リアクション
22.新婚さんのバレンタイン
シャウラ・エピゼシー(しゃうら・えぴぜしー)と金元 ななな(かねもと・ななな)は、新婚ほやほやの夫婦である。
結婚式はオーロラの下でドラマティックに行ったが、普段はそんな贅沢ができるわけでもなく――、
「ゼーさん、朝だよ起きてよ」
ベッドの上、温かい布団にくるまって眠りを貪っていたシャウラは、ゆさゆさと両手で揺すられて目を覚ました。
――普段は、なななに起こされる、というささやかな贅沢を味わっている。
「あ……っふ」
精悍な顔立ちを今ばかりはゆるゆるに緩めて、欠伸しながらうーんと伸びをしたシャウラは、
「おはようななな。……もちょっと寝かせてくれ」
起きることなく、また布団にもぐりこんだ。そんな様子になななが更に揺すりながら抗議する。
「もう、起きようよー。鶏が卵産んで卵がひよこになっちゃうよ! オムレツ食べられないよ!
……ゼーさん、起きてよ、起きてくれなかったら……くすぐっちゃうぞ、それー!」
両手をうごめかせてくすぐるなななに、笑ってシャウラは上半身を起こす。
「ギブ。起きた起きた、目が覚めたよ」
笑いながら、油断しているなななの方に手を伸ばす。
「おかえしだーっ♪」
シャウラがなななの脇や背中をくすぐっているうちに、なななは耐え切れずにベッドに突っ伏し、
「きゃはは、ゼーさん、くすぐったいよ……っ! こ、こっちこそお返しだよー!」
二人はもつれ合ってしばらくくすぐり合っていた。
そのうちお互い疲れて肩で息をしていると、なななはどこからか一つの包みを取り出した。
「はい、ゼーさんにバレンタインのチョコ!」
「うわー、これってもしかして手作り? すげぇうまそう」
大好きな妻からのプレゼントに、シャウラの顔がだらしなく緩む。
包みにはメッセージカードも付いていたが、それは後で開くことにして。
おっかなびっくり箱を開ける。中には――見覚えのない形だったが――市販とは思えないデザインかつ凝ったディテールのチョコが並んでいた。
「いつのまに作ったんだよ。凝ってるし、んー、いい香りだ。大事に食べさせて貰うな。ありがと、ななな」
「どういたしまして、ゼーさん!」