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―アリスインゲート1―前編

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―アリスインゲート1―前編

リアクション


14.迷子しているだけだと話が進まないから、拉致るしかないじゃない!
【グリーク】

「これくらい下がっておけばいいでしょうか……あれ?」
 辺りを見回わす。
「……誰もいない」
 アリサは混乱した。
 確かに下がれとは言ったが、アンダーグラウンドを抜けるまでしろとは言っていない。と言うか、道も全くわからないのによく迷路のような場所を短時間で通り抜けたものだ。
「やっとみつけた」
 柊 真司(ひいらぎ・しんじ)たちがアリサを見つけて寄ってくる。《精神感応》で迷子発言していたアリサを探していたのだろう。
「真司さんどうしたのですか?」
「どうしたも、おまえがアングラで迷子って聞いたから探しに来てやったんだが……アングラにすらいなかったのか」
「土地名すら定かでないのが迷子の鉄則です」
 とヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)が力説し、
「そうそう。方角はもちろん、右も左も区別できないのよ」
 などと、フレリア・アルカトル(ふれりあ・あるかとる)が補足する。
 自慢気な二人だが全く自慢できない。
 ちなみに言っておくが、アリサは地図も読めないし、携帯のナビゲート機能とか使わせても無駄ですから。
 そんな彼女たちが迷子にならない唯一の方法は『人について行く』ということなのだが、勝手に何処かへ歩き回るアリサにこの策が頭にあるのか怪しい。
「あれ?何かお二人の雰囲気が違いますね。……髪切った?」
 「切ってない切ってない」と手を否定方向に振るフレリア。
「染めたのよ。銀から金髪にね。私が」
 リーラ・タイルヒュン(りーら・たいるひゅん)が【ヘアスプレー】を見せる。
 ヴェルリアとフレリアの長髪が金色に変わり、目はカラーコンタクトで緑に変わっていた。
 長髪の金髪碧眼そして天御柱の制服。誰かに似ている気がする。
「もしかして、私?」
「そうですよ〜。どうです? 似てますか?」
 ヴェルリアが回って見せる。容姿はよく似ているといえる。違いがあるとすれば背丈と制服の色の二点だろうか。三姉妹と言われればそう思えてくる。
「大変だったんだからね。二人の髪が長いし多いし……おかげで私の両手はGOLDHAND」
 テカテカにメッキされた両手を見せるリーラ。
「どうも、俺らを狙っている奴らが居るって話があるからな……特に戦闘技能のない一般人とアリサは危ないだろうし」
 そう真司は言ったが、列車で待機している一般人にはハツネたちが付いているので心配はしていない。
 ターゲットとされやすいのは非力かつ一人でうろつき回るアリサが最もだろう。現に、一度拉致されかけている実績もある。
「そうね、ここは一度列車に戻りましょう」
 フレリアの提案に真司が頷く。
「そうだな……ミネルヴァ軍施設に直接行くのもいいんだが、ここは一旦戻るか」
 真司が振り返る。そこにはリーラだけが居た。
 三人足りない。
「あいつらは?」
「――あれ?」
 二人が目を離したの一時――三秒もないうちに三人が消えた。
 真司は呟いた。
「やっぱり迷子になったか……」