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9章 再会

 ライナスは、研究室を急いで片づけると、ナナたちに手伝ってもらいながらソフィアを大きな台の上の横たわらせた。ようするに手術のような状態になっていた。
 タカシも心配そうにソフィアのことを見守っていた。
 ソフィアは遺跡に着いたあたりからほとんど弱りきっており、もういくらも寿命が残ってないのではないかと思えたのだ。修理に耐えられるのだろうかと心配でもあったのだ。
「大丈夫、機晶石を交換すれば、ちゃんと元気になる」
 ライナスが不安そうなタカシに向かって言った。
「はい……」
 タカシはそう答えたが、やはり不安をぬぐい去ることはできなかった。
 ナナ、青、カレンなどは、機晶石の交換作業という滅多に見られないものを見たいという好奇心もあって様子を見守っていたが、作業中は浮かれるようなことはせず、静かに作業が終わるのを待っていた。
「ソフィアさん、どうか元気になりますように……」
 ナナはソフィアの無事を願っていた。
 作業はとくに問題も発生せず、ライナスは機晶石を交換し終えると、ソフィアを元通りにした。
「あとは再起動すれば問題ないはず……」
 ライナスがソフィアを再起動させると、ソフィアはゆっくりと閉じていた目を開いた。
「ソフィア!」
 真っ先にタカシが駆けつけ、ソフィアの手を握った。
「ソフィア、ぼくのこと分かる?」
「……はい、タカシ。ありがとう」
 ソフィアは起きあがると、見守っていたナナたちの方を見て微笑むのだった。
「みなさん、ここまで私たちを助けてくださり、本当にありがとうございました。あなたたちの力がなければ、私はもう二度とタカシと会えなくなっていたのですから」
「ほんとうに、本当によかったよ!」
 カレンがうれしそうに言った。一緒にいたジュレールも穏やかに笑っていた。
「うん、本当によかったよ。契約者とパートナーが分かれるのは、どんな理由であれつらいことだからね……」
 ズィーベンがうなずきながらそのようなことを言っていたとき、作業台の上に妙な手が伸びているのを目撃した。
「貴公たち、いったい何をしているんだ……」
 巽が声をかけた。手の主はナガンだった。どうも台の上に置かれていた壊れた機晶石が目当てのようだった。
「あ、いや……あの、片づけの手伝いだ! 片づけ!」
 台の下の隠れていたナガンはあわてて手を引っ込め、落ちているものを片づけるふりをする。
「うーん、まあ片づけは大事だがな」
 巽は何となく納得いかない様子であったが、とりあえず一緒に片づけを手伝うことにした。

 目覚めたソフィアたちはそれまで一緒に旅をしてきた一人一人に向かってお礼を言って回った。
「本当に、ありがとうございました」
「そんな、お礼なんて。困っている人を助けるのは当然ですよ」
 久慈 宿儺(くじ・すくな)ヒツナ ヒノネ(ひつな・ひのね)はそう言って顔を見合わせた。
 夜も遅くなっていたので、タカシたちは遺跡の外でキャンプをして、翌日帰ることになった。
 その晩、ソフィアとタカシは長い間星空を見ながら、ようやく元気になったので、これからどうするべきか話し合っていた。ソフィアの表情は、楽しいこれからの生活を想像して、とてもうれしそうだった。
「ここへくる間にも、いろいろな人とお話する事ができてうれしかったです。もっといろいろな人に出会ったり、いろいろな場所に行ければいいのですが……」
「うん、今のソフィアならできるよ、きっとできる」
 荒野の夜も、今の二人にはつらく感じられなかった。

 夜が明け、一行はライナスに別れを告げて出発した。
 ロズウェルは少し不満そうな顔をしていた。
「ああ……せっかく古代の遺跡に来れたというのに、とくに目ぼしい財宝はなしか……」
 せっかくソフィアが元気になったというのに、あらかさまに不満な態度を見せている。
 見かねた歌菜が声をかけた。
「なによ、ソフィアが元気になったのに嬉しくないの?」
「そんなこと無い。だが、無駄な感情に流されて喜んだり悲しんだり、そういうのは好かないんだ」
 ロズウェルはさらりと答えた。
「も〜っ、つまんない人ね。ロズウェルもソフィアたちと同じように、パートナーと出会ってこの大陸に来たのでしょう? 出会いや思い出というものをちょっとは大事にした方がいいわよ!」
「……」
 ロズウェルは歌菜の言葉を黙って聞いていた。何か彼なりに思うところはあったのかもしれないが、彼が何かを語ることは無かった。

「義姉者、ソフィア殿が助かって、本当に良かったでござるな」
 うんちょうが伽羅に言った。
「そうですわね。それに教導団の生徒たちのよい訓練にもなりましたし、他校の生徒の戦う場面を見れたのも良かったですわ」
 伽羅はデータを眺めながら言った。
 うんちょうは特に伽羅の目的について意見するつもりはなかった。彼女は彼にとって唯一無二の存在なのだ。彼女が無事に任務から帰ることが出来ただけで十分だった。

「ほんとうに機晶石って不思議ですね」
 ナナが帰り際に言った。
「そうだね。でも他にも魔法など、いろんな不思議なことがこの大陸にはあるんだよ」
 ズィーベンが言った。
「これからもいろいろなところに冒険にいけるといいね」
 カレンがジュレールの方を見ながら言った。
「ああ、そしていつまでも二人一緒にすごせればそれに越したことは無いな」
 ジュレールが言った。彼女は自分がいつの日か壊れてしまうのはある意味仕方ないと今まで受け入れていたが、今日のソフィアたちの姿を見て、少しでも長い間カレンの傍にいたいと思うようになっていたのかもしれない。

 帰り道、タカシとソフィアたちが今後どうするのか、と宿儺はたずねた。
「学校はどうするのです?」
「うん、それはもう決めてある。蒼空学園に入ろうと思うんだ」
 タカシは答えた。
「じゃあ私たちと同じ学校ですね、うれしいです」
 ヒツナがうれしそうに言った。
「では帰ったら、タカシたちの入学を祝ってパーティですね!」
 真人が言った。わたしも、俺も参加したい、という声があちこちからあがった。
 一行は空京への道すがら、早くもパーティの相談を始めていた。

担当マスターより

▼担当マスター

青猫格子

▼マスターコメント

シナリオへのご参加ありがとうございました。
個性的なアクションが多く、楽しく執筆できました。
中には思っていた行動と違う行動をとっている場合があるかもしれません。
マスターの私もまだ不慣れな部分があると思いますので、皆様とともに成長していければと思います。
それではまた、別のシナリオにてお会いしましょう。