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リアクション
シャンバラ教導団の整備場、広大なその工場の一角に、その飛空艇は運び込まれていた。
塗装などは粗方落とされ、既に動力部などのメンテナンスは進み始めている状態だ。
そこへ、今し方到着した荷物が、トラックごと運ばれてくる。
「手が空いている者は荷物を運べ」
大尉であるクレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)が指示を出すと、修繕の為に集まっていた人々がわらわらと集まってくる。
手で持てるものは手で、あるいは、台車やフォークリフトなどを持ち出して、それぞれにトラックに積み込まれていた荷物を下ろし、作業場に広げていく。
「すみません、待たせました」
と、丁度そこへ小暮がファイル片手に戻ってきた。
「整備の準備は出来て居るぞ」
今まで現場を仕切っていたシュミットが、戻ってきた小暮に声を掛ける。
自分より階級が上の人間からバトンを渡されることに少し緊張する小暮だったが、シュミットの、今はお前が作戦隊長だ、との一言に安堵して、ありがとうございます、と返事をする。
シュミットの言うとおり、工場には運んできた武装がすっかり種類別に並べられていて、いつでも作業開始出来る状態だ。
「では、集合!」
姿勢を正して小暮が号令を発すると、それぞれに作業の準備をしていた面々が小暮の前にぴしりと整列する。
「作業内容を確認します。これらの武装を飛空艇へ取り付け、軍用機として使用可能になるよう整備を行います」
小暮の言葉に、一同は了解、と歯切れ良く答える。
「ただ、現状この機体の運用目的は未定です。任務は『軍用機として使用可能にする』ことですので、どのような形で仕上げても問題はありません。そこで、皆さんの意見を伺いたい」
その言葉に、技術屋たちの目がきらりと輝き出す。
放っておいたら我先にと発言しそうだ、と判断した小暮は、作業場の隅の机に一同を集めた。
何人かは、自分は機械に触れれば幸せだ、と頭脳労働には加わらずに工具やら何やらの準備に取りかかっているが、半数ほどが机の回りに集まった。
「とりあえず、みんなの意見を出し合いましょ」
図面を机の上に広げた機甲科所属のルカルカ・ルー(るかるか・るー)が議論の口火を切る。
「この飛空艇に最も適した運用方法か……」
ルーの発言を受けたクレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく)が、むぅ、と唸る。
「まず絶対に必要なのは、龍騎士の乗るドラゴンの追跡を振り切るための高性能な対空機銃ではないでしょうか。それから、炎のブレスを浴びた場合に備えて自動消火装置も必須ですし、余裕が有れば対地ロケットも欲しいところですわ」
ジーベックのパートナーである島津 ヴァルナ(しまづ・う゛ぁるな)が図面の上を指でなぞりながら提案する。
「どこへ設置するのです?」
戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)が島津に問いかける。
島津は仮にですが、ここと、ここと……と、図面を次々指さしていく。
「これだけ大型の飛空艇だ。戦闘機にするには惜しくないか」
武装の配置に関する議論が盛り上がろうとしたその時、ぽつり、とジーベックが呟く。
どういう意味だ、と一同がジーベックの方を向いた。
「現在、我々は補給の面で苦戦することが多い。この飛空艇を、大型の輸送艦とすることができれば……」
「なるほど、エリュシオンとの戦いになれば、遠隔地で戦うことも増えるものね」
「それは良い考えだ」
ルーと、そのパートナーであるダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が顔を見合わせて頷く。
「確かに、補給は大きな課題です。輸送機が増えるとなれば、心強い」
ジーベックと同じく参謀科として、小暮も頷く。
「輸送機にするのであれば、武装は最低限に押さえるべきだな。その代わりに、内部を広くする」
技術科所属のガイザックが早速、自分のパソコンに図面の情報を入力していく。すると、ワイヤーフレームが飛空艇の完成形を立体的に描き出す。
「出来るだけ格納スペースを広く取れるようにしましょ」
「けれど、武装が全く不要というわけではありませんわ。最低限、20ミリ・レーザーバルカン2連装程度は必要です」
「それなら、このように配置するのはどうだろうか」
ガイザックがパソコンに次々情報を入力すると、ワイヤーフレームで描かれる飛空艇が次々と形を変えていく。
そうするとこちらに問題が、そこをなおすとこっちが、と侃々諤々の議論の末、最終的に搭載する武装の量と配置が決定する。
「設計図は、それぞれのコンピュータで閲覧できるようにしてある。作業完了部分に触れると色が変わるようになっている。これで進捗状況を把握してくれ」
こうして全員が設計図を確認したところで、作業開始と相成った。
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