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君が迎える冬至の祭

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君が迎える冬至の祭

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第1章 ドリームマッチ


「ハルカ、勝負ですわ!」

 びし、と『パラミタ・オールスターズ・コレクション』のカードを印籠のように掲げて、遊びに来たエリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)は、ハルカに会うなり勝負を挑んだ。
「ついに決着をつける日が来たのです」
 にこ、と笑って、ハルカもノリノリで答える。
 先日の大会では、二人は対戦できずに終わったのだ。
「わたくしの、蒼空学園の精鋭達がお相手いたしますわ。
 勝った方が、この後のカフェの代金を奢るということでいかがかしら」
「望むところなのです」

 かくして、お茶とケーキ代を賭けた一戦が始まった。



エリシア「それでは、第1ターン、参りますわ!
【天馬座のシュテルンリッター】! 2000ポイントの攻撃ですわよ」

ハルカ「眼鏡軍人さんのカードで、攻撃を2/3防御するのです」


残ライフ
エリシア8000 : ハルカ7467




ハルカ「第2ターンなのです。
 ハルカのカードは、百合園の名探偵さんで、2000回復するのです」

エリシア「わたくしは、【十二星華・獅子座】で3000ポイントの攻撃をしますわ!」


残ライフ
エリシア8000 : ハルカ6467




エリシア「第3ターンですわね!
【クイーン・ヴァンガード】で2000ポイントの攻撃ですわ!」

ハルカ「暴れん坊元龍騎士さんで、3000ポイントの攻撃をするのです」

エリシア「ふふふ! その攻撃は属性効果で2400ポイントにさせていただきますわ!
 同時にこちらの攻撃は3600となりますわね」

ハルカ「むむむ、まだまだなのです」


残ライフ
エリシア5600 : ハルカ4067




ハルカ「第4ターンなのです」

エリシア「来ましたわ! 
【豊穣と戦の女神】で5000ポイントの攻撃! とどめを刺させていただきますわね!」

ハルカ「まだなのです!
 目玉のパッフェルさんで、攻撃を3割減、3500ポイントにするのです」


残ライフ
エリシア5600 : ハルカ567


ハルカ「はわわわ、ハルカの残りライフが大変なのです!」



エリシア「第5ターン、ここで終わらせますわ!
【リア充爆発しろ】で3000ポイントの攻撃!」

ハルカ(相手の攻撃を3割減・2/3ターン)
「蒼空学園の校長先生で、3000ポイントのダメージです。
 属性効果で3600になるのです。
 ブルプルさんの攻撃は、属性で2400、更に目玉さん効果で、1680ポイントにするのです」

エリシア「減らしきれませんでしたわね。勝たせていただきますわ!」


残ライフ
エリシア2000 : ハルカK.O


ハルカ「負けちゃったのです」
エリシア「良い勝負でしたわ。



WINNER エリシア・ボック




「勝利の後のお茶は美味しいですわ」
「負けても美味しいです」
 クリスマス時期の、限定ケーキを頬張りながら、二人はザンスカールのカフェでおしゃべりに興じる。
 パートナーの、御神楽 陽太(みかぐら・ようた)の近況なども話題にした。
「そういえば、わたくしのパートナーの駄目人間が、もうすぐ父親になる予定ですのよ。
 全く、生意気ですわね」
 ふふ、と、エリシアが嬉しそうに言うと、赤ちゃん、と、ハルカの表情が輝く。
「素敵なのです。よーたさんもお元気です?」
「それはもう、五割増しデレっぷりですわね」
 夫婦仲睦まじい様子を思い出して、エリシアは肩を竦めた。


◇ ◇ ◇


「……っていう感じで、カードバトルの大会があってね。
 ハルカも出場して、いいところまで行ってたよ」
 空京の王宮にて収監生活を送っているオリヴィエ博士に面会し、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は、先日空京で行われたイベント、その時のハルカの様子などを彼に伝え、ポートレートと共にメッセージを渡した。
 勿論その際に、ハルカもオリヴィエ博士の所に行っていたが、ルカルカにメッセージを託したことは言っていなかったのだろう、小さなサプライズにオリヴィエは微笑む。

 始めに指示されていた仕事は終わっているそうだが、今何をしているかについては、彼は述べなかった。
「早く博士が、ハルカちゃんと外で会えるようになれたらいいね」
 女王が祈祷を終えて出て来た時に、オリヴィエの処遇は改めて審議されるはずだったが、まだそういう話は無いという。
「確かに祈祷は終わったが……女王が代わる、という事態が付いてきているからな」
 ダリルが言った。
「大変そうなことになっている話は聞くよ。まあ、こちらは後回しだろうね」
 オリヴィエも呑気に頷く。
「むー。
 でも、……私、陳情してくるっ」
 今にも出て行きそうな勢いのルカルカを、
「待て待て」
とダリルが制止した。
 くすくす笑っているオリヴィエに
「だってだってー」
と、ルカルカは諦めきれない。

「ところで、先程の話題だが」
 ダリルが、トレーディングカードを取り出してオリヴィエに見せた。
「無論何の仕掛けも無いが、やってみるか?」
「君に勝てる気はしないけどねえ」
 言いながら、オリヴィエはカードを見てみる。
「このカードは枠しか無いようだけど」
 絵柄の部分が白紙のカードを見つけたオリヴィエに、ダリルは、それは任意の人物に回復されるカードなのだと説明した。
「それで、大会の時には、回復に博士の名を借りた」
 事後承諾ではあるが、律儀にそう言ったダリルに、オリヴィエは肩を竦める。
「私にも、誰かを癒せることがあるとは、光栄だよ」
 ダリルにルールを聞きながら、オリヴィエはデッキを選ぶ。
「一枚対一枚というのは、つまり運が勝負ということなのかな」
「ああ。
 戦略的な勝負をするなら、場に何枚かカードを展開できるようにしたいところだな」
「そうだね。例えば左右に予備のカードを伏せて、」
「それなら、補助のカードとしてここに三枚並べるようにしたら、」
「こらこら、何独自のルールを展開させてるの」
 熱中しはじめた二人に苦笑して、ルカルカは監視の騎士に断ると、お茶のおかわりを淹れる為に立ち上がった。