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【冬季ろくりんピック】激走! ペットソリレース!

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第七章 勝利はどちらに?

 スクリーンに優勝及び入賞者の名前が発表された。

 優勝 蒼空学園 馬 超(ば・ちょう) 組 
 2位 波羅蜜多実業高等学校 リリィ・クロウ(りりぃ・くろう) 組
 3位 蒼空学園 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)
 4位 シャンバラ教導団 クレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく) 組
 5位 イルミンスール魔法学校 緋王 輝夜(ひおう・かぐや) 組
 6位 空京大学 アキュート・クリッパー(あきゅーと・くりっぱー) 組 審議中

「おおーっ!」と拍手と歓声があがるが、審議中の文字に、どよめきも起こる。
 舞台の上では、当のアキュートが渋い顔をしている。一方でパートナーのウーマ・ンボー(うーま・んぼー)は、喜びの舞? を踊っていた。
 やがてリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)のアナウンスが流れ、スクリーンが切り替わる。
「6位入賞した空京学園のアキュート・クリッパー組ですが、ご覧の通り乗員のウーマ・ンボー選手がソリを引いていたことが判明しました。よって失格となり、7位のジャジラッド・ボゴル(じゃじらっど・ぼごる)組が6位入賞です」
 覚悟していたアキュートは、抗議しようとしたウーマに一発食らわせて、「申し訳ない」と謝罪して舞台を降りた。代わって舞台に上がったのはジャジラッド・ボゴル。登りでの親衛隊の活躍を覚えている観客から拍手が起こった。

 優勝 蒼空学園 馬超 組 
 2位 波羅蜜多実業高等学校 リリィ・クロウ 組
 3位 蒼空学園 小鳥遊 美羽 組
 4位 シャンバラ教導団 クレーメック・ジーベック 組
 5位 イルミンスール魔法学校 緋王 輝夜 組
 6位 波羅蜜多実業高等学校 ジャジラッド・ボゴル 組

 ヴィゼント・ショートホーン(びぜんと・しょーとほーん)キャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)が舞台に上がる。
「さーて表彰式と行きたいところだが、最後に解説のイーオンから総括を……、えっ? 何だって?」  

 スクリーンに再び審議中の文字が付く。

 優勝 蒼空学園 馬超 組 
 2位 波羅蜜多実業高等学校 リリィ・クロウ 組
 3位 蒼空学園 小鳥遊 美羽 組
 4位 シャンバラ教導団 クレーメック・ジーベック 組
 5位 イルミンスール魔法学校 緋王 輝夜 組
 6位 波羅蜜多実業高等学校 ジャジラッド・ボゴル 組 審議中

 司会のヴィゼントやキャンディスが袖に引っ込む。ジャジラッドが表情を固くする中で、観客席のざわめきは収まらなかった。やがてスクリーンが切り替わる。藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)が終盤にジャジラッドのソリを撮影したシーンが映り、リカインのアナウンスが流れる。
「画面では判断しづらいかもしれませんが、運営本部で解析と現地調査の結果、ジャジラッド班のサルガタナス・ドルドフェリオン(さるがたなす・どるどふぇりおん)選手が、土くれを変化させた砂金などを撒いていた事実が判明しました。本人からは滑り止めとの申し立てがありましたが、協議の結果、意図的かつ直接的な他への働きかけと判断され失格です。そこで8位……あれ7位?」
 度重なる繰り上がりの事態に、リカインもやや混乱している。
「あっ、そうね……7位のブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)組が6位入賞です」
 運営本部では、藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)宙波 蕪之進(ちゅぱ・かぶらのしん)が、パチンと手を打ち合わせた。

 優勝 蒼空学園 馬 超 組(6P)
 2位 波羅蜜多実業高等学校 リリィ・クロウ 組(5P)
 3位 蒼空学園 小鳥遊 美羽 組(4P)
 4位 シャンバラ教導団 クレーメック・ジーベック 組(3P)
 5位 イルミンスール魔法学校 緋王 輝夜 組(2P)
 6位 薔薇の学舎 ブルタ・バルチャ 組(1P)

 東チーム:8P 西チーム:13P 

 西チームの勝利(30ポイント)

 爆発寸前に見えたジャジラッドだったが、ブルタ・バルチャの名がスクリーンにあるのを見ると、黙って舞台から降りた。
 そしてヴィゼント・ショートホーンとキャンディス・ブルーバーグが舞台に登場する。
「じゃあ、イーオン、解説をよろしくボンバー!」
 入賞者の名前はそのままに、イーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)がスクリーンの右上に登場した。
「今回のソリレース、3つのセクションがあったわけですが、それぞれ特徴の異なったセクションをいかに攻略したかが鍵となりました。最初のセクションはパワー勝負。ほとんどのチームがそれを理解していたようで、パワー自慢のペットや従者が顔を揃えていました。犬系のペットや……」
 最初は大人しく聞いていた観客だったが、いつ終わるとも知れない解説に、徐々に無駄口が大きくなる。
「…………以上、3つのセクションをそれぞれに説明しましたが、総合的に判断すると、引き手と操縦者の相性や呼吸の良し悪しが、結果を分けたと言っても過言ではないでしょう。また東西のチームで、ソリのレベル差やペット数の上限に違いはあったものの、それぞれの参加者の工夫が……」
「OK! 解説はここまでだ!」
 ヴィゼントが強引に打ち切ると、観客席から拍手が起こる。
「サンキュー! しかしまずはこっちに拍手だ!」
 優勝者や入賞者に、一段と大きな拍手が送られた。

 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □

「クロセル殿、まだ次があるでござるよ」
 童話 スノーマン(どうわ・すのーまん)は、空の財布を嘆くクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)の肩をポンと叩いた。

「完走できたし、目標達成だぜ」
「うん、そうだねぇ」
 白銀 昶(しろがね・あきら)清泉 北都(いずみ・ほくと)は、頑張ったセントバーナードを可愛がった。

「あーん、もうちょっとだったですぅ」
 冬蔦 日奈々(ふゆつた・ひなな)はココアを飲んで体を休めていた。

ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)メリッサ・マルシアーノ(めりっさ・まるしあーの)シャロン・ヘルムズ(しゃろん・へるむず)をねぎらう。
「ナビ、ありがとう」
「どういたしまして、楽しい経験ができましたわ」

「惜しかったね」
 慰める佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)熊谷 直実(くまがや・なおざね)は「愛馬なれば……」とつぶやいた。

「ココア美味しい!」
「温かいものが何よりのご馳走じゃな」
 レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)ミア・マハ(みあ・まは)は体の中から温まった。

「ハンデがあって、この結果なら上出来ね」
 舞台上のリリィ・クロウ(りりぃ・くろう)を見てナカヤノフ ウィキチェリカ(なかやのふ・うきちぇりか)も微笑んだ。

「申し訳ありません」
 しょげるサルガタナス・ドルドフェリオン(さるがたなす・どるどふぇりおん)
「納得いかん! が、ブルタが入賞したので、良しとしよう」
 ジャジラッド・ボゴル(じゃじらっど・ぼごる)は複雑な心境でスクリーンを見上げる。

「私、結局何もしてないよね」
「結果オーライですわ。入賞を喜びましょう」
 ステンノーラ・グライアイ(すてんのーら・ぐらいあい)は千草みすみに微笑んだ。

「あの2人、私がいない方が、良い仕事するんじゃないでしょうね」
 エッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)はホテルのテレビでレースの結果を確認した。

「やはり参加賞はないのね」
「用意してあるわよ」
 中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)漆黒の ドレス(しっこくの・どれす)にクジ付き菓子の詰め合わせを見せた。

「お疲れ様ー」
 宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)湖の騎士 ランスロット(みずうみのきし・らんすろっと)とティセラ・リーブラで小さな打ち上げを行う。
「あと一歩でしたわね」

「入賞できた上に、30点も得た、私達の勝利だな」
 クレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく)島津 ヴァルナ(しまづ・う゛ぁるな)は固く握手した。