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地球に帰らせていただきますっ! ~4~

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地球に帰らせていただきますっ! ~4~

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 ■ 父からの叱責 ■
 
 
 
 実家に里帰り、と言っても本郷 翔(ほんごう・かける)の母は出生時に帰らぬ人となっている。唯一の家族である父本郷 司は執事なので、翔は奉公先に顔を出した。
 廊下ですれ違う他の使用人たちが、翔に気づいて声をかけてくる。
 それに対して失礼のないように挨拶を返しつつ、翔は父の元に向かった。
 
「父上、今帰りました」
「帰ったか」
 本郷家は代々続く執事の一族。もちろん翔の父も執事だ。
 服装も態度も典型的な執事の父は、帰ってきた翔を迎え、目を細めた。
「色々噂は流れていたが、無事ならば良かった」
 一度だけしっかりと翔を抱きしめた後、それで、と父は報告を促した。
「まずは……ザナドゥをめぐる騒乱の際に、敢えて汚名を着てでも平和を希求し、途中放校になったことをお詫び致します」
 パラミタに行っている間にあったことを、翔は父に話した。
「もっとも現在では、蒼空学園の生徒として復帰がなりました」
「そうか」
 父の答えは短かったけれど、そこには娘の復帰を喜ぶ父の心が滲んでいた。
 離れている分、心配をかけてしまっていたのだろう。
「それと、普段は執事ということで男として行動していますが、そろそろ体型的に難しいことも出てきております。ですがまだ特にばれてはいません」
 日に日に女性としての身体つきになってゆく時期だから、その隠蔽の難易度も上がってゆく。
 けれど翔は家の伝統以上に、自分自身が執事として頑張りたいと思っているから、多少の不便は許容している。
 ……とはいえ、この場には父しかいないという甘えがあって、翔は最近の不便について愚痴をこぼした。
 すると途端に。
「執事になりたいのはお前だろう!」
 父は翔を叱りつけた。
 一人娘の翔を心底愛しているけれど、いや、愛しているが故に、その甘えを見過ごすことは出来ない。
 その父の思いと、父親に叱ってもらえることが嬉しくて、翔は謝罪と感謝の言葉を父に述べるのだった。
 
 せっかく奉公先に来たのだからと、翔は父の仕事ぶりを見学させてもらうことにした。
 執事長という仕事を得ることができたとはいえ、翔にはまだまだ自分が若輩であることも分かっている。
 特に、人心の機微については、経験不足から読み取る能力が不足していると感じることも多い。甘い話も未だに苦手だ。
 仕事を完璧にこなす父の姿を、その技量の1つなりとも習得しようと翔は食い入るように観察した。
 
 
 見学が一段落すると、翔は母の墓に参った。
 男手ひとつで自分を育ててくれた父に感謝しつつ、パラミタでの1歩を改めて進んで行くことを母の墓に報告する。
「母上、まだ私はひよっこですが、しっかり執事になってみせますよ。見ていてください」
 実力をつけ、いつか仕えるべき主を見付け、王佐となる。
 その目標に向かってこれからも日々研鑽してゆくことを、翔は誓うのだった。