校長室
【2024VDWD】甘い幸福
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15.お祝い 「そいつはめでてぇ! おめでとう!」 「はい!」 バレンタインの夜。 大谷地 康之(おおやち・やすゆき)は、西シャンバラのロイヤルガード宿舎に、アレナ・ミセファヌス(あれな・みせふぁぬす)を迎えに行った。 街へ向かって歩きながら、アレナは康之に優子と家族になるかもしれない、そう嬉しそうに話したのだった。 「よっしゃぁ、じゃあ今日はお祝いに美味しいものを食べに行こう!」 康之もとても嬉しそうにそう言って、アレナをスイーツが美味しいと評判のカフェに誘う。 「それで、いつ頃とか決めてるのか? 優子さんと外見的に親子ほどの差がつくっていうと……10年後くらい?」 「優子さんが、30歳になった頃がいいんじゃないかなって思ってます。ふふふ……っ」 ミルクティーをスプーンでかき混ぜながら、アレナはとっても嬉しそうな笑みを浮かべていた。 そんなアレナの顔を見ていると、康之の心にも幸せな感情が膨れ上がっていく。 「ゼスタとも兄弟になるのか?」 「はい、私がお姉さんです!」 アレナは強く言い切る。自分が姉であることは譲れないらしい。 「ただ、ゼスタさんは優子さんの子供は嫌なのかもしれません。優子さんをお嫁さんにしたかったみたいなんですけれど……それは……」 うーんとアレナは考え込む。 アレナはゼスタに対しても好意を持っていた。家族になれたら嬉しいとも思う。 だけれど、アレナは優子にとってのパートナーとしての一番は自分でありたいという感情を心の奥で抱いていた。 優子に伴侶が出来て、優子が幸せに生きれたらアレナも幸せだけれど……。 その相手が、ゼスタだったら、強い寂しさを感じてしまうだろう。 自分でもよく理解していないそんな感情により、優子とゼスタが結ばれることや、ゼスタが自分より上――兄となることに関しては、アレナは心から賛成することは出来ない。 「嫁さんか……2人の子供、というのはアレナ的には嬉しくない?」 康之の言葉に、アレナは少し迷った後、控え目に頷いた。 「それだと、なんだかちょっと違うと思うんです……。 それに、ゼスタさんは、優子さんのこと好き、ですけれど……夫婦になって、ずっと一緒にいたいとは思ってない気がするんです」 「そっか。おっ、ケーキ美味そう!」 「はい、イチゴのチョコレートケーキです」 注文した本日のケーキが運ばれてきた。 丸いチョコレートケーキの周りに、半分にカットされた苺が並んでいて。 チョコレートと苺ソース、生クリームで綺麗な模様が描かれている。 崩すのがもったいないと感じながら、2人はケーキを食べ始めて。 「うん、美味い!」 「美味しいです」 顔を合わせて微笑み合ってから、話を続けていく。 大切な、将来の話を――。