リアクション
●この胸の想いを
ポートシャングリラ。
まだ朝が早いので、それほどの人出はない。
――それにしてもユマの方から会いにくるなんて初めてだな。
どうやら彼女には、話したいことがあるらしい。
意識するとどうも、緊張してしまう。
電話の思い詰めたような様子からすると、何についての話かは想像が付く。……きっとクリスマスの返答なのだろうと思う。
待ち合わせたのは野外ステージのそばだ。いずれまた、ここでイベントが行われ多数の人が集まるのだろうが、いまは閑散として寒々しいほどだった。
「ユマ」
人の気配を感じて柊 真司(ひいらぎ・しんじ)は振り返ったが、そこに立っていたのは彼女ではなくリーラ・タイルヒュン(りーら・たいるひゅん)だった。
「なんだ……」
「なんだとはなによ。今からユマと会うんでしょう?」
「どうしてそれを」
「朝、電話を受けてからの様子を見ていればすぐにわかるわよ。……大事な話のようね」
「わかっているなら」
「あっち行けってのよね? 大丈夫大丈夫、邪魔者にはなりたくないから。ただね、一言だけアドバイス」
リーラはぺたぺたと彼に近づいて、両肩にポンと手を置いた。
「まったくもう……緊張するのは解るけどね。そんな顔じゃユマだって話せるものも話せないわよ」
「……そんなに……怖い顔をしているか?」
「怖かないけどガッチガチに硬い表情。笑えとは言わないけど、せめてリラックスしなさいね。どうせ一回振られてるんだから気楽に行きなさい気楽に」
「よくもまあ……言ってくれる」
真司は、ふっと笑った。同時に、肩に入っていた力が抜けたようだった。
「ま、今の表情ならいいわね。じゃ!」
それだけ言い残すと、リーラは小走りでそこを離れた。
ユマが来たのは、それから間もなくのことだった。
「真司さん……あの、今日は急にお呼びして…………すみません」
深々と頭を下げる。今日のユマは、落ち着いたトーンのワンピース姿だった。昨日このポートシャングリラで買った服である。
「……それで」
ユマは話しづらそうで、下を向いたままだった。
「少し……歩くか?」
しかしユマは首を振り、顔を上げた。