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リアクション
12.このきなんのききになるかい? わたしきになります
【ノース】
――大樹
「おい、このツボすげーぜ! 持ってるだけでお金が集まるってよ!」
魔王 ベリアル(まおう・べりある)がしゃいでいた。知識的に幼稚である彼女は怪しいツボとか買わされそうになっていた。
「そのツボに封印して合体材料にしますわよ……」
と、中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)と脅し、
「なかなかいい剣ができそうです」
と、東 朱鷺(あずま・とき)が予想。
「コンゴトモヨロシク……?」
と、漆黒の ドレス(しっこくの・どれす)が賛同した。
ここに邪教の館とれんきの剣があればすぐさま悪魔合体するところだった。
「なんだよ……たく三人して」
ツボを戻して不貞腐れるベリアルだった。店主を無視して先に行く。
彼女たちの来ているのは国境から大分離れたノースの観光地。『ユグシールの大樹』の麓にいる。外周数キロに渡る大樹の周りには宿泊地と観光施設が並び、国内外から人を呼び込んでいた。
しかしながら、その施設の充実ぶりに反して今の人気は少ない気がする。閑古鳥が鳴き始めているのかもしれない。
「ユグシール。エリュシオンのユグドラシルに似た名前ですわね……」
パラミタ大陸エリュシオン地方にある世界樹のなを綾瀬は思い出す。また、神話にある世界樹の名前もまた同じだ。
ガイドには世界を支える大樹とある。パラミタの世界樹にはそれぞれ不思議な力がある。仮に、この大樹も同等のものとしたら、過去の事例によりこの樹を通じて元の世界に戻れるかもしれない。
そんな期待を綾瀬はしていた。だが、今では大樹の先に不安さえ感じる。目に頼らないゆえか、大樹のスケールが掴めいない。
大樹全体を見渡せる展望台へ登り、改めてその大きさを目の当たりにする。
朱鷺は現地ガイドらしき人を見つけて、大樹の話を訊いた。
「すみません。あの樹についてどのようなものか教えてくれないか?」
「ああいいぜ。ここも最近暇だからなんでも話してやるぜ」
久々の客だとガイドの男は嬉しそうに話を始めた。
大樹の名前は知っての通り、『ユグシールの大樹』。創世からあるとされる巨木であり、その根は地中深くに広く根を張っている。
世界崩壊現象で世界の殆どが消滅したにもかかわらず、ノースが多くの土地を残したのはこの大樹のおかげだ。まさに世界を支える樹ってことだ
外周は数キロに渡り。高さは4000メートルを超える。新葉は虹色に光り、食用としてノースの伝統料理にも使われるが、そのまま齧るとなかなか辛い。翼葉にできる種は香辛料に使われる。実は甘くうまいが、どちらも高級品だ。小瓶詰めの新芽なら土産屋に売っているから買って帰るといいぞ。
などと、大分長く話を聞かされた。よほど暇してたいのだろう。
「おっちゃん話なげーよ……」
ベリアルにはちょっとつまらようだが、虹色のアイスのことを聞いたら、売ってある店へと走っていった。
「まったくベリアルたら……」
苦笑する綾瀬の元に誰かが近づく。
コアトル・スネークアヴァターラ(こあとる・すねーくあう゛ぁたーら)、アールナーガ・スネークアヴァターラ(あーるなーが・すねーくあう゛ぁたーら)を抱えたローグ・キャスト(ろーぐ・きゃすと)だった。彼は二カ国間の行き来。テレパスを持っていない人たちに情報を渡して回る伝達役をしていた。
「ここにいたか……大分遠くにきたな」
「キミは蒼学のローグか。なんのようだ?」
と尋ねる朱鷺にローグが答える。
「国境の街でちょっとやばいことになっている。観光をやめて戻ってきてくれ」
「どのようなことになってますの?」
ローグが事態を告げる。
「アリサがノースの企業に攫われた」