なくてほっとしたわ」
 織龍がニーズに言った。
「そうだな、このまま無事に遺跡につければよいのだが」
 ところがまさにその瞬間、進行方向の逆、つまりタカシたちが来た道から武装したバイクの集団が迫ってきていた。
「ジャンク屋か! 全くなんてタイミングだ……」
 カルナスは青ざめた。とはいえ、スケルトンと戦っている真っ最中に来なかっただけましといえるだろうか。
「敵は二十人前後と言うところね……思ったより少ないようね。とにかく、今動ける者たちで何とかするしかないわ!」
 由香が上空から確認しながら言った。
「ソフィアを利用しようとしている連中です、なんとしてでも追い返しましょう」
 真也はすでに剣をかまえていた。
「仕方ないな……行くぞ、みんな!」
 カルナスが剣を掲げて声を上げた。