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―アリスインゲート2―

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―アリスインゲート2―

リアクション

 【第三世界】を救う。という提言を掲げている者は他にもいる。彼らもまた、この世界のコンピューターを使いその可能性を模索していた。
 この世界のコンピューターは量子コンピューターが主であり、外世界の演算力の比ではない。bit単位の演算ではなくフォトニックによる量子ビットqubitの単位を用いて演算がなされる。それは乗数的な違いとして出てくる。
 そしてこれらのコンピューターの中でも特に高演算力を誇る自立型PCの存在がある。そのコンピューターとの接続を図るためルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は軍事飛行訓練場の演算室を借りていた。
<<この電話番号はアナタのような非市民には現在使われておりません。ピーっと言う発信音がなる前にその糞詰まりイヤーホールと節穴アイズをかっぽじって、二度とこの電話番号におかけにならないよう――>>
「おふざけはやめてもらうかRAR.……そんなジョークプログラムをいつ入れた」
<<もう、しつこい方ですね元市民ダリル。ラブコールは有難いですが、いろんな端末から断続的に通信やメールを大量に送らないでいただけますか?>>
「うわ……なにそれストーカー……」
 ルカルカは思わず一歩退いた。
「……たかが毎分6000通だ。はぐらさないでくれるかRAR.」
 「いやそれもうストーカー行為も脅迫も通り越してテロよね? 電子テロよね!? 恋人ほったらかして電子的存在に何熱烈なラブコールしてるのよ!?」とツッコミたかったがルカルカは口を噤んだ。でないと話が進まない。
「端的に聞くぞRAR.、この世界を救うことが可能か聞きたい。聞きたいことはすでにメールに書いていたはずだ」
<<メールは全て迷惑メール対策ツールで処分致しました。っと言いたいところですがそれらに関してお答え致しましょう。結論から言えばどれも不可能です>>
 ダリルが対策を列挙してその理由を尋ねる。
「アリサの能力を使って世界同士を固定連結することはできるか」
<<そのもののゲート能力によってあなた達が行き来できるのは事実でしょうが、こちらの人々が行き来できるとは過去のゲートの事例から言ってその限りではありません。仮に彼女を生贄に時空間連結固定化に成功しても、世界の崩壊は止まることはなく、この世界自体を向こうの世界に顕現させるのも無理です>>
「向こうにある空虚になった空間を埋める方法でもか」
 シボラの一部にナラカに没した空間がある。それを利用しようと言う。
<<こちらの物質が向こうで物質として存在できない限りどこを利用しても代わりません。出来たとして、この世界を顕現することのできるだけの広さが必要となります。さらに物質としての存在可能にするために膨大なエネルギーを必要とするでしょう>>
「ではこの世界をパラミタにて電子的存在化に落としこみ、すべての人々をエンコードすることで存在の消失を防ぐことはどうだ」
<<物質として存在できないならデータとして存続させるのは可能でしょうが、これをあなた方の世界で可能にできるとは思えません。人間の脳の容量を一説の140Tbitの容量として考えると、この世界にいる約3億人×140Tbitの容量の電子領域の確保が必要となります。しかしニューロンリンクを再現するにはこの乗数倍の容量と演算領域が必要となるでしょう。さらに人間一人の思考を再現するのに10MW(メガワット)の電力を必要とします。3億人となれば3EW(エクサワット)以上の電力が常に必要となります。これだけの容量と電力を常に確保できる設備がそちらの世界にありますか?>>
「10MWですら発電所1つ分……3億器の発電炉が必要か」
「なんか桁がおかしいことになってるんだけど。エクサって10の何乗だっけ?」
 ルカルカの問に答えるとエクサは10の18乗だ。
<<ただしこれは人だけを保存した場合です。世界を電子的に再現するとなれば、私のような量子コンピューターも全て再現することに成るでしょう。PC内にPCを再現するには再現するPC以上の演算力のあるPCが必要なのはわかりますよね?>>
「たとえ量子コンピューターがあってもこちらに存在する数以上の量子コンピューターが必要というわけか……無理だ……」
「なんかルカにはよくわからないけど、この世界が助かる方法ってないってわけ?」
<<現状ではありません。ですが、人々が助かる可能性は0ではありません>>
「やはり、人々を外世界に移住させる方法か?」
<<ただしその場合、あなた方の世界に及ぼされる影響を考慮しなければですが――>>