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リアクション
・戦況確認
ヒラニプラ側の遺跡、地下一階。
「どうにか凌げましたね」
小次郎が声を漏らした。とはいえ、まだ安堵する、とまではいかない。
『各班、現状はどうですか?』
現在、こちらの遺跡はいくつかの班に分かれて行動している。地下二階より下は何かの『製造所』のようなエリアであり、それぞれ目的に応じて探索を行う。
「先行組は地下三階まで到達したようです。機甲化兵は、このフロアほどではないとはいえ、数は相当なものだと報告もあります」
「こんなのがまだいるのね」
ローザマリアが周囲を見渡す。煙を上げ、停止した機甲化兵の残骸が辺り一面に転がっている。
「先程はこちらの人数が多かったからどうにかなったが、この先はそうもいかないであろうな」
グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)が言う。連携した事により、十体以上の機甲化兵をなんとか倒せたものの、本来であれば一体を相手にするのでさえ容易ではないのだ。
「しかも、最初からみんな結構力を使ってるからねぇ。前の『研究所』にあった魔力融合デバイスとかいう試作型兵器がここにもあれば、かなり楽になるんだけど……」
と、瑠樹。
「探しにいきつつ追わないとねぇ」
「りゅーき、無理はダメですよ。いくら浅いからって、怪我をした身なんですから」
マティエが動こうとする瑠樹を制止する。
二人は本隊より先に下層へと行こうとしたのだが、先程の戦闘で軽いとはいえ、傷を負っていた。そのため後方支援に回る事にしたのだった。
「ヒールとSPリチャージは施したが、体力ばかりはどうしようもないからな。それに、これまで下層に行くほど敵が強くなったというのなら、尚更無理は出来ない」
治療に当たったクレアも、この先の事を懸念していた。
「それに、安全の確保はどの階層でも重要ですね」
同じく医療班の彩蓮も、調査チームの安全を優先すべきと考えている。そのために、退路の確保を状況確認時に行った。
地下一階にて、後発組の準備が完全に整い、合流しようと踏み出そうとした。
その時である。
「小次郎さん、まだ敵がいます!」
リースが禁猟区に何者かが引っ掛かるのを感じ取った。
「――まだ動きますか!!」
ギギギ、と機械の動く音が聞こえてくる。
完全に破壊したと思った機甲化兵のうち、二体が再起動したのである。
即座にライザが先の先で一方目がけて飛び込んでいき、アルティマ・トゥーレを打ち込む。
次いで上杉 菊(うえすぎ・きく)がヒロイックアサルトにより強化された雷術を浴びせる。ただ、核である人工機晶石にダメージは届いていないようだった。
(あれを壊さないとまた動くかもしれないのね)
機甲化兵のダメージも相当だったためか、人工機晶石が視認出来た。
ローザマリアはそこに向けてスナイパーライフルでとどめの一撃を撃つ。
残りは一体。
彩蓮がぎこちなく動く機甲化兵の関節部に銃弾を撃ち込む。その隙にパートナーである黒い甲冑、デュランダル・ウォルボルフ(でゅらんだる・うぉるぼるふ)が接近し、轟雷閃を打ち込む。
沈黙。
静かに彩蓮がその一体に近付き、中の人工機晶石を抜き取る。戦闘が終わり、デュランダルはいつの間にか光学迷彩で姿を消していた。
これで終わったかに思えた。しかし、
「クレア様、まだいます!」
ハンス・ティーレマン(はんす・てぃーれまん)がまだ敵が残っている事を察知する。
「しぶといものだな」
動き出した機甲化兵に対し、クレアがライトニングブラストを放つ。それだけで動きは止まった。
「どうやら完全に核を破壊しないといけないようだな」
既に人工機晶石にヒビは入っていたが、彼女は念のためにと、とどめを指す。
これで、本当に機甲化兵の全てが動きを止めた。
「念のため、手は打っておきましょう」
その場を離れる前に、一行が手分けして人工機晶石の除去を行った。ほとんどのものは傷付いていたが、中には無事なものもある。
「これは何かに使えないものかねぇ?」
「適合すれば、魔力融合型デバイスのバッテリーに使えるかもしれません」
瑠樹の疑問に彩蓮が応じた。事前にデータベースの情報を携帯電話に記録しており、ここでそれを参照したのだ。
「では行きましょう。何やら厄介な事が起こってるようですからね」
小次郎がある異変に気付いていた。
無線の電波の入りが悪くなっており、状況が聞き取りにくくなっていたのだ。
「ただの電波障害……というわけではなさそうです」