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リアクション
巨獣の進撃は有る程度防がれているとは言え、バイクやら馬やらで襲ってくる蛮族達は巨獣の足元を縫うようにすり抜け、トラックへと迫ってくる。
その前に立ち塞がる、一台の軍用バイク。運転しているのは東 朱鷺(あずま・とき)、そしてサイドカーに乗るのが東のパートナーであるルビー・フェルニアス(るびー・ふぇるにあす)だ。
行くぞ、と口の中で東が小さく呟くのにフェルニアスが頷いて返す。
東が愛用の、龍の細工が成された銃を構える横で、フェルニアスは得意の氷の魔法を放つ。
近づいてきた蛮族のバイクが、キンと硬質な音を立てて凍り付いた。
その瞬間パァンと破裂音が響き、ショットガン様の弾が射出される。魔力の篭もった弾は、普通の銃を凌駕する破壊力でもって、慌ててバイクを乗り捨てようとしていた蛮族の男を確実に捉える。
東とフェルニアスが着実に蛮族の数を減らしていく横で、全身をパワードアーマーに包んだグロリア・クレイン(ぐろりあ・くれいん)もまた、蛮族の足止めに奮戦している。
「いきますっ!」
かけ声一つ、パートナーのテオドラ・メルヴィル(ておどら・めるう゛ぃる)と二人、アーマーに装着しているレーザー兵器を振り回すと、足を灼かれた馬が嘶き、バイクの機関部が爆発、炎上する。
乗り物をやられてパニックに陥る蛮族達の隙間を、さらにレイラ・リンジー(れいら・りんじー)が駆け抜ける。擦れ違いざまに放たれる乱撃ソニックブレードの一撃が、確実に蛮族達を昏倒させていく。
三人に随行しながらも、応急手当の心得のあるアンジェリカ・スターク(あんじぇりか・すたーく)は万が一の負傷者が出たときに備え、トラックに近い位置で戦況を見守っていた。
「アンジェリカ、そっちに行きました!」
が、クレインの声を受けてハッと視線を上げる。クレインとメルヴィル、両者のレーザー砲をかいくぐった蛮族が、トラックへ肉薄しようとスタークの方へと向かってくる。慌ててワンドを構え、火術を放とうとするが、距離が近すぎてこのままでは自分も巻き込まれてしまう。放つのを一瞬躊躇う。
その隙に、一人の蛮族がついにトラックの荷台へと接触してしまった。
まずい、と一同の顔に緊張が走る。
が、ピンクモヒカン姿のその男がトラックの荷台へと取り付こうとした、丁度その位置に、ひょっこりと二人の少女が顔を覗かせた。
「オジサン、ボクと遊んでくれる?」
片方は真っ赤な、まるで血のような色の髪、三白眼の青い目に薄い眉。もう片方は、緑の髪であることを覗けば赤い方とほとんどうり二つ。こちらの方が少し目つきが柔らかいだろうか?
――ミリー・朱沈(みりー・ちゅーしぇん)とフラット・クライベル(ふらっと・くらいべる)のふたりだ。
二人とも顔全体はそれなりの造作のはずなのだが、何とも言えない不気味な気配が内面からにじみ出ている所為で、二人並んだその姿はひたすらに異様だった。
その不気味な気配にモヒカンは思わず、一瞬怯む。
が、邪魔をするなと一声吼えると、再びトラックへと乗り込もうとしてくる。
「遊んでくれるんだね?」
あはは、と朱沈は匕首を手に愉しそうに笑う。その態度に何か本能的な恐怖を感じたモヒカンは、ぎろりと目玉を動かしたかと思うと、武器を持っていないクライベルに向かい飛びかかった。
「汚い手で、フラットに触らないでぇ?」
しかしクライベルは慌てず騒がず、靴に泥が着いちゃう、くらいの調子で嫌悪感を見せると、突撃してくるモヒカンからくるりと身をかわす。大型トラックとは言えそう広いスペースが有るわけではない車内、モヒカンはバランスを崩して壁に一度激突すると、怒りを露わにしてもう一度飛びかかってくる。
「いやぁ……」
わざとらしく身をかがめるクライベルに、モヒカン男が覆い被さる。
次の瞬間、響いたのは男の絶叫だった。
その背中から、巨大な光の刃が生えて、すぐに消えた。クライベルの操る光条兵器で魔力で内臓を焼かれた男は、苦悶の表情を浮かべながらも何とか立ち上がろうとする。
血走る目で男がクライベルを睨み付けた、次の瞬間。
クライベルの腹から、先ほど男を斬りつけた光条兵器の刃が生えてきた。
え、と思う間もなく、男は偃月刀とも薙刀ともつかない形をした光に身体を切り裂かれる。
斬るものを選択できるという光条兵器の特製を利用した、クライベルの背後からの朱沈による闇討ち――と、最早事切れた男が理解できたかは不明である。
「これ以上誰も、車へ近付けさせるでないぞ!」
トラックに同乗していた面々も、いよいよ蛮族達が接近してきたことを受けてトラックの周囲に展開した。
戸次道雪が叫ぶ横で、フィーア・四条が左手に装着した最古の銃を振るう。研究者達には「サイコガン」とも呼ばれる、精神力を原動力とする銃だ。
また、朝霧垂はダッシュローラーで辺りを駆け回り、蛮族の馬やバイクを狙ってレーザーナギナタを振り回し、確実に機動力を奪う。
その横では、セオボルト・フィッツジェラルドが蛮族と切り結んでいた。
蛮族の男が振り回すシミター様の巨大な剣を、フィッツジェラルドは左手に構えた盾でいなす。ぐ、と男が剣を引いた瞬間、盾にから突然、金属製の杭が射出される。パイルバンカー内臓シールドによるカウンターは想定の範囲外だったのだろう、男は脇腹にモロに杭を喰らい、その場に崩れ落ちる。
「行くよ!」
セレンフィリティ・シャーレットの放つレーザー銃のクロスファイアが辺りを薙ぐと、蛮族達の包囲網に穴が空く。
「今だ、全速前進!」
その隙を見逃す小暮ではない。
合図と共にトラックが発進する。周囲に散っていた護衛の面々も、有るものは慌ててトラックへ飛び乗り、また有る者は乗り物を持つ他の仲間に乗せて貰い、
トラックの後を追いながら追撃を防ぐ。
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