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6章 蛮族との戦い

 出撃に手間取ったジャンク屋集団であったが、運が良い(?)ことにタカシたちは途中の遺跡でスケルトンたちに足止めされいたので、追いつくことができた。
「いたぞーっ! だいたいあのくらいの人数だったはずだからきっと奴らだ」
 ジャンク屋集団はバイクを止めると、ボウガンやトゲバットなどの武器を抱えて飛び出してきた。
 エレート・フレディアーニ(えれーと・ふれでぃあーに)は、ソフィアを連れて、ジャンク屋たちから身を隠すようにしていた。
「体を動かすことは苦手ですが……ソフィアさんの護衛をすることくらいなら任せてください」
 そう言って彼女はジャンク屋と仲間たちとの戦いの様子を見守っていた。もちろん、ただみているだけではない。仲間が怪我をしたら、すぐにヒールができるように準備をしていた。

「とうとう来たか……前線は俺に任せておけ!」
 御風 黎次(みかぜ・れいじ)は持ち前の剣さばきでトゲバットのジャンク屋たちを叩きのめしていく。
「ちくしょう、生意気な小僧め! それっ、一斉攻撃だ」
 ジャンク屋の一人が合図すると、黎次の周りにいたジャンク屋たちが彼を取り囲み、一斉にバットをぶつけてきた。
 普段は仲間割ればかりのジャンク屋集団であるが、なぜか戦いの時だけはチームワークが発揮されるのだ。
 黎次はバットの攻撃を受けて地面に転がってしまった。
「黎次さん! 大丈夫ですかっ!」
 エレートがすぐさまヒールをかける。
「すまない、だが俺に構うな、それよりもソフィアを守ることに集中してくれ」
 黎次は起きあがって剣を担ぐと、近くに突っ立っていたジャンク屋の一人を弾きとばした。
「うぎゃあっ!」
 彼の転がっていった先には、セシリア・ファフレータ(せしりあ・ふぁふれーた)ファルチェ・レクレラージュ(ふぁるちぇ・れくれらーじゅ)たちが待ちかまえていた。
「ファルチェ、そこの弱っている奴にとどめを刺すのじゃ! そやつらは人の命をお金にしようとする不埒な連中、手加減は不要じゃ!」
「はい。セシリア様の意向です……覚悟!」
 ファルチェは剣をまっすぐ振りおろしたが、ジャンク屋は間一髪のところで逃れて全力で逃げ出した。
「じょ、冗談じゃない。命はやっぱり惜しいからさっさと逃げるぜ」

 一人、二人、と次第にジャンク屋たちは逃げ始めていく。
「まったく、いざというときに頼りにならん連中ばっかりだな」
 ジャンク屋の親分はバイクで集団の中に突撃し、一気にソフィアの元までたどり着いた。途中何人か味方のジャンク屋をひいていたがそれに構う様子はない。
「ソフィアに触らないで!」
 エレートは親分の前に立ちはだかったが、親分の突きつけた銃に一瞬ひるんでしまい、その隙にソフィアをとられてしまった。
「こいつの命が惜しければ、攻撃をやめろ!」
 親分は捕まえたソフィアに銃を突きつけながら周りの者にむかって叫んだ。ファルチェをはじめとした全員が攻撃の手を止めた。
「よしよし、飲み込みが早いな……おまえたちも武器を下げろ、そのまま撤収だ」
 親分はそう言いながらバイクへ戻ろうとする。
「何ということじゃ……どうにかしてソフィアを取り返さなければ」
 だがセシリアが魔法を使おうにも、人質がいてはどうにもならない。そのときだった。
 遺跡の方から小型飛空艇が急降下してきて、ジャンク屋の親分の上空を旋回したのだ。陸奥 潤也(むつ・じゅんや)ムジカ・フラム(むじか・ふらむ)たちであった。
「なんだ、うるさい奴らだな」
 一瞬親分の意識がソフィアから離れた。その隙にファルチェが親分に体当たりして転がったソフィアを取り戻した。
「いててて……しまった!」
「ソフィアが戻ってくれば後はこっちのもんだ、それっ!」
 潤也はムジカに小型飛空艇の操縦を任せて光条兵器をかまえると、地面に向かって飛び降りた。
「せえいっ!!」
 そのままジャンク屋の親分に一撃を与えて地面に着地する。
「ようし、皆反撃じゃ!」
 セシリアが皆に向かって叫んだ。それを合図に皆一斉に攻撃を再会する。
「ちくしょう、機晶姫を手に入れ損なったな……さっさと逃げるぞ」
 起きあがった親分の合図で、ジャンク屋たちは一斉に撤退しはじめた。
「逃がすものか!」
 黎次たちが急いでジャンク屋たちを追いかけるが、突然現れた二人組に行く手を遮られる。鹿島 麗子(かしま・れいこ)リ・テケリ(り・てけり)であった。
「なんだおまえたち、奴らの仲間か」
「まあそんなものだ。あいにくだが、ここから先へは通さないぜ」
 麗子はバイクに乗ったまま不敵に笑った。
「なに……邪魔をするなら容赦しないぞ」
 黎次は仕方なく剣で麗子に切りつけた。しかし、彼女のダガーで剣を受けとめる力は、黎次にも劣っていなかった。
「ふん……甘い男は嫌いだ」
 そのままダガーに力を込めて、剣を弾きとばした。
「くっ……」
 黎次は驚いてただ立ち尽くすしかなかった。
「さて、連中もだいぶ遠くへ行ったようだし、私の役目もここまでだな。帰るぞ、テケリ」
「オッケー」
 二人はそのまま、ジャンク屋たちの逃げていった方向へ走り去った。
「大丈夫か!」
 潤也があわてて追いかけてきた。
「ああ、大丈夫だ、敵に逃げられてしまったが……」
「いや、ソフィアを守れるだけで十分だよ。それに深手を負ったジャンク屋も沢山いたから、しばらく悪さはできないはず」
 小型飛空艇を降りて、やってきたムジカが声をかけた。
「そうだな」
 黎次はうなずいた。
「さあ、もう少ししたら出発らしいから、少し休もうか」
 潤也たちは遺跡の前で休憩しているセシリアたちの元へと戻っていった。

 ジャンク屋たちがソフィアを手にする計画は失敗に終わった……しかし、そのころもう一つの場所で戦いが起きていた。
「そろそろ来ます……!」
 ソニアが携帯をしまいながら言った。たった今グレンから連絡があったらしい。
「わかった、まかせておけ」
 有沢 祐也(ありさわ・ゆうや)はすでに剣をかまえていた。いつ敵が来ても対処できるようにするためであった。
 やがて岩場にさしかかったとき、崖の上に十人程度の人影が現れた。
「いたぞ! フードをかぶった機晶姫がソフィアだ!」
 ジャンク屋たちは崖を降りて祐也たちに向かってきた。
「ソフィアを売り物としかみていない奴らめ……おまえらなんかに渡すものか!」
 祐也は正面からつっこんできたジャンク屋たちと剣で渡り合っている。
「ソフィア、危ない、早く逃げよう」
 ノーマン・ダン(のーまん・だん)がソフィア(?)の手を引いて逃げるが、敵に回り込まれてしまう。
「おっと、にげるならそのお嬢ちゃんをおいてきな……」
 ジャンク屋たちのリーダーらしき男がノーマンに向かってボウガンをかまえた。
「くっ……」
 ノーマンが動けないでいるのを確認すると、男はソフィア(?)に近づいてきた。
「さあ、おとなしくこっちへ来い……まあ抵抗してもバラされるのが早くなるだけだがな」
 男が彼女のフードをつかんだ瞬間、コートの中から剣が躍り出た。
 男は驚いて大きく後ろに下がった。
「なっこいつ壊れかけじゃ……偽物か!」
 偽ソフィアがフードを放り投げた。そこにいたのはテレサ・エリスン(てれさ・えりすん)である。
「残念でしたね、覚悟しなさい!」
 男が驚いている隙にノーマンは体勢を直し、アサルトカービンの銃弾を男に乱射した。
「くそっ……逃げるぞ!」
 男の合図でジャンク屋たちは急いで逃げ出した。
「逃げたか。まったく、人の命をなんだと思ってるんだ……まあ奴らにはわからんか」
 祐也はしばらくジャンク屋たちの去っていった方向を見ていた。
「もう襲ってくる心配はなさそうですね。できるだけ早く、タカシさんたちと合流しましょう」
 テレサがソニアたちに言った。
 なんとかジャンク屋たちを撤退させることに成功した祐也たち囮班は、いそいでタカシたちの元へと向かった。