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ブラウニー達のサンタクロース業2023

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ブラウニー達のサンタクロース業2023
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リアクション


クリスマスの奇跡・1


 朝、ツァンダの蒼空学園付近。

「……(まさかこんな展開になるとは……確かにフィーとクリスマス過ごせたらいいとは思ったけど)」
 上條 優夏(かみじょう・ゆうか)は信じられぬ状況にちらりと隣のフィリーネ・カシオメイサ(ふぃりーね・かしおめいさ)を盗み見た。フィリーネと甘いクリスマスデートが出来たらいいなと昨夜思いつき先程、ある研究を閃きフィリーネに相談した結果が現在。
「優夏、どうしたの? あたしの提案最高でしょ? リア充を研究するなら実際に体験する方が早いって何か閃いたのよね♪(まさかあっさり受けてくれるなんてもしかして優夏と幸せに過ごしたいというあたしの願いを誰か叶えてくれたのかも)」
 フィリーネは優夏の視線に気付くなり声を弾ませた。こちらも優夏と同じ思いだ。二人に起きた奇跡は閃きだけでなくまだあった。それはこれから起きる出来事に。
「あぁ。この時期に溢れかえるリア充どもの心理を研究し、HIKIKOMORIとしてその勢いに飲まれん為にはどうすべきかを知るには最高や」
 優夏はこぼした研究をもう一度口にした。その研究を聞いたフィリーネが体験するのが一番とデートを提案したのだ。
「それじゃ、あたし達も普通のカップルさんとして楽しもう♪」
 フィリーネは早く楽しみたくて仕方が無い様子。研究は建前で本音はデートしたいなので。
「そやな。ともかくまずはどこいこかな。やっぱり定番のショッピングは外せんなぁ、フィーはどうしたい?」
 優夏は回るコースをあれこれ考え始める。研究とは思えないほどの楽しみよう。
「あたしは優夏と一緒ならどこでも楽しいわよ♪ 優夏がいいと思った所でいいから。それよりその定番というのはもしかして……」
 優夏の楽しみようにフィリーネも嬉しくなっていた。そもそもこうして一緒に何やかんやと話しているのも楽しい。それよりも気になるのは優夏が参考にしている資料だったり。
「ギャルゲーに決まってるやん」
 優夏は即答。さすがHIKIKOMORIの神となるべき男らしい。
「やっぱりね。本当、優夏らしいわ。でも楽しそう」
 フィリーネは可愛らしい笑みをこぼしたかと思ったらするりと優夏の腕に自分の腕を絡ませた。
「フィー?」
 突然のフィリーネの行動にドキッとする優夏。
「普通のカップルさんならこれぐらいして当然。でしょ?」
 フィリーネは悪戯な笑みを浮かべた。こちらの方が優夏よりも一枚も上手のようだ。
「……まぁ、そやな」
 優夏はあちらこちらで手を繋いだり腕を組んだりするカップルを見てとりあえず納得。
「さぁ、優夏、デートのエスコートお願い☆」
「あぁ」
 フィリーネと優夏はとにもかくにもデートいやリア充研究に繰り出した。

 まずはショッピングという様々な店々を見て回った。出来事が起きたのは一休みに入った小さな喫茶店。
「まさか優夏が来店百人目のお客様になるなんて凄いね♪」
 フィリーネは優夏の目の前のパフェを見て笑った。
「俺一人でこれを食べ切るのは無理や。フィー」
 優夏は溜息。何せ目の前にあるパフェは到底一人では食べ切れない大きさ。たまたま入った喫茶店でまさか記念サービスを受けるなど予想外。
「任せて、優夏」
 フィリーネはいざ参るとばかりにスプーンを構え、優夏と共にパフェに挑む。
 その最中
「なかなか美味しいわね(こうしてると完全にカップルにしか見えないわね♪)」
「確かに味は文句なしやけど量がヤバイ(まさかフィーと一緒のパフェをつつく事になるとは)」
 フィリーネと優夏はパフェの味を批評するも内心はこのいちゃついているとしか思えない外見に嬉しかったり。
 その後、食後の運動にと優夏のエスコートで温水プールに向かった。またそこでも予想外の出来事が発生して二人はますます楽しんだ。

 昼過ぎに到着した遊園地でも予想外の出来事が起きた。
「クリスマスサービス中なんて驚きね」
「そやな。ここまで来ると誰かの仕業のような気がする」
 フィリーネと優夏はサービスで乗り物料金半額をたっぷりと利用した。優夏は妙に自分達のデートが演出されている事が気になったり。
「まぁ、いいんじゃない。素敵な出来事なら大歓迎。でしょ?」
 フィリーネは全く気にしない。むしろ優夏と存分に過ごせて大感謝。
「確かに」
 優夏も深くは追求しない。何せフィリーネと同じ気持ちだから。
 そして、昼食を食べた後、優夏がデート最後にフィリーネをエスコートして乗ったのはカップル定番の観覧車。

 観覧車内。
 眼下に広がるはクリスマスに騒ぐ賑やかな街。

「遊園地でリア充の定番と言ったらこれや。夜景を見ながらが一番やろうけど悪くはないやろ」
 優夏は街を見下ろした後、隣のフィリーネに自信に満ちた顔を向けた。
「そうね」
 フィリーネは嬉しそうに眼下に広がる光景を楽しんだ。
 そして、観覧車があと少しで地上という所で
「優夏、今日はありがと、とっても楽しかったわよ」
 フィリーネは優夏の頬にキスをした。
 途端、優夏はびっくりして
「これは驚いているとはちゃうで。こ、これはリア充の心理知りたいからで」
 キスされた頬に手を当て顔赤く必死の弁解を口走った。
「ふふ」
 フィリーネは愛らしい笑みを浮かべながら優夏を見ていた。
 本日の優夏の研究成果は当然豊作であったのは言うまでもない。

 夕方、ツァンダ、神崎宅。

「この辺でいいかな」
 神崎 優(かんざき・ゆう)は壁や天井に飾る装飾品を設置しながら案配を神崎 零(かんざき・れい)に確認していた。
「良い感じ。次はツリーの飾り付けね。紫苑もしたくてたまらないみたい」
 零は手を叩きながらグッドを出した後、ツリーの前にある色鮮やかな飾りが入った箱を興味津々で覗いているクリスマス初めての愛娘神崎 紫苑(かんざき・しおん)を見て笑みをこぼした。
「だな」
 優も娘の様子に顔を少し綻ばせた。
 そして、夫婦は揃って愛娘と共にツリーの飾り付けを始める。
「ほら、綺麗だろ」
 優は飾る物を出しては紫苑に見せてからツリーに飾っていく。
「紫苑、ふわふわ」
 そう言いながら零は雪に見立てた綿を紫苑の小さな手に触れさせる。
「♪♪」
 紫苑は撫で撫でと感触を楽しんだ後、小さな手できゅっと握り締めた。
「ツリーに雪を降らせようね」
 零は綿の飾り付けをして見せる。紫苑はじっと母親のやり方を見て覚えた後、背中の翼で飛んで握り締めていた雪をちょこんと置いた。握ったせいで明らかに綿が丸まってしまっているが、両親にとってはどうでもいい。
「上手、上手」
 零は嬉しそうに手を叩いた。こうして家族で過ごす事が大事だから。
 ちょっとしたお手伝いをした後、紫苑は楽しそうに両親の作業を飽きずに見ていた。
「スイッチを入れるともっと綺麗になるからね」
 零は紫苑に話しかけながら電飾を丁寧に飾り付た。
 この間、紫苑は最後の飾りのてっぺんに飾る星に興味を向け目を輝かせながらペチペチと叩いていた。なぜなら飾りの中で一番大きくて輝いていたから。
「後は星だけだ。紫苑が飾り付けるか」
 星と戯れる紫苑を見た優はそう言うなり、紫苑に星を持たせて抱き抱え、
「ツリーで一番大事な飾りだ」
 紫苑の手に自分の手を添えて二人の力で星をツリーに挿した。
「紫苑、ありがとう」
 零は役目を終え、下ろされた紫苑に笑みながら礼を言った。紫苑はにこにこと可愛い笑顔。
 飾り付けを終えたら後は楽しい夜を待つだけだ。

 夜。

「クリスマスケーキに料理。すっかりクリスマスだな」
 優は零と一緒に手作りのケーキやクリスマス料理を並べていた。
「そうね。紫苑は食べる事よりもあっちの方に夢中ね」
 料理を並べながら零は飾りやツリーに夢中の紫苑を見て笑う。
「あぁ、電飾のスイッチを入れてからずっとツリーの前から離れないな」
 優も微笑ましげに娘の様子を見ている。
 夜になり電飾を点灯させるなり紫苑は目を輝かせてますますきらめく飾りとツリーの虜となりツリーの周りを飛んだり座って見下ろしたりと自分なりにクリスマスを楽しんでいた。
「優、雪が」
 ふと零はいつの間にか降り出した雪に気付いた。
「朝はやんでいたのにな……ほら、紫苑。雪だ」
 優も雪に気付くなりツリーの前に座る紫苑を抱き抱え、窓の所へ連れて行く。紫苑に風邪を引かせてはいけないので窓は開けない。そのため紫苑は窓に当たる雪を窓越しに小さな指でなぞっている。
「今夜はホワイトクリスマスね。こんな素敵な日を一緒に迎える事が出来て幸せ」
 零は雪を眺めてから愛娘の頭を撫でながら大好きな旦那様に微笑んだ。零はしっかりと家族で過ごす幸せを噛み締めていた。
「……それは俺もだ」
 優も娘の小さな手を握り締めながら妻に言った。最愛の人に囲まれたこの幸せがいつまでも続きますようにと願いながら。
「夕食を終えたら三人でクリスマスイルミネーションを観に行こうね」
 零は隣の家族に振り返り、食事後のお出掛けを提案。
「そうだな。紫苑も大喜びだ……紫苑、ツリーよりももっと凄い物が見られるからな」
 優は零の提案に賛成した後、紫苑に話しかけた。ツリーであれほど喜ぶなら町中がキラキラしている様を見ると大喜びになる事は容易に予想出来る。
「あちこちキラキラばかりだからね。雪が降って寒いから気を付けなきゃ」
 零は楽しいお出掛けを想像しながらも母親としての気遣いも忘れない。
 この後、夕食を終えた神崎家はしっかり防寒対策をしてからクリスマスイルミネーションを楽しむべく外出した。

 街。

 雪降る中、店々から流れてくる賑やかなクリスマスソングに耳を楽しませ、行き交う人々の幸せな様子にほっこりしながら優達はクリスマスイルミネーションを楽しみながら歩いていた。時々、好奇心旺盛な紫苑が興味を惹かれてあちこちに飛んで行こうとして困ったりもしたが。
 その中でも一番は巨大なツリーのイルミネーション。
「……綺麗ね」
「あぁ」
 あまりにも美しい姿に零と優は見上げた。紫苑も抱き抱えられながら楽しんでいた。
 その時、
「光の雨だ!」
「このイルミネーションにはこんな仕掛けはなかったはず」
「とっても温かい。何か幸せになる」
 ツリーから温かな光が雨のように降り付近にいた人々の頭上に降り注ぎ、驚きと笑顔を与えていた。まさか、ブラウニーの奇跡だとは誰も思わないだろう。
 それは優達も同じだった。
「……いい時に来たな」
「そうね。こんな素敵な出来事に出会えるなんて」
 零は見上げながらそっと優の腕に触れ寄り添い仲良く不思議な出来事を味わった。
 紫苑は降り注ぐキラキラに大喜びし、小さな手で光を掴んで広げては何も無い事に可愛らしく小首を傾げたりしていた。