リアクション
「お、見張りご苦労! ちゃんとやってた?」
ルカルカ、見張り役のハツネに敬礼。
「やってたわよぉ、ちゃんと」
噴水の縁に腰掛けるハツネが頬をふくらませた。よほど一般人の護衛が暇だったのだろう。
あれから列車では特に大きなことはなかった。街の自警団が列車の様子を見に来たり、野次馬が覗きに来たり、とそんなところだった。
「ほんとつまんないのー。みんな楽しそうなのに……」
《精神感応》から観光だの料理だの賭博だの声が聞こえてくる。お留守番役は異世界をエンジョイしている声を聞いて気が気でならない。
なので《精神感応》でαネットに繋ぐのをしばし辞めていた。特に報告することもないし。
「それじゃ、これで暇つぶしするといいわ」
ルカルカが投げた指輪をハツネに投げ渡す。
「なにこれ?」
「【AirPAD】この世界の通信端末」
「そうなの――」
指にはめて起動。遊べるものはないかと考えると幾つかの内蔵ゲームが候補に出た。
「使い方がわからない時はダリルにでも訊けばいいから。ま、本人はこれ使ってどっかに繋ごうと必死だけど」
「ふーん。あ、そういえばなの」
ハツネがふと思い出す。
「野次馬に混じって、不審なのがいたの。手は出してきてないから鍬次郎が睨み効かしたらどっかに行っちゃったけど……」
「そうなの? ま、あっちのアングラで誘拐とか有ってるみたいだし、その関係じゃない? そうだ、ちゃんとお留守番してたいい子にお知らせ」
なんだろうと、首をかしげるハツネにルカルカが聞かせる。まだこれは予想でしかないが――
「電車男、生きてたみたいよ」
「……くすくす、そうなの」