天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

WahnsinnigWelt…感情を糧にする世界

リアクション公開中!

WahnsinnigWelt…感情を糧にする世界

リアクション


第10章 新たな魂と誕生 story1

「まったくしつこいわね、どこまで追ってくる気なの!?」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)たちは不老不死を手に入れたい欲望にかられている魔女に追われ、息を切らせながら森の中を逃げ惑う。
「その2人を置いて行かないと、あんたらを魔法の餌食にするからねっ」
「はぁ〜。そんなにギャースカ怒ると・・・お肌に皺が出来るわよ。独り身で独身の魔女さん♪」
 口元に手を当ててオルベール・ルシフェリア(おるべーる・るしふぇりあ)は可笑しそうに笑う。
 彼女としては挑発したつもりはなく、つい直球で言葉をぶつけてしまっただけだ。
「なぁんですってぇえ!?もう簡便出来ないわっ!!」
「おい・・・女悪魔。相手を怒らせてどうする・・・。少しは守る側のことも考えたらどうだ?」
「え〜?お世辞言っても、逃がしてくれるわけじゃないし。それに、守られるだけって柄じゃないのよね」
 苛ついたように渋面を浮かべる蒼灯 鴉(そうひ・からす)に、軽口調でへらっと言い、フォースフィールドで雷術を弾き飛ばす。
「たった1撃防いだだけで、守りはいらないなんて・・・笑わせないでくれない?雷の雨に撃たれちゃいなさい!」
「フフッ。魔法なんて、撃てなきゃ意味ないのよ?」
 サイコキネシスの念力で魔女の服の袖をぐいっとひっぱる。
「―・・・きゃうっ」
 オルベールに向けた手元が狂い、あさっての方向に雷がすっ飛んでいく。
「そんなので避けきったと思っているの?」
 むしろ彼女は劣りだというふうに言い、木々の影に潜んでいたもう1人の魔女がサンダーブラストを放つ。
「ミラージュでごまかそうとしても無駄よ!」
「(くぅっ、殺気看破でも限界があるわね)」
 幻影でも手ごたえがなければ、いずればれてしまう。
 念力を使って術の妨害をしようにも、1人に集中するとまた別の魔女が狙ってくるかもしれない。
「無駄な手間をかけさせるな・・・」
 次ぎの手に迷い悩む彼女を鴉が突き飛ばし、草むらへ逃がす。
「きゃあっ!イッたぁ〜い・・・。このバカラス!覚えてなさいよ〜っ」
「その腕では、もう狙えないだろ?」
 抗議の声を上げる彼女を無視し、ダガー・タランチュラの刃を魔女の腕に斬りつけ術を封じる。
「でも足はまだ動くのよねぇ?一緒に踊りましょう〜」
 師王 アスカ(しおう・あすか)はファイアーヒールを履いた足で踊り、ターゲットの足を銃弾で狙う。
「草陰で私の足元が見えないわよねぇ〜?避けながら鴉の刃もかわせるかしら〜」
「邪魔くさいわね〜。八つ裂きにするわよ、退きなさい!」
 魔女は脅してみるものの術を撃てず、痛みを堪えながらロッドで防ぐのが精一杯だ。
「あまり鴉に近寄ると、私が火傷させるわよぉ〜」
「ちっ、さっきから小賢しい技ばかり・・・」
 朱の飛沫が魔女の足を掠め、焼けつく苦痛に顔を歪ませる。
「(嫉妬の怒りか?フッ、やれやれ・・・恐ろしいものだ)」
 目配せするアスカにルーツ・アトマイス(るーつ・あとまいす)が小さく頷く。
「傷つきたくなければ、眠っていろ」
 その身を蝕む妄執でウィザードに幻覚を見せ、突然の恐怖に喚く彼女たちをヒプノシスで眠らせる。
 ナイトメア・ハッグをくらった魔女どもがパタンッと倒れる。
「ルーツ、まだ魔女が近くに潜んでいるわ〜っ」
「何・・・?くっ」
 ビュァアッ。
 イナンナの加護で察知したアスカの声に、突風のように襲撃する嵐のフラワシを間髪避ける。
「フラワシ!?―・・・コンジューラか?となると幻覚は効かないか・・・」
 マインドシールドでガードしている相手に、催眠術をかける隙を探す。
「ここで仲良く全滅しちゃえば?きゃはははっ」
「どうする、アスカ」
「困ったわね〜。追い払おうにも、銃声で寄ってきちゃうし」
「ひとまずアルファと、その縁者たちを逃がさないとな」
 紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は森の中で、息を潜める魔女たちの手から、どう突破しようか考える。
「あまり気づけないようにするって、結構難しいわねぇ〜」
「かといって、2人を十天君たちのところに、連れ戻されるわけにはいかないじゃないか」
 甘いことを言っている場合じゃないと、御剣 紫音(みつるぎ・しおん)は銃撃を躊躇するアスカに言う。
「(俺たちに魔女の目を向けるしかないな。ちょっと相手を傷つけることになるし、こっちも相当くらうかもしれない。―・・・ここまで来て、今更覚悟がどうとか確認するまでもないだろ?)」
「(無傷で何かを得られるなら。それこそ、この世に争いもなにもないはずだ)」
 紫音のテレパシーに頷き、仲間たちの盾となるために唯斗は臆せず進む。
「各自必須アイテムの安全確保、警護対象を申告してくれ」
「引き付け役の俺が、太極器を持っているわけにはいかないな。エクス、預かっていてくれ」
 夏侯 淵(かこう・えん)の声に唯斗は魔女の攻撃で壊されないように、エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)に渡す。
「分かった、太極器は必ず守り通す。心配せずに突き進め!」
「いったん2手に別れて魔女を引き離さないとな。木の枝にでも目印を頼む」
「はい、兄さん!」
 紫月 睡蓮(しづき・すいれん)は目印用の蛍光リボンを、がさごそと荷物の中から探す。
「森内を飛行可能な乗物が無い者はいるか?」
「目立たないように飛べるものはないですね・・・。淵さんは何かありますか?」
「乗り物はないが、空飛ぶ魔法で低く飛ぶのはどうだ?」
「そうですね・・・。少なくとも、足跡をたどられる心配はなくなりますし」
「(しっかし、このおっさん・・・もう息切れてんじゃねえよ)」
 立ち止まられるのも面倒だと鴉は、疲れきっているおじさんを見る。
「えっと・・・ラスコットさんだったわよね?交換条件の話は淵から聞いたわ、了解よ。本当にありがとう、よろしく御願いします」
「―・・・はぁ〜っ、・・・え?何かなりゆきなんだけどな・・・」
 礼を言うルカルカの話をまともに聞ける状態じゃなく、ぜぇぜぇと息切れしている。
「その足じゃ追いつかれちゃうわ、淵の後ろに乗って」
「(潰れるんじゃないのか?・・・・・・俺が運んだほうがよさそうだが)」
「ラスコット殿、俺の後ろに・・・」
 鴉がおっさんを担いでやろうか考えているのに気づき、淵は後ろを振り返り、今にも倒れそうな彼を背負おうとする。
「いや〜、潰れちゃうんじゃないか?」
「それくらいで潰れるほど軟ではない。―・・・うっ、ぐあっ!?」
 彼との体格差であっけなくべちゃっと地面に突っ伏す。
「ほ〜ら・・・やっぱり・・・・・・」
「はぁ・・・俺が運んでやる」
「え〜、何か荷物みたいな運ばれかたなんだけど?」
「同じようなものだろ・・・」
 もう走れなさそうなラスコットを鴉が脇に抱える。
「まだ幻影を見せる森の領域か・・・。(魔女の襲撃に加え、この視界の悪さ・・・。幻影に襲われでもしたらひとたまりもないな)」
 視界を惑わそうとする香りにエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は顔を顰める。
「クマラ、アルファさんから離れるなよ」
「うん!―・・・アルファちゃん、オイラの手に掴まって」
「―・・・はいっ」
 差し出されたクマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)の手を掴む。
「草ばかりで何も見えないよ・・・」
 ガサガサと葉音を立てて進む仲間の後を追う。
「こっちですよ、クマラさん」
「皆、進むの早いよー。待って〜」
 草花の間から見える睡蓮の蛍光リボンの僅かな明りを見つける。
「空からやけに明るいね・・・。あまり光が届かないはずなのに」
「だんだん眩しくなっているような気がしませんか?何か光が降ってくるような感じがします・・・」
「降る・・・光・・・・・・?―・・・伏せろーーーっ!!」
 睡蓮の呟きにエースは空を見上げ大声で叫んだ。
 ズガガガガンッ。
 地面に伏せ崩落する空の光線をかわす。
「逃げ回るなら、手足の自由を奪ってやるわよ?」
「ドルイドか・・・。面倒なやつが追ってきたな」
「行くわよ、ルーツ!」
「了解だ」
 これ以上の追跡を許すものかと、アスカと共にドルイドの両足を狙う。
「そこの白髪!何、女言葉使っているのよ?オカマなわけ〜?きっも〜い♪」
「わっ私はオカマなんかじゃないわぁ〜。ただの男装よ!」
「え〜信じられない〜」
「くぅ〜っ、何かムカツクわぁ〜」
「相手の安っぽい挑発に乗るな。無駄に気を荒立てると隙を狙われるぞ」
「分かってるわよぉ、ルーツ・・・」
 平常心を保つように言われ、むぅっと頬を膨らませる。
「ともあれ、遠距離は狙いづらいな」
「そうね・・・広範囲の魔法がこんなにも厄介なんて思わなかったわ〜」
銃撃で足の自由を奪おうにも、相手の魔法に阻まれてそれも不可能…。
「(ウィザードはあのドルイドより離れた場所で、ルーツが眠らせたのよねぇ。他にディテクトエビルを使えるやつは近くにいなさそうね)」
 ならばどう攻めるべきか。
「私が隙を作るから狙ってちょうだい!」
「バカな子ね♪正面から来るなんて」
「あら、そうかしら〜?でも、私がどっちから来ているか分からないでしょ〜」
 相手の目を欺こうと2人は体勢を低くして草の中を走る。
「淵くん、私にかけた空飛ぶ魔法を解除して!」
 アスカは草むらからふわりと舞い上がり、飛行を解除された落下スピードでロッドを銃で防ぎ、相手の背を蹴り伏せる。
 ドガッ。
「くぁあっ」
 蹴られた衝撃で魔女が地面に倒れ込む。
「この女〜っ、病院送りにしてやるわ」
「それは無理だな」
「ぁあ、私のロッドが!」
 手から滑り落ちたロッドを拾おうとするが、ルーツに得物を踏まれてしまう。
「―・・・何故なら、お前はここで眠るからだ」
「催眠術・・・!?この私が、こんなやつらに負けるなんて・・・っ」
 彼女は悔しげに呻き、すやすやと寝息をたてる。
「倒せたのか、アスカ殿」
「えぇ、これ以上余計な体力を消耗したくないものねぇ〜。敵は魔女だけじゃないから、儀式を行う場所は森の中で探したほうがよさそうだわ」
 淵に空飛ぶ魔法をかけてもらい、アルファの魂を作り出す場所を探す。