リアクション
20.待ち合わせ
仕事の帰り、高月 玄秀(たかつき・げんしゅう)は裏道でパートナーを待っていた。
どれくらい経っただろうか、ティアン・メイ(てぃあん・めい)が少し息を切らして、向かってくるのが遠目に見えた。
肩に積もり始めた雪を払う。
「……シュウ」
「遅かったな。さっさと帰ろう」
玄秀はさっさと踵を返そうとする。
――玄秀は、美少年といっていい顔立ちをしている。姿かたちも振る舞いも、勿論口調も、良家の子弟といった風だ。
しかしそれは、彼がそう振る舞っているというだけのこと。
ティアンもそれを知っている。
玄秀は、ティアンが知っていることを知っている。
だから、彼女の前では自分を飾るのはやめた。
何より……彼女がそれを望んでいないからだ。
「これを渡したくて。遅くなってごめんなさい。チョコレートよ」
ティアンは、玄秀が歩き始める前に、四角い、ラッピングされた包みを取り出した。
意外そうに、玄秀はパートナーを見る。
ティアンは、それを見返す。目を逸らさない。
……今日は、3回目のバレンタイン。そして初めての、新しいバレンタイン。