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【2024VDWD】甘い幸福

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【2024VDWD】甘い幸福
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11.初心な彼女

 お昼に待ち合わせをして、パスタを食べたてから、ポップコーンを手に映画を見て。
 ウィンドーショッピングをしたり、買い物をしたり。
 出店のお菓子を買って食べてみたり。
 白雪 魔姫(しらゆき・まき)は友人の高原 瀬蓮(たかはら・せれん)と繁華街や商店街を楽しく歩き回った。
「えっと、中はビスケットで、周りにチョコがついてるんだね、これ。
 こういった通りで買えるお菓子って、特に工夫されたり綺麗だったりしないけど、美味しく感じるね」
 棒チョコを食べながら、瀬蓮が魔姫に笑いかける。
「そうね。高級レストランで食べるスイーツも美味しいけれど、こういったお店で買える素朴な、多くの人が好んで食べている味を、瀬蓮はまず目指すべきかもね」
 美味しいと感じたものが、どんなもので作られているのか。
 それを考えてみたらどうかと、魔姫は瀬蓮に話す。
「お菓子だけじゃなくて料理ってただ食べるだけじゃなくて自分が美味しいって思ったモノには中に何が入ってるから美味しくなってるのかとか考える事も必要なのよ」
「うん。……あ、魔姫ちゃん、もしかしてそういうの教えてくれるため今日、誘ってくれたの?」
「それもあるわね、一緒に学んでいけたらいいなと思っていたの。瀬蓮が料理を頑張っている姿、見てきたしね。ヒントになるようなものが街で見つかるかもしれないって」
 既に日が落ちており、2人は帰路についていた。
 魔姫は現在空京大学に通っている。パラ実に所属する瀬蓮とは駅でお別れだった。
「朝まで一緒にいられたらもっと楽しいでしょうね」
「うん! 一緒に夕飯作ってみたり、寝室で遅くまでお話ししたりできるよね」
 魔姫の言葉に、瀬蓮は無邪気な笑顔で答えた。
 可愛らしい彼女の顔を微笑みを浮かべて観賞してから。
 魔姫はバッグの中からラッピングした箱を取り出した。
「瀬蓮、受け取ってくれるかな」
「ん? あ、チョコレートだね。瀬蓮も持ってきたよ」
 ごそごそ鞄を探って、瀬蓮も袋を一つ取り出した。
「はい、魔姫ちゃん、ハッピーバレンタイン! 手作りじゃないから、美味しいよ」
 笑いながら、瀬蓮は魔姫にチョコレートを渡した。
「ありがとう。……ワタシのは瀬蓮のとあげる意味が違うかな。友チョコじゃなくて、これは本命チョコよ?」
「……あ……」
 両手で受け取って、瀬蓮は魔姫を見て。
 それから少し目を泳がせた。
「前にも言ったことがあるけど……ワタシが自分を出せるようになったのは、瀬蓮のおかげなのよ。アタナの素直さを見ていたら、自分のやってる事がつまらない事だって感じたの」
「う、うん。ありがとう」
「瀬蓮、大好きよ。他の誰よりもずっと」
 魔姫が言った途端。瀬蓮の顔が赤くなっていく。
「瀬蓮、も……魔姫ちゃんのこと、大好きだよ。ええと……」
 困っている瀬蓮に、魔姫は微笑みかける。
「大丈夫、大好きな友達への友チョコでもワタシは嬉しいわよ。瀬蓮に恋愛感情がなくても、アナタが他の誰かのことを好きになるまでは、恋愛的に好きでいてもいいわよね?」
「う、うん。えへへ……」
 赤い顔で、瀬蓮は恥ずかしそうな笑みを浮かべていた。
 それから手の中の魔姫からの本命チョコをじっと見つめながら、瀬蓮はぽつりと言う。
「瀬蓮の魔姫ちゃんのことが好きって気持ちも……もしかしたら、恋愛感情、かも」
 そして真赤に染まった顔をちょっと上げて、魔姫の顔を見た。
「瀬蓮……」
「ま、まだはっきりとは分からないけどね。でも、大好きなのは本当だから。これありがとね、凄く嬉しい」
 瀬蓮は魔姫からの本命チョコを大切そうに抱きしめた。
「ありがとう。ワタシも貰ったチョコレート、大切にいただくわ」
「うん、それじゃ、また遊ぼうね」
「ええ、近いうちにまた遊びましょう」
 約束をすると、2人は笑顔で手を振ってその日は別れた。
 魔姫は瀬蓮の姿が見えなくなるまでその場に立っており。
 瀬蓮は何度も振り返って手を振ってきた。