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―アリスインゲート1―前編

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―アリスインゲート1―前編

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13.今置いてある左手の上方を御覧ください。そういうことです

【ノース】

――化学企業エレハイム・サイエンス社


 外見上はただの高層ビル。企業ビル。
 化学企業ということだが、大きな工場は別にあるらしく併設はされていない。ここでは事務経理及び科学研究がなされているのだろう。ビルの後ろには研究棟らしきところがある。もしかしたらあれが小工場なのかもしれない。
 さて、いつもどおり不在の御神楽 陽太(みかぐら・ようた)の説明は置いておいて、ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)御神楽 舞花(みかぐら・まいか)、そしてフィーア・レーヴェンツァーン(ふぃーあ・れーう゛ぇんつぁーん)がここESC本社の見学に来ていた。
 《精神感応》ネットワークの情報ではここでが人買いやら人体実験やらしているらしいとのことで、怪しさ抜群である。わざわざ社会科見学を装って潜入するにしても危険な気がする。
「あんたたちが見学者だね。あたしは案内役兼第三研究所所長のミナミ・ハンター。てきとうに案内するからついてきて」
 やる気のない女博士がくわえタバコに案内をする。
「ああそうそう。全棟禁煙だから火のつくタバコとかやめてね。ああ、あんたら子供は吸わないか――」
「なにをいうですぅ! これでもフィーアは一世紀は生きている大人ですぅ」
「つまりロリBABA? それとも波紋使い?」
「キ――ッ! フィーアは妖精なの! 100年くらい生きて当然なのですぅ!」
「そうかいそうかい。でもあんまおかしいこと言っていると、他の研究者たちに生きたまま開きにされるから用心しなよ」
 ミナミは冗談のつもりなのかもしれないが、三人には冗談には聞こえなかった。
「あの、ここはどんなものを作ってるんですか?」
 舞花はとにかく会社見学者らしく、話を訊くことにする。
「いろいろだね。化学って言ってもほとんどは軍事化学製品を中心に開発商品化してるのがうちだ。薬品、ナノマシーン、特殊繊維……最近の目玉商品だとベクター砲かな。戦艦が一瞬で消し飛ぶってもっぱら好評」
「そ、そうなんですか……」
「そういうあんたは何を作ってるんですぅ?」
 フィーアも尋ねる。
「おもちゃ」
「はぁ?」
「だからおもちゃだよ。あんたくらいなら遊ぶでしょう。お人形とか。あたしは小型の自律ロボットを主に開発しているんだよ。まあ新しいのを作るたびに、ロボットやらアンドロイドやらに技術転換されちまうんだけどね……ベクターの処理プログラムもあたしの作った『くまちゃん』のバイタルプログラムそのままだし。てなわけであたしの権限で見せられるのはおもちゃ開発だけだよ」
 人体実験を見せられるよりかはマシだが、これでは本当にただの会社見学になってしまいそうだ。
「そうだ、ミナミさん。パラミタってしってる?」
 ノーンが何気なしに聞いてみる。知らない人には不可思議なワードでしかないが、
「あ〜誰か言ってたような――たしか、第四研究所のやつがそんな世界の話してた気がする。あと、変なもの持ち込んできた奴とか、運ばれてきた奴も同じ事を……おっと」
 ミナミは突如そこで言葉を区切った。近距離転移装置のゲートをくぐったすぐの事だった。
「さて、ついたよ。ここがあたしの研究所兼工場だよ」
 三人はメカニカルにグロテスクな皮のない『くまちゃん』が並び向いている凄絶な光景を目の当たりにした。
「ああ、そうそう。変な行動しないでおいてね。立ち入り禁止区域に入って帰れなくなっても知らないから。たとえ霊体(スペクター)だとしても出られる保証がないから」