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【祓魔師】人であり、人でなき者に取り込まれた灼熱の赤き炎

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【祓魔師】人であり、人でなき者に取り込まれた灼熱の赤き炎

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第4章 外法の魔術Story3

 章でビフロンスの意識を表に出そうと試みるが、それらしい様子はない。
「玉ちゃん。中にいるのを刺激するより、器のほうの力を削いだほうがよいかな?」
「うーむ。離れた時のことを考えるとなんとも言えぬ。この状況を見るからに、取り込んでいる者も弱体化させたほうがよいだろう」
「僕たちもそうしてるんだけど…。どれもまだ中の魔性らしき感じはないね。(もしかして、無理やり憑依させたからなのかな…)」
 一方的な魔性の干渉による憑依でも精神を蝕まれる。
 なのに、リオンの祓魔術をまともにくらったやつ以外は、平然と活動しているのだ。
 不可視化されて姿は見えなくなってしまっているが、ルルゥの指先の示す位置があちこち変わっている。
 さらに…術を受ける前の相手も、問題なく動いているように見えた。
 憑いた魔性が器の能力を使うのは北都たちも授業を通して知っている。
 今回の相手はその逆だ。
 例のマイナスの力を持った魔力によるもので、祓魔術に対する抵抗力も強くなったのかもしれない。
 ビフロンスが下級の魔性であり、メールの情報では無理やり取り込んだ状態は中級能力。
 “なるほどね、これは黒フードの者が、なんらかの手段を用いたんだ。”
 口に出さずそう考え、レイカの視線に合わせてそのポイントを見据える。
「北都さん、確実な者から…」
「そうだね」
 他の2人が月夜や玉藻たちに気を取られている隙に、さっきから動いていないらしい者を狙うことにした。
 ビフロンスのSPと体力の低下のせいか、満足に能力が引き出せないようだ。
「あたしも協力するよ」
「それはそうとコレットさん、一輝さんは?」
「オヤブンは麓で待機しているよ」
 彼はコレット・パームラズ(これっと・ぱーむらず)たちを運んだ後、呪いなどにかかってしまわないように待機する予定だった。
 もはや客待ちのタクシーのお兄さん状態だ。
「へぇー…そうなんだ?」
「うん、今回はそうしようってオヤブンと話してたの」
「話はその辺にしておこうぜ。手負いの相手だからといって、油断は出来ないからな」
 姿は見えないがフードの奥に見える紅の瞳は、ソーマたちをじっと見ている。
 それは睨み殺してきそうなほど怒りに満ちた色だった。
「ん?何か言ってるような気がするけど…」
「術…か!?俺の後ろに来い」
 ソーマが北都とリオンを下がらせたのと同時に、空気が急に焼けつくように熱くなった。
 サラマンダーの力では熱を和らげきることは難しく、肌がヒリヒリと痛む。
「(新しい宝石を試すにはちょうどよい機会ですね)」
 邪悪な心を持つ器の者にだけ効果を与えられるか、レイカは結界石…神籬の力を引き出し、気配のポイントの周りに境界線を敷く。
 気配はふらふらと位置を変えながら、光の線から出てこちらへ近づいている。
「もう一息ですね…。コレットさん、哀切の章を」
 コレットはレイカの声に応じ、彼女を守るように光の球体に包み、守りの輝きを霧状に散らし姿なき者の抵抗力を削ぐ。
「あなた…ダレ?なぜ…いる…の?」
「ビフロンスの声かな」
「ええ、おそらくは…。こちらはほぼ方が付きましたけど、あちらが奪いにくるかもしれません。ここを頼みましたよ」
 そう告げるとレイカはルルゥたちのほうへ駆けていった。



「ボクのクローリスさんの香りの効果が切れるかも…」
「フフッ、次は俺の番かな。クローリスくん、いつもの香りを頼むよ」
 クリストファーは屈んで少女のウェーブのかかった薄いピンク色の髪を撫でる。
「えー…。おにーちゃん、うちにお願いしすぎじゃない?」
「うーん…、これも大事なことだからね」
 困り顔しつつも笑顔を崩さず、怒り顔をするクローリスに言う。
「はぁ〜まったく。そんなに頼むなら、使ってあげなくもないけど!」
「いつもありがとう」
「ちょ、ちょっとニヤニヤしてんじゃないわよっ。どーしてもって言うからなんだからね」
「俺はいつもこんな感じなんだけどね」
 照れているのか、顔を真っ赤にして怒鳴る少女を見下ろし、やっぱり怒っても可愛いね…と心の中で思った。
 呪いの抵抗力をもらうためとはいえ、この子に火が飛んでこないか心配だ。
 その思いを読み取ったクローリスが眉を吊り上げ…。
「うちは、おにーちゃんのつかいまなの。きずをおっても、せいしんりょくをもらってなおるのよ。そんなの…、いちいちきにしてんじゃないわよっ」
 炎の術で傷つかないかなんて、気にしないでと言い放つ。
「そんな物みたいな言い方は好きじゃないし、……悲しいな。こんな可愛い子が傷ついて、平気でいられる俺じゃないからね」
 道具のように扱いたくないし、そのつもりもない。
 使い魔のクローリスには理解出来ない…という部分かもしれないが、愛らしい少女を盾にしたりはしたくないのだ。
「なっ!!?う、うちをかわいいだなんていうんじゃないわよっ」
「また怒らせてしまったかな?フフ…すまないね。たくさんお話したいところだけど…、さっきのこと頼めるかな?」
「ん〜もぅっ。やればいいんでしょ!」
 プイッとそっぽを向き、クローリスは可愛らしいダンスを踊りながら香りを撒く。
「わー…クローリスの花の香りって、いい匂いよね」
 鼻をくすぐる甘い香りに、月夜はほんわかとした顔になる。
「月夜、香りを楽しんでいる場合じゃないって」
「む、分かってる。…玉ちゃん」
「(やれやれ、何事も根気が大事のようだな)」
 まるで効いてないわけでもないし、月夜のためにやるか…と息をつく。
 玉藻の裁きの章による酸の雨を見届けると、すぐさま光の嵐で姿なき者を退かせる。
「そこからでは命中させにくいじゃろう?妾が持ち上げてやるかのぅ」
 草薙羽純は夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)の後ろへ回り、抱きつくように抱えて飛ぶ。
「ルルゥは気配を教えればいいんだよね?」
「そうじゃ、頼んだぞ」
「はぁ〜い!!」
「妾たちは章使いの詠唱の時間稼ぎでもするかのぅ」
「私もお手伝いしますよ」
 エレメンタルケイジに触れたレイカは、藍色の宝石の力を草薙羽純に与える。
「おおっ、早くなったのじゃ」
「儂を落とすなよ、羽純」
「そなたが派手に動かなければじゃな」
「羽純おねーちゃん、上にいるんだよ!」
「む…。甚五郎の護符を投げるのじゃ」
「了解したっ」
 パートナーと共に気配の元へ接近し、祓魔の護符を投げつける。
 そのポイントを狙い、月夜と玉藻は器のほうへ祓魔術のダメージを与えてやる。
「くそぅっ、こいつの呪いにかからないんて、どういうこったぁーっ。…あいつらかぁああ!?」
 どちらの性別とも区別のつかない者は、クローリスと一緒にいるクリストファーたちを見下ろし、怒声を上げて火炎爆発を起こす。
「―………っ。(ブリザードだけでは厳しいようじゃ)」
 加速の効果でどうにか間に合ったが、肌に火傷を負ってしまう。
「へっ、焼け散れェエエァアアッ。―…な、ナンだ…トォオッ!?」
「もう、うたせないよ」
 守りの盾を霧状に変化させ、詠唱を止めたのはコレットだった。
「むー、お山の噴火とか絶対ダメなんだからね。やめさせるんだよ!」
 地面に降りたルルゥは、顔をムッとさせて気配のほうを見る。
「あれれ、人っぽい格好になったよ?」
 不可視化してた者の姿が見え、黒フードの者にルルゥは目を丸くする。
「ビフロンスが離れたようじゃな」
 草薙羽純は離れていく気配に視線を向ける。
「ざけんな、アレを逃すわけにはいかねェエァアアアッ」
「また利用する気ですか。それはさせませんよ」
 瞬間的に速度を加速させたレイカは、祓魔の護符を彼の足に投げつける。
「今です、コレットさん」
「罪に惑わされし魔の子らよ、その手にせし罪は偽りの力。せめてあたしたちの声が聞こえるまでは、その手を休め罪を見続けなさい」
「……ちくしょうっ、邪魔すんなガキが!」
 コレットの守りの祓魔術に阻まれ、彼女を憎々しげに睨みつけた。
「くそ、くそぉ、くそぉおおっ」
 ギャアギャア喚き散らし、逃走しようとするが…。
 クリスティーのヒュプノスの声で眠らされ、それも出来なかった。
 彼らが眠っている間、クリスティーは草薙羽純たちの傷を命のうねりで治してあげた。
「ジュースたくさんつくったよ、クリスティーくん」
「ありがとうね、クローリスさん」
 嬉しそうにぴょんぴょん跳ねる少女の手から、解毒ドリンクを受け取って配る。
「さて。答えてもらわねばならんことが、山ほどあるからな」
 甚五郎は腕組をして“何から聞いてやろうか…”と考えながら、眠らされている者たちを見下ろした。